中川政七商店創業の地に建つ『鹿猿狐ビルヂング』 で、奈良の旅をより深く
奈良の路地で、310年の歴史と工芸に出会う
興福寺の境内を抜け、石段をくだって猿沢池のほとりへ。さらにその一本奥の、歴史の名残が深く息づく路地に入っていくと、瓦屋根の町家が並ぶ一角に、凛と佇む建物が目に入ります。それが『鹿猿狐ビルヂング』です。読みはそのまま”しか・さる・きつねビルヂング”。

ここは、享保元年(1716年)創業、奈良の老舗『中川政七商店』が手掛ける複合商業施設。「路地を巡り出会う、触れ、学び、味わう奈良。」をコンセプトに、奈良のものづくり・歴史・食が一つの場所に集う、観光客にも地元の人にもうれしいスポットです。
ここでは編集部が訪れて知った『鹿猿狐ビルヂング』の見どころをご紹介。奈良公園や東大寺など、観光名所を巡ったあとのひと休みに立ち寄れば、奈良の違う表情に出会えるはずです。
奈良の路地に溶け込む、町家を活かした空間

『鹿猿狐ビルヂング』は、2021年4月にオープンした中川政七商店の旗艦施設。施設名は、中川政七商店の象徴である鹿、そして『猿田彦珈琲』の猿、すき焼き割烹『㐂つね』の狐、3つの動物から名付けられました。
築130年の町家を活かした空間には、中川家の旧居や蔵がそのまま残り、新しい建物と自然に溶け合っています。
暮らしを彩る『中川政七商店 奈良本店』の道具たち

2階は、『中川政七商店 奈良本店』のショップに。全国の工芸メーカーと作ったオリジナル雑貨が、数多く並んでいます。

なかでも目を引くのが、看板商品の「ふきん」。鹿や大仏など奈良ならではの絵柄から、名作絵本とのコラボ柄、奈良本店だけで手に入る限定柄まで、色とりどりのラインナップに思わず目移りしてしまいます。

さらに本店限定で、ハンカチに鹿・猿・狐モチーフなどの刺繍を入れてもらえるサービスも。好きなイニシャルを添えてもらえば、奈良で過ごした時間ごと持ち帰れる、特別な一枚になります。
創業時の面影を残す『中川政七商店 奈良本店(旧 遊中川本店)』

裏手にぐるりと回り出会うのは、先ほどとは異なる雰囲気の『中川政七商店 奈良本店』。こちらでは衣服や服飾雑貨を取り扱っています。涼しげな麻の衣服や繊細な刺繍がほどこされた小物は、すべて中川政七商店のオリジナルです。

そして店内奥に進むと現れるのは、現在は更衣室として使われている小さな部屋。実はここ、このあたりで二番目に電話線が引かれたという「電話室」の名残なのだそう。中川政七商店が、いかに新しいものを積極的に取り入れてきたかを物語っているようです。
奈良晒の歴史に触れる『布蔵(ぬのぐら)』

『布蔵(ぬのぐら)』では、当時の蔵がそのままに残されています。中に置かれた織機は、なんと100年前に実際に使われていたもの。今もなお、布を織りなせる貴重な一台です。
奈良はかつて、「奈良晒(ならざらし)」と呼ばれる麻織物の一大産地でした。武士の裃(かみしも)に使われ、江戸時代の奈良を支えた基幹産業のひとつに。奈良の歴史を物語るのに欠かせません。

310年の歩みを未来へつなぐ『時蔵(ときぐら)』

ビルヂングの中でも、ぜひ立ち寄ってほしいのが『時蔵(ときぐら)』。享保元年(1716年)から続く中川政七商店の310年にわたる歴史がアーカイブされた展示空間です。
天井まで敷き詰められた桐箱には、年号ごとにその年の新商品や資料が収められています。圧巻なのは、過去の箱だけでなく、これから100年先までの箱もすでに用意されていること。「未来へ受け継いでいく」という、中川政七商店の確かな意志が、静かに伝わってきます。

奈良晒の商いで事業を大きくし、時代に合わせて人々の暮らしに寄り添うものを編み出してきた中川政七商店。当時使われていた道具がそのまま残る展示にも、ぜひ目を向けてみてください。
新しい茶道の楽しみ方を提案する『茶論(さろん)』

奈良の地で茶道文化に触れられるのが『茶論 奈良町店』。「以茶論美」というコンセプトのもと、新しい茶道の楽しみ方を提案しています。
好みに合わせた抹茶とお菓子がいただけるほか、本格的な茶道のお稽古から、はじめての方でも気軽に参加できる茶道体験、さらには自分だけの茶杓を削るワークショップまで。実にさまざまな形で、茶道に触れられます。

そんな『茶論』は、すぐ近くにオープンしたカジュアル抹茶スタンド『SaDo Stand』とともに、奈良から発信される「新しい抹茶体験」を楽しめる場所です。
『奈良風土案内所』で、自分だけの奈良ガイドブックを

最後にぜひ立ち寄りたいのが、1階の『奈良風土案内所』。中川政七商店のスタッフがおすすめする奈良スポットが描かれたカードが、ずらりと並んでいます。

気になる一枚を集めてファイルに綴れば、自分だけの「奈良ガイドブック」のできあがり。お土産選びのヒントや、知っておきたい奈良のマメ知識も用意されていて、観光の最初に訪れても、最後に訪れても新しい発見がありますよ。
そして現在『鹿猿狐ビルヂング』開業5周年を記念して、季節ごとのアニバーサリーイベントを開催中。こちらの記事もあわせてご覧になれば、より深く楽しめること間違いなしです。
鹿猿狐ビルヂング

住所:奈良県奈良市元林院町22番
営業時間:各テナントの営業時間に準ずる
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約7分/JR関西本線 奈良駅から徒歩約15分
駐車場:なし(近隣のコインパーキングを利用)


