2018/03/14 01:00
vol8.人気No.1の美仏、阿修羅がおわす『興福寺 国宝館』
今日は奇跡のように美しい彼に会いに行こう
彼はアイドルである。そして神である。
3つの顔と6本の腕、憂いをたたえた表情と素晴らしいプロポーションは完璧なバランスを保つ。ミケランジェロのダビデ像から約800年も前に生まれた、日本彫刻史上最高の美少年である。
天平時代から約1300年の間、幾度もの火災をくぐり抜け、奇跡的にその美しさを保ち続けた仏像界のスーパースター。その名は阿修羅。
2009年に東京と九州で開催された「国宝 阿修羅展」の入場者数は165万人。その年の展覧会の、世界一の入場者数であった。公式ファンクラブだってある。会員は現在2500人以上にのぼる。
興福寺境内にある国宝館
その彼に奈良ではいつでも会える。おわすのは、“国宝・重文の宝庫”興福寺の国宝館である。
ここには天平の美の極致がある。国宝・重文64点。ぜひにも見たい拝みたい、阿修羅のみならず最高峰の仏像たちが結集する。
そしてその大半をガラスケースなしで拝めるのも魅力。はるか古代から人々が祈りを捧げた仏像が持つ力を、その美の輝きを、じかに感じ取ることができるだろう。
2018年1月1日にリニューアルしたばかりの館内は白と黒が基調に。ドラマティックな照明が仏像を際立たせる。
国宝55点、重要文化財9点が拝める。(絵画・書籍は展示替あり)
入ってすぐ、荘厳な気配に身が包まれる。
鎌倉彫刻の躍動美をまとった金剛力士像に天燈鬼や龍燈鬼。天才仏師・運慶の手による釈迦如来像頭部や、高さ5メートルの壮麗な千手観音像…。
ここは博物館ではなく祈りの場なのだと知る。宗教的空間と博物館的空間が融合。思わず手を合わせたくなるような、そして心が洗われるような思いとともに拝観する場となっている。
そして、阿修羅に会う
阿修羅は影まで美しい。右から左から正面からうつりゆく表情とともに注目したい。
3つの顔は右が幼い少年、左が思春期、正面が憂いの中にも迷いを立った青年期の顔とされる。古代インド神話では荒ぶる悪神であったのが、釈迦の教えで仏法の守護神に。
その美しさと尊さに泣き出す人もいるという。
万人を魅了し、癒し続けた仏像界のスーパースターであることに違いない。
彼から何を見るか、何を感じるかはその人の心次第。清らかな心の旅となりそうだ。
興福寺 国宝館
- 住所/奈良市登大路町48
- 電話/0742-22-7755
- 営業時間/拝観時間 9:00~17:00(入館は16:45まで)
- 定休日/無休
- 駐車場/有(有料、乗用車1000円)