奈良食材×中国料理の技法を楽しむ | 春暁(奈良市)

奈良市にある『春暁』は、いわゆる“中華料理店”という枠では収まりきらない一軒。

料理のベースにあるのは中国料理の技法だが、主役はあくまで奈良の風土と食材。華やかさよりも、土地の時間の流れを丁寧にすくい取るような構成が印象に残る。

若草コース 6,380円

若草コースは、最初の一皿で方向性がはっきりする。

奈良ののっぺ汁は、滋味深く、派手な主張はないが、身体に静かに染み込む味わい。
ここで「今日はゆっくり食べる日だ」と自然にスイッチが入る。

前菜6種盛りは、量よりも“間”を楽しむ構成。

それぞれが軽やかで、次の料理への期待を邪魔しない。中国料理にありがちな重さはなく、むしろ和食的な余白を感じる。

見た目も美しい料理を小皿で7種類(!)いただく前菜6種盛り。

特に印象に残ったのが、奈良県産の蕪と干し貝柱のスープ。 

旨味の方向が非常にまっすぐで、素材の輪郭がはっきりしている。足し算ではなく引き算で成立している味で、春暁の料理哲学がよく表れている一品。

自家製餡入りカニ爪の揚げ物は、ここで初めて“中華の楽しさ”が前面に出る。

香ばしさとコクはあるが、後味は軽く、次の皿への負担にならない設計。技術の高さを感じるポイントでもある。

春雨炒めや季節魚のライスペーパー蒸しでは、奈良野菜や大和橘といった土地性が明確に表現される。

特に柑橘の香りの使い方が繊細で、料理全体に静かな立体感を与えていた。

メインとなるヤマトポークの黒酢酢豚は、酸味と甘味のバランスが非常に穏やか。

8年熟成黒酢の角がなく、酢豚という料理のイメージを良い意味で裏切ってくる。毎日でも食べたくなる、というシェフの原体験がそのまま皿に落とし込まれているようだった。

締めの近藤豆腐と蟹肉、白米は、派手さはないが、このコースには欠かせない一皿。

デザートの杏仁豆腐も、甘さ控えめでミルクの質感が主役。大和茶とともにいただくことで、食後の余韻が驚くほど長く続く。

豪華な店内でいただく中華料理は格別。

『春暁』は、奈良でしか成立しない中華料理を、本気で形にしている店だと感じた。

華やかさやわかりやすさではなく、土地の時間、記憶、技法を一皿ずつ積み重ねていく。その姿勢こそが、この店のいちばんの魅力なのだと思う。

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年間600店舗以上を食べ歩き、フォロワーは4万人越えという奈良の人気インスタグラマー。プロカメラマンが上質な食の情報をお届け。

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