橿原からクラフトビールの新しい風。『FARMENTRY(ファーメンタリー)』 で味わう発酵の一杯

奈良から世界へ飛び出した新進気鋭のブルワリー

今回ご紹介するのは、奈良県橿原市に2024年誕生したクラフトブルワリー『FARMENTRY(ファーメンタリー)』。

なんと2025年の「Japan Brewers Cup」ではオープンからわずか半年で「淡色ラガー部門1位 」を獲得。さらに今年はドイツで開催されている世界的なクラフトビールの品評会「Finest Beer Selection」の「American ale」 部門にて最高得点を獲得するなど、世界のクラフトビールファンからも注目されている新進気鋭のブルワリーだ。

お店の場所は、大和八木駅のバス停から奈良交通バスで「五井」下車のち徒歩1分。電車→バスの乗り継ぎは必要だが、醸造所併設のタップルームでは、その場でもビールをいただけるので、是非トライしていただきたい。

ほかでは味わえない至福の一杯

「新しいけれど飲みやすい」「個性的だけど親しみやすい」そんな絶妙なバランスが、ファーメンタリーのビールの魅力。個性豊かなラインナップで飲み比べも楽しめる。筆者は車で取材に訪れていたため、現場では飲まずに「No.03 ヤヨイIPA」と「WILD SOUR ALE」の2本をお持ち帰り。「No.03 ヤヨイIPA」は、上述の「Finest Beer Selection」の「American ale」 部門で最高得点を獲得したビールである。マンゴーやパイナップルなどの爽やかなフレーバーが特徴で、トロっとまろやかな飲みごたえだ。

「WILD SOUR ALE」は人為的な酵母の管理を極力抑え、野生酵母による自然に近い発酵によって作られたビールだ。酵母は瓶内でも生きており、時間を置くごとに風味がまろやかになっていくという。飲んでみると独特の酸味と濃厚な味わい。グラスに注いだ後の温度変化でも味わいが変わっていくのが面白い。

クラフトビールをあまり飲んだことがない人にとっては、どちらもこれまでのビールに対する概念をひっくり返すのには十分な一杯だ。

この10年ほどで爆発的に増加している国内のクラフトビール製造所。しかしそんな中で、事業開始からわずかな期間で堂々たる成果を叩き出した『ファーメンタリー』。果たしてその秘密はどこにあるのか。代表の西崎翔さんにお話を伺うと返って来たのは「熱意です」という一言。果たして、熱意だけでこれほどのことが可能なのであろうか?

熱い想いで表現するビールの“テロワール”

西崎さんは大学卒業後、奈良県立医大で放射線技師として勤務。しかしながらビール造りに対する強い興味と情熱を捨てきれずに、ブルワーの道へと進んだ。まず修業先に選んだのは、和歌山のクラフトブルワリー 『VOYAGER BREWING』。醸造技術だけでなく、クラフトビール造りの本質を学んだという西崎さん。クラフトビール造りにおいて大切なのは、その土地、文化、空気感まで一杯のビールに閉じ込めることだという。これはフランスにおけるワイン造りの流儀の一つ、“テロワール”と同じ考え方である。

設備まで自分たちで作る、異例のブルワリー

なんとこちらの醸造設備は、全て西崎さんが自ら組み上げたもの。「自分の理想の醸造がしたい」との想いから、醸造設備の設計から配管、計器など機材の輸入、設置まで自ら行なったという。国の補助金等を使い、専門事業者に依頼・発注することもできたが、そうすると自由な事業運営ができなくなると考え、自ら組み上げることを決意。それでも醸造設備を作るにはかなりの費用がかかる。必要資金は、銀行担当者を熱い思いで説得し、なんとか融資まで漕ぎつけた。

「人間引き返せないところまで行くと、何とかやり遂げるものです」と、涼しげな顔で語る西崎さんだが、その根本にある熱量が並々のものではないと言う事はこの施設を見れば明らかである。

「WILD SOUR ALE」の野生酵母を醸している木樽。ワインや日本酒の樽を買い取って再利用している。

FARM(農)+ ENTRY(入口)=『FARMENTRY』

店名の「FARMENTRY」は、FARM(農)+ ENTRY(入口) を掛け合わせた造語。ビールの原料である麦やホップは、もともと農産物。ゆくゆくは自社栽培のホップや穀物、副原料などを取り入れたビール造りも視野に入れているという。 大量生産では表現できない、土地の個性を一杯に閉じ込めた橿原でしか味わえない特別な一杯。「FARMENTRY」で醸されているのそんなビールだ。

FARMENTRY

住所:奈良県橿原市五井町197-5
営業日:不定休
営業時間:※営業日、営業時間については公式Instagramをご確認ください。
駐車場:有

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松石

長年フードイベントの出店ディレクションを担当。日々“奈良のうまいもん”探しに奔走中。尊敬する人は、中島らも。

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