イベント
2023/10/18 11:46
ぱーぷる編集部(永野)

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

奈良県奈良市にある奈良大学で、「天平衣装をまなぶ」という講演が行われた。

この講義のテーマは「復元過程のお話から、古典文化・日本文化の知識を深める」こと。

講師は古代衣装研究家・山口千代子先生。
山口先生は、洋裁教室を自宅で開きながら奈良国立博物館での解説ボランティア活動をきっかけに古代衣装を考案・創作、講演活動を全国各地で行っている。


発表された衣装の種類をご紹介

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」 美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」 美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

今回の発表会で紹介された衣装は次の通り。

●衣装
飛鳥時代・・藤原京時代(天武・持統朝)
服制は朝鮮風から唐風に以降の過渡期だが高句麗系ファッションが感じられる。

●奈良時代・平城宮
身分・位を服の色で表した。サイズが違ってもデザインは同じ。
遠くからでも身分は認識できた
身分の高い順
紫・薄い紫・赤・薄い赤・緑・薄い緑・縹色・薄い縹色
身分や位の違いによって公服を、礼服・朝服・制服に分けて規定された。

●礼服(らいふく)
5位以上の貴族が重要な祭祀や元旦の際に着る服

●朝服(ちょうふく)
官人が宮廷の公事に携わる際に着用する服。(文官・女官の最も日常的な宮廷服)

●制服(せいふく)
一般庶民が公務の時に貸与される衣装(公務員のユニフォームと同じ)
素材は布(麻)・機能性がある(動きやすい工夫)

●写経生(写経の仕事)
絞り染め 庶民に役職が着る
汚れたら持ち帰る許可を得て、洗濯のために三日間の「洗濯休暇願」の文書が正倉院宝物にある。

●貫頭衣(かんとうい)
農民・庶民が着ていた。麻布の首だけ開けた粗末な衣服。

●男性衣装
袍(上着)・袴・冠(黒・本物は漆紗冠)笏(5位以上は象牙、以下は木。メモ帳に役目をしていたという説もあり)・佩飾品(はいしょくひん)腰には必ず小刀(木簡を削るため)他に魔除の玉など

顔を隠す布もあり、女性は薄い布・男性は目の部分を切りぬかれている。

●女性衣装
袍・背子(ベスト)・裳(本物は巻きスカート)・翳(さしば・高貴な女性が人前で自分で顔を隠す小道具)領巾(ひれストール・もともとは騎馬民族が埃よけ凌ぎに顔に巻いていた実用品)

遣唐使が持ち帰った唐の衣装 袖が長くハイネックが特徴(唐の都と平城宮の人々は同じ衣装)

発生地は騎馬民族(現在のウイグル・チベット自治区)の衣装で、馬に乗るのに便利なツーピース型(上着とズボン)。中国古代は和服の着物のスタイルでワンピース型だった。
それが唐のニューファッションとなり、中国全土に広がり奈良時代にそのまま日本に遣唐使が持ち帰った。

チベットの気候は朝晩の寒暖の差が30度以上あり、寒さにも凌げるデザインで、手綱を握るのに手袋の役目も果たすので袖を長くした。襟も首の詰まったハイネック。

その後、ツーピース型デザインは全世界に広がり、現代の洋服のルーツとなった。

日本の服装史の中で古代にも洋服の一時代があったと言える。

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」 美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

今回参加したのは大学1年生~大学院生 19人、教員3名の合わせて22人。

背丈などの関係で、衣装に合わせた人選学科募集で抽選で選んだ。

髪型ヘアスタイルの違いも面白い。

未婚の人の髪型(並髷)二つ結び、女性が男装してる方もいた。

身分の高い豪族の婦人は10人以上のお世話の人がいて、顔を隠す人もいた。

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

女性衣装は和服(着物)をリメイク。
男性衣装は新しく新調して復元。5~6年で衣装の模様が変わったので、奈良時代の文様素材集めが難しい。

奈良時代の文様の帯や着物がいっぱい使われて、
300年~1400年経った今でも当時のシルクロード文化が和服に残ってるということに驚きで魅せられた。

山口先生の着ている衣装は働いている調理人。
昔の方は栄養状態などの関係で小柄な体型が多く、服装の流行があったことも興味深い。

授業を終えて

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

5年前までは毎年行われていたこの講義。

体験のみで発表や解説はなく、今回は復元して実際に着て参加するといった講義内容だった。
それが学生さんにとって大切な経験であることは間違いない。

それぞれの衣装を着替えるのにかかる時間は15分~2時間(髪型やメイク、待ち時間も含めて)。

山口先生の説明


活動では15年近く携わっている。

出身は奈良の香芝市。
「今後も引き継ぐものであってほしい、衣装は博物館や資料館に後々でも活用してもらえるように。」
という想いで、最初は古代衣装研究しながら趣味でやっていたそう。

衣装に関しては、万葉集から細かいことはわからないが、万葉歌に衣装のことが書かれているのでそこから学んだそう。

学生さんへ伝えたかったメッセージを聞くと
「奈良時代が洋服の時代と分かってもらい、興味を持ってもらえると嬉しい。」
とのこと。

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

国文学科 鈴木准教授から学生へメッセージ


「ご縁をいただいて、天平祭で学長が着てたのもあり、学生さんが着てみたいという声があった。衣服がどんなものか分からないと理解するのが難しい。実際に着て、動きづらさなど体感するともっと理解できたかと思います。視覚聴覚で体験してもらいたい、1年生で体験できたのは今後3年間で大学生活のなかで財産になるのではないかと思います。」

山口千代子先生の衣装解説・挨拶


「千数百年も前の人々の衣装を二十一世紀に生きる私の手でよみがえらせてみたい…。その衣装は現代にも通じるモダンさがあり、想像を広げていくと古代の人々がぐっと身近になるような気がします。そして当時の生活や政治、文化は現代に受け継がれていることを実感させられます。正倉院宝物として現代が伝存している他、仏像や仏教絵画、日本・唐の敦煌・古墳壁画および桶などに観ることができます。その文様は和服の着物や帯の図柄として、1300年を経た現在にも引き継がれております。正倉院宝物衣装の魅力にのめり込んだ当初の感激と興奮が伝われば幸いです。」

美しい天平衣装を奈良大学で!山口先生により復元された「古代衣装」

山口先生の制作された衣装は舞台衣装、公立博物館など展示で発表され、平城宮跡でおこなわれる天平祭の衣装行列では、450人分の衣装を製作された。
奈良県に来た時に目に触れる機会が今後もありそうだ。

また、今後の天平祭には大学の学生さんにたくさん参加してほしい。

山口先生や天平祭実行委員会などに関わる、全ての方の願いを感じて、これから衣装に袖を通す楽しみやこのような経験が素敵な思い出となれるように、素晴らしい活動をされている山口先生のように私も古代衣装に魅せられた一人となった。

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