バー・カクテル奈良県宇陀市
2023/03/10 21:00
ぱーぷる編集部(眞杉)

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

奈良県で有名なクラフトビール『奥大和ビール』。
奥大和地域で生産された果物や薬草などを原料とし、作られるハーバルクラフトビールだ。

これを手掛けるのが、『奥大和ビール』代表・醸造家の米田義則(よねだ よしのり)さん。
2018年11月に地元である宇陀市にタップルームをオープン。
2021年2月には、タップルームに併設した『TAP TO BED』をオープンした。

2017年、地元である宇陀にUターンし、奥大和ビールを開発。
現在はビールだけに留まらず、奥大和で活動する人々と一緒に、地域活性化を目指し尽力されていると噂を聞き、米田さんを訪れた。


バンド活動を経て、地元宇陀に

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

東京で音楽活動をしていた米田さんだが、出身は奈良県宇陀市。
高校時代は学校に行かず、毎日家にこもってギターを弾いていたそう。
そんな米田さんを見かねて、ご両親は上京を後押し。17歳でギターを担いで東京へ。

メジャーデビューを果たし、その後作曲や音響の仕事にも携わっていた。
しかし、デビュー20年という節目にあたり、新しいことにチャレンジすることを決意。

「どうせやるなら、東京ではなく地元で。さらに地域に役立つ仕事であり、自分の好きなことを」。

そんな矢先、宇陀市のまちおこしプロジェクトの一環で、企業家募集を行っていることを知った。
米田さんは、大好きなビールを事業企画にし応募。見事採用され、未来が拓かれた。

ハーブライフコーディネーターやメディカルハーブコーディネーターの資格を持っていることから、ハーブや薬草を使ったビールを開発。
そして『奥大和ビール』が誕生したのだ。

ベルギービールに魅せられて。ビールはアート

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

米田さんがビールの魅力にはまったのは、20代の頃に出会ったベルギービールがきっかけ。

ベルギービールは、色や味、香りからアルコール度数に至るまで、多様でバラエティに富んいる。

さらに、スパイスやハーブ、フルーツを加えるものもあり、同じ味わいのものはないと言われるほど。

作り手たちの創意工夫が加わった多彩な味わいをみせるクラフトビールは、アートそのもの。
音楽と同じような、芸術的感覚に触れたという。

ビールを開発するにあたり、北海道から沖縄まであらゆるビールを巡った。
そこで出会ったビール職人さんは、やはり元々、音楽をしていた人や芸術家が多かったそう。米田さんと同じような感覚をもち、クラフトビールに魅せられる人が多いのだろう。

さらに、「米田さん以外に誰が作る」と言わんばかりに、ここ宇陀は飛鳥時代から続く薬草のまちであり、恵まれた気象条件ということもあり、古くから農業が盛んで、豊富な農作物が手に入る地域でもある。
彼こそが、ここでクラフトビールを作るべく人だったのだ。

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

米田さんが作る「奥大和ビール」は、奥大和地域で生産された果物や薬草などを原料につくるハーバルクラフトビール。

定番の「AROMA WHITE(アロマホワイト)」は、全体的にやさしい香りで飲みやすい白ビール。

ふんわりオレンジのフルーティーな香りを感じつつ、ほんのりスパイスが効いた清涼感のある飲み心地。

さらに、米田さんが一番思い入れのある「SPICE DARK(スパイスダーク)」という名の黒ビール。
2019年初めて参加した、ビールの名誉を争う世界大会で見事金賞を受賞したビールなのだ。
ローズマリーやカルダモンなど、エッジの利いたスパイスが特徴的で、奥深い味わい。

実はこの世界一を開発してわずか半年で手に入れた。
米田さんの自信につながったのだ。

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

宇陀を広く見つめて ビールを通して繋がっていくプロジェクトの輪

しかし「あくまでビールは奥大和の魅力を伝える一つの手段」と米田さん。

Uターンする時は、確かに「ビールで奥大和の魅了を伝えていきたい」という目的ではあったが、実際に奥大和の人たちと出会い、触れ合う中で考えが変わってきた。

大自然の中で暮らす人たちは、とてもエネルギッシュでプロフェッショナルだと米田さんは話す。
「そういった人たちとビールを掛け算して、奥大和の魅力を広げていきたい。」
その思いから実現したのが、木製で作られたタップハンドル。

これは、奥大和の作家さんに作ってもらったもの。
一つ一つ、それぞれの作家さんが思い思いのままに作成。

米田さんの手によって注がれ、そのストーリーは語られていく。
作家さんの思いが詰まったタップから注がれる一杯は、一層格別なものとなる

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

最近では、山の課題にも目を向けている。
生態系が壊れることによって生じる獣害対策として、お店ではジビエ料理とビールのペアリングにも力を入れていく。

そして、同じ志を持つ者同士で集まり、山を開拓し、奥大和の魅力を感じてもらえるような楽しい場所づくりも思案中。

「今まで、自分がやりたいことの根幹にビールがあると思っていたけど、実はそうではなくて、ビールはあくまで枝葉の部分なのかもしれない」と米田さんは広がる領域の中で感じ始めている。

ビールを通して繋がっていく人やプロジェクトの輪。
広く見つめると、一つ一つのプロジェクトが枝葉の部分にあたる。
それらに共通する目的こそが、根幹なのかもしれない。

今はまだ、確信こそしていないが、その根幹は「ウェルビーイング」なのかもしれないと思うようになった。
昨今よく耳にすることが増えている「ウェルビーング」。幸福や健康という意味であり、ウェルビーングを意識した環境で働く事で、人々の心身が安定して、意欲的に仕事に取り組むことができるようになるといわれている。
この「ウェルビーイング」を中心に活動していけば、奥大和の魅力を最大限に広げることができ、次世代へと繋ぐことができるのではないかと感じている。

今行っているプロジェクトが、未来を見据えた活動になっている。

「奥大和ビール」で繋ぐ未来を見据えた地域社会。代表・醸造家・米田義則さん|宇陀市【naranto】

一緒にタップルームを支えるスタッフ・大村さん

米田さんの人柄と語り口調は、穏やかで控えめではあるが、ぶれない芯の強さを感じるものがあった。

やりたいことはとにかくやってみるタイプの米田さん。
「事業計画を何年もかけて書く人もいるけど、そのやり方は自分には合わないと思っている。1年後には社会情勢も変わっているだろうし、その時々の流行もある。自分の中で“これ”だと気持ちが盛り上がった時、腑に落ちたときに行動する。あとは、進めながら調整していく」。上京した時も、Uターンした時もそうだった。新しいことに臆することなく、どんと構える米田さんの姿勢こそが、人との輪を広げるのかもしれない。これからの活躍に期待だ。

奥大和ビール TAP ROOM

  • 住所/ 奈良県宇陀市大宇陀拾生672-1
  • 電話/0745-88-9001
  • 営業時間/水・木曜11:00~14:00/金曜11:00~14:00・17:00~20:00/土曜11:00~20:00/日曜11:00~18:00
  • 定休日/月、火
  • 駐車場/なし
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