子育てコラム生活
2022/02/02 05:03
ぱ〜ぷるmama

【子育てコラム】子育てとジェンダー「静かに奪われているのは何か」


子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。


子育て中のモヤモヤをジェンダーの視点で見つめるコラムを連載させていただいております。

私事ですが、先日ある申請をする際に、結婚前に作成した書類も一緒に提出しなければならず、その書類の姓が現在の姓と一致しないということで少し手間取る場面がありました。

「これはあなたですか?」「はい、それは私です。」

という、英語の例文かとつっこみたくなるようなやり取りをしましたが、勿論それで証明になるはずもなく。幸い、戸籍証明をすぐに取れたので事なきを得たのですが、もし本籍地が遠方で日帰りできない距離だったら申請そのものが無効になるところでした。

そのとき、そうか、これって姓を変えなかった側には無縁の手間なんだな、と実感しました。結婚前の自分と今の自分が同一人物であるかどうかなんて、いちいち証明する必要がないのです。銀行口座や免許証などの名義変更もそうですよね。時間と手間とお金を使うのはいつだって改姓した側です。

そういえばなぜ私たち夫婦は結婚する際に夫の姓にすることに決めたんだっけ?と過去を振り返ってみたのですが、思い出せませんでした。思い出せない、というより、特に理由がなかったのだと思います。夫は勿論、私自身も、結婚すれば私が姓を変えるものだと当たり前に思っていました。私が結婚して姓が変わったとき、職場の人からも友人からも「なんで相手の姓にしたの?」なんて聞かれたことはありませんでした。逆に私の姓にしていれば、何か特別な理由を尋ねられていたのではないかと思います。

もちろん男性も、相手の姓を奪ってやろうなんて思っている訳ではないと思います。女性に対して「姓を変えたくないなら言ってくれたらいい」と思うかもしれません。しかしまさにその「変えたくないなら言ってくれたらいい」と思えること自体が特権ではないでしょか。何か特別な事情などなくても「さぁ、どちらにしようか」とゼロベースで話し合う事象なはずですから。



私は、選択的夫婦別姓が早く認められてほしいと思っています。私自身が別姓にしたい訳ではありません。しかし、先日のちょっとした申請でも煩わしい思いをしたくらいですから、日頃から不都合を被っている人はたくさんいるのだと思います。そしてその多くが女性に偏っていることが問題であり、更には問題解決を遅らせている要因ではないかと思っています。

法律的にはどちらの姓に統一してもいいはずなのに、現状では圧倒的に女性の方が多く改姓し様々な不便を被っていることに対し「自分たちで選んだことでしょ?その結果として男性の姓にする人が多いだけでは?」というのは、一見正論のようにも思えます。しかし前回のコラムにも書いた通り、個人の選択は社会の価値観と無関係ではありません。

少し極端に表現しますが、日本の女性は自分の姓を選ぶ権利は奪われていないけれど、知らず知らずのうちに意欲を奪われている、と感じます。これも一種のクーリングアウトではないでしょうか。結婚すれば自分の姓が変わるだろうということを、ネガティブかポジティブかに関わらず刷り込まれているように思います。そしてそれは早ければ、生まれる前から始まっているかもしれません。

というのも、私自身が子どもに命名したときのことを思い返してみたのです。

息子の名前を考えるときには、息子の姓が変わるかもしれないなんてことは微塵も考えませんでした。むしろ、この子は将来も姓が変わらないだろうという前提のもと、今の姓との相性を大切にした漢字・読み・画数などを選択していきました。

一方、娘の名前を考えるときには、この子は将来姓が変わるかもしれないから名前だけで良い画数になるようにしよう、などと考えていたように思います。

勿論、いずれも姓との関係だけを重視した訳ではありませんので、使用した漢字や読み方、漢字のもつ意味など、私たち夫婦にとっては満足のいく命名ができたと思っています。しかし、心のどこかにそんな固定観念が潜んでいたことは否定できません。

それと同時に、当時購入し参考にしていた、いわゆる「名付け辞典」的なものにもそういったアドバイスがあったことを思い出しました。そういえば最近の名付け本はどうなっているのだろう?まさか令和にもなって同じようなことアドバイスしてないよね?と気になり、私はすぐさま書店へ向かったのですが・・・。


次回
・大絶叫!書店で化石発見
・ジェンダーバイアスだらけの謎バイス
・止まらない 私の中のお焚き上げ
の3本でお送りします。

また見てくださいねー。





《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ


高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。

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