2021/03/12 01:00
ぱーぷる
第4回 葛木坐火雷神社(笛吹神社)【奈良のつれづれ古都散歩〜ぱーぷる編集部が行く社寺ときどきグルメ〜】
さて、今回訪れたのは葛城市の『葛木坐火雷神社』。
読み方は「かつらきにいますほのいかづちじんじゃ」。
2020年の夏頃から話題となった『葛木坐火雷神社』。
その理由は、社会現象ともなった人気漫画「鬼滅の刃」に登場する人気キャラクター我妻善逸が編み出した技「火雷神」を冠していることから。県内外問わず、多くのファンが訪れています。
広大な敷地は、歩ける範囲でいうと約6,500坪。全体では2万坪弱。
ちなみに甲子園球場のグラウンドが4,450坪。とにかく、とてつもなく広いということが分かります。
大きな鳥居を潜ると、これまた大きな階段が現れます。
急勾配というほどではないにしても、なかなかの段数をひいひい言いながら登ると、大きな広場に到着。
ここまで来ると本殿が見えてきましたが、その前に目が向くのは大きな大砲!
砲身の部分だけでも3メートル以上、全長は約4メートルあり、静かな神社の境内の中に佇むその姿は、一度見たら忘れられません。
実はこれ、日露戦争で実際に使われていたカノン砲。
日露戦争時には、様々な戦利品が日本中の神社等に奉納されたそう。『廣瀬大社』にも、ロシア製の大砲が見られます。
しかし、太平洋戦争時に金属が不足。多くの戦利品は軍へと収集されていきました。
では、なぜ『葛木坐火雷神社』では残っているのか。
その答えは山の中腹にあり、大きな大砲を運び出すことが困難だったことから、収集を免れたと考えられています。
『葛木坐火雷神社』の主祭神は、火と雷の神様である「火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)」と、音楽の神様「天香山命(あめのかぐやまのみこと)」の二神。
天照大神が天の岩戸に隠れた時に、竹で作った笛を作って鳴らした天香山命。
その天香山命の子孫が、天皇から「笛吹連」という名前を賜り、一族の祖神を祀る神社を「笛吹神社」と称し、一族が住む地が「笛吹」と呼ばれるようになりました。
音楽の神様が祀られていることから、学生さんや趣味で楽器演奏をしている方はもちろん、プロの音楽家も訪れているそうです。
火は人々に恩恵を与えるとともに、どんなものをも焼き尽くす畏れられる存在。
毎年11月15日には、そんな火の神様に感謝を伝える「鎮火祭」が斎行されています。
技術が進み、火を直に目にすることが減りましたよね。
小さいお子さんはマッチをつけるのも難しいと聞く現代。
改めて、火の大切さや畏敬を感じる機会となるお祭りですね。
他にも7月17日やには長い竿に12振りの提灯をつけて町を練り歩く「夏越祭」や、秋には「秋季御例祭」など多くのお祭りが行われています。
春はサクラ、夏にはアジサイ、秋にはモミジなど季節の植物はもちろん、宮中に献上したとされる「波々迦(ははか)の木」が鳥居横にあります。
この「波々迦の木」があることから、平安時代には『笛吹神社』が存在していたことが分かります。
近年では、自然環境の変化により本数が激減していたのですが、現在は増殖に成功。
昔から残る一本の木も、一時は弱っていたそうですが「若いもんには負けん!」とでも言うかのように現在は元気な姿を見せてくれます。
鳥居を潜る前に、その荘厳な姿を拝んでみてはいかがでしょうか?
社務所には「火守」や「音守」など、主祭神にまつわるお守りが並びます。
お守りは「買う・売る」ではなく、神様から「いただく・授ける」もの。
ちょっとした言い回しですが、こうした文化や考え方はしっかりと守っていきたいものですよね。
宮司の持田さんは、「きっかけはどうあれ、当社に参拝してくださった方々には、日本の文化や伝統をしっかり伝えていけたらと思っています」と話してくれました。
『葛木坐火雷神社』を訪れた際は「鬼滅の刃」の縁を感じるだけでなく、日本の神社について知るきっかけにしてみてくださいね。
葛木坐火雷神社(笛吹神社)
- 住所/奈良県 葛城市笛吹 448
- 電話/0745-62-5024
- 営業時間/8:30~16:30
- 定休日/無
- 駐車場/有