2022/07/27 07:10
ぱーぷる
日本最古の醤油蔵に泊まる。そこで体験できること【NIPPONIA 田原本 マルト醤油|田原本町】
奈良県磯城郡田原本町にある『NIPPONIA 田原本 マルト醤油』。
300年以上前、ここはかつて皇室御用達の醤油の蔵元だった。
田原本町は昔から大豆の生産が盛んだ。
地元の大豆と小麦、塩を使い天然醸造製法にこだわり、丁寧に作られた醤油は実に風味豊かで、地元の人に愛されていた。
しかし戦後、食料難により閉業。
それから約70年の年月が過ぎ、18代当主・木村浩幸さんが蔵にある祖父の遺品整理中に眠っていた古文書を見つけ、製法を読み解き、『マルト醤油』の復活を遂げた。
そして、2020年8月奈良伝統建築様式がそのまま残る蔵元は、宿として生まれ変わった。
市街地から少し離れた、田畑に囲まれたこの地で、
日本最古といわれる醤油蔵に泊まる。
そこでできる体験とは。
オープンから間もなく2年になるが、すでに雑誌や口コミから、
宿を求めて、都市部からわざわざ訪れる人が多く注目の宿となっている。
【建物】大和の伝統的工法を用いて建築された歴史ある醤油蔵
「大和棟」と呼ばれる奈良伝統建築様式が用いられている『マルト醤油醸造所』。
約445.89坪(約1473.72㎡)ある敷地内には、築130~140年になる醸造棟や居住棟、書庫などがそのまま残っている。
江戸時代以降の道具や扉、壁、家具など随所に当時の蔵人の暮らしを感じられる。
日本瓦の屋根には、七福神が置かれ、宿泊客を見守っている。
当時は大豆、小麦、塩を保存するための食物庫として使われていた建物。今は4つの客室となっている。
【客室】趣感じる蔵を改装した客室
少し手を加えながらも、扉や壁など歴史を残した客室は全部で7室用意されている。
スイートルーム以外は全てメゾネットタイプとなっており、
各部屋それぞれがもつ当時の空気や蔵人の生活を大切に守りつつ、リノベーションされている。
木村家の古文書などが眠っていた部屋。
テレビも時計もない空間はゆったりとした時間が流れる。
全ての部屋にはアートが飾られ、必ず醸造所に関わりのあるモチーフが描かれている。
寝室は間接照明と窓の光のみで、やさしい光に心が安らぐ。
ベッド横にあるサイドテーブルは、かつて木村家で使用されていた「長持」を切って作られているもの。
本棚には醤油や田原本町に関する書籍が置かれおり、自由に楽しむことができる。
洗面台は全室赤膚焼きのもの。
全ての部屋についている、奈良の木を使用した檜風呂。部屋いっぱいに癒しの香りが広がり、思わず深呼吸したくなる。
スイートルーム「木藤」。
木村家当主が代々住んでいた母屋の2階にあるこの部屋は約66㎡あり、5名まで宿泊可能。
窓の外にはのどかな風景が広がり、いつまでも眺めていたくなる。
【食事】ミシュランガイドにも選ばれたシェフが創り出す醤油の世界
当時貴族のために使われていたとされるこの空間には約20席あり、宿泊客は皆このレストランで食事をする。
宿泊客以外でも、ランチ、ディナーのレストラン利用はできるが、朝食は宿泊客だけのお楽しみ。
ランチ、ディナーともにメニューは2つのコースから選べる。
前菜からデザートまですべての料理に醤油が使用され、和をベースとした創作料理に。
地元農家さんが手塩をかけて育てた野菜もふんだんに使われ、お皿は華やかに彩られる。
普段馴染みのあるメニューもシェフの腕にかかれば、格別なものに。
醤油の概念を覆されるシェフ渾身のアイデアに驚かされる。
おしながきは醤油の名前で表され、一見メニュー名を見ただけではどんな料理か想像がつかない。
次に何が出てくるか予想するのも、また一興。
メニューは八節の時期に替わり、「2年醤油」と「3年醤油」は春の限られた期間しか味わえない貴重なもの。
醸造期間によって、風味、香りの違いを楽しめる。
生醤油をスポイトで垂らして食べる。醸造所だからこそ味わえる本来の風味が、一番分かりやすい食べ方。
欄間にも使われているこのデザインは『マルト醤油』オリジナルのもの。川で漁をする網がモチーフになっていて、幸せを掴むことを表し「幸あれ」と願いが込められている。
【体験】醤油しぼり体験
チェックインから夕飯までの間に自由に参加できる「醤油しぼり体験」。
当主自ら建物の説明をしながら、併設された醸造蔵まで案内してくれる。
当主の人柄、思いが表れた言葉は、お客さんの心に響き、思い出残る人気のコンテンツとなっている。
醸造蔵
蔵の中は薄暗く、菌の繁殖を防ぐため、蔵の中への立ち入りは禁じられている。
熟成期間中は蔵の外にもかすかに醤油の香りが漂ってくる。
ここで2年間醸造させる。
「醤油しぼり体験」は蔵の手前にある部屋でできるようになっている。
無加熱、無ろ過の状態のもろみ(しぼる前のもの)を上から体重をかけて力いっぱい絞る。
ポタ、ポタ、とゆっくりと落ちた搾りたての醤油は極めて新鮮で、香り高い生醤油だ。
葛餅を炙ったものにしぼりたての醤油をかけて食べる。
ここでしか味わえない、この上ない贅沢な体験。
【体験】18代当主・木村浩幸さんによる朝参り
朝食前、朝7時半ごろ集合。
『大神神社』の別宮で、縁結びの神社でもある『村屋神社』まで、またも当主自ら宿泊客を案内。
朝のすがすがしい空気の中、心とからだを入れ替える神聖な時間に。
朝参りに参加した人は『マルト醤油』オリジナルのご朱印帳をもらえる。
「両参りご朱印帳」となっており、
『村屋神社』と夫婦関係にあり、日本最古とされる『大神神社』のご朱印も押せるようになっている。
両神社をお参りすることで御利益があるそう。
18代当主・木村浩幸さん
宿を訪れた人からは、当主の案内が面白かったという満足の声が届いている。
コース料理でも使われていた醤油はお土産でも購入可能。「生揚げ」は醸造所だからこそできる商品。無加熱、無ろ過、天然醸造の3つの条件がそろって完成する。
NIPPONIA 田原本 マルト醤油
- 住所/奈良県 磯城郡田原本町伊与戸 170
- 電話/0744-32-2064
- 営業時間/ チェックイン15:00~18:00/チェックアウト~10:00
備考/レストラン ランチ11:30~14:30(L.O12:00 )/ ディナー18:00~21:00(L.O18:30)
- 定休日/臨時休業あり HP「マルト便り」をチェック/レストランのみ水曜定休日
- 駐車場/7台