子どもの教育生活
2022/11/29 13:00
ぱーぷるmirai編集部

思考力や表現力にもつながる 「読み解く力」を育むには


読解力とは「読み解く力」、つまり読んで内容を理解する力です。ただ「読む」だけなら、ひらがな、カタカナ、漢字を習えばできますが、文章が伝えている意図や背景など、本質的な意味をイメージして理解できるかどうかが大切です。そのためには、言葉の理解以外にいろいろな経験が必要になってきます。
今話題の「玉井式教材」を展開している教材クリエイター 玉井満代先生に「読み解く力」についてお伺いしました。


株式会社タマイ インベストメント エデュケーションズ 代表取締役
タマイオネットムインディアPvd 代表取締役社長

玉井 満代さん
京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「国語的算数教室®」「図形の極®」など、映像やアニメーションを活用して学習する玉井式教材を全国展開。2022年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。著書に「世界に出ても負けない子に育てる(青春出版社)」「小学生までに育みたい 自己肯定感(小学館)」「公式にたよらない『算数的読解力』が12歳までに身につく本(KADOKAWA)」他。国内外で多数講演。また、2021年度より、奈良育英グローバル小学校の副校長に就任。


Contents
① 幼少期には、目に見える花(成果)だけを求めず、根っこ(土台)を育てる
② 「知覚」と母国語を「読み解く力」
◯ 知覚を育むには?
③ 「読み解く力」を育むには子どもが面白がる本
④ バイタリティの根っこにある一つ
  「自分の考えを表現する力」
◯ 子どもは尊厳ある一人の人間。親としてどう向き合う?


① 幼少期には、目に見える花(成果)だけを
求めず、根っこ(土台)を育てる


幼少期の子どもが「種」だとすると、まずは「根っこ」をどんどん生やしていく方向で教育したほうが良いと思います。しかし、土の下の根っこだと外から見えないので、親はどうしても、子どもの小さな花(成果)を早く見たくなるものです。「早く計算ができるようになった」「漢字をたくさん覚えた」「国名と首都名を覚えた」などの、わかりやすい成果です。

しかし、実は目には見えなくても、根っこをぐんぐん生やしている子もいます。根っこが弱いままで茎が伸びて小さな花を早く咲かせても、長い人生には嵐の日もあれば雨の日もある。伸びていたはずの茎が簡単にポキッと折れてしまうこともあるんです。子どもの頃に少し学齢よりも早く何かを覚えたり、できたりしたことが、大人になったら何にも役に立たない、といったことも、社会に出るとあるわけです。子どもの時代に親を喜ばせるために、小さな花を咲かせて見せてきたのに、大人になれば咲き続けることができなくなる、といったこともあるのです。そう考えると、特に幼少期においては、根っこか花、どちらを意識して育てることが大切でしょうか。そう、太い根っこさえあれば、未来において万一茎が折れてしまっても、何度でも立ち上がる(花を咲かせる)ことができるのです。



特に多様性が重要視される変化の激しいこれからのグローバル社会においては、しっかりと根っ子が育っていないと、心が折れてしまいます。
ここで言う根っことは、いわゆる「非認知能力」と言われるようなもの。外からは見えず、数値的にも測れないものです。「プリントを何枚やった」「自分の学年よりかなり上の計算ができるようになった」など、見える花は保護者から見てもわかりやすいものなので、お金を払ってでも習得させたいと思いますよね。
もちろんそれはそれで、自分の学齢より上のことができるということで、モチベーションを上げる意味では有効なわけですが、同時に根っこになるものを育てることを怠ってはいけません。
今回は、根っこにしておきたい力のひとつ、母国語(日本人の場合は日本語)を「読み解く力」を焦らずしっかりと身につける方法をお話しします。


② 「知覚」と母国語を「読み解く力」


「読み解く力」には、言葉を単体で覚えるだけではなく、覚えた言葉をつなげて理解する力が必要不可欠です。「覚える」だけなら、繰り返し書いたり読んだりすればできるようになるのですが、読解できるようになるためには、言葉などの知識をつなげて、書かれている情報を整理し、状況を理解する力が必要です。そこでまず重要なことは、「知覚」です。知覚とは、実際の体験で見たもの、聞いたもの、感じたことなどから得られる情報を、意味づけするまでの過程を言い、思考力にも深く関わっているものです。

例えば、「山」を、写真や映像で見ても「山」だということは分かりますが、実際に山に行って、空気を感じたり、風の香りを感じたり、一緒にいる家族や友人の笑い声や様子を見たり聞いたりしながら感じる「山」とでは、思考のふくらみが違います。山に行ったからといって突然何かが出来るようになるわけではないかもしれませんが、その後の知的学習においても、また、知識と知識とをつなげる過程においても、知覚によって得た情報は重要な役割を果たします。

次に動物を例にとってみましょう。例えば、猫の絵を見せると、子どもたちは「猫」の形を知って、「猫」と覚えることはできますが、実際の猫を触って、動きを見たり、鳴き声をきいたり、匂いを嗅いだりすることで、知覚から思考がどんどんとふくらんでいくのです。

このような知覚体験の豊かな子どもたちが、「家の屋根の上に猫がいます」という文章を読むと、無意識かもしれませんが「その猫は何をしているのかな?」「困っているのかな?」「寝ているのかな?」「降りられるかな?」「どうしたら助けられるだろう?」といった想像力を働かせるのです。

子どもたちは、日常生活や読書からインプットしたさまざまな「言葉」や教わった知識と、五感をとおして過去に体験したさまざまな「知覚」とを合わせて、思考をふくらませていくということ。この思考のふくらみや知識と知覚とのつながりが、優れた「読み解く力」のもととなり、ひいては、国語力や算数の文章問題の読解力、理科の観察力や分析力、クリエイティビティにまでつながっていくと思います。そのためにも、子どもたちには、可能な限りたくさんの体験をさせることが大切です。それらが結果的に、「学習力」にも非常に影響があるものだと言えるからです。


知覚を育むには?



例えば、メロンを食べるとしましょう。大人が種をとり、切った状態で子どもへ出すと、切ったメロンが「メロン」になります。一方、子どもにまるごとのメロンを触らせて、切るところや、種を出すところを見せると、その立体感、重さ、感触、匂い、切るときの音、すべてを脳に吸収して「メロン」として認識するようになります。

このような知覚体験に合わせて、多くの言葉を学習していくと、子どもは自然と「素敵な表現」ができるようになっていきます。知覚と同時に大切なことは、“言葉のシャワー”を普段の日常生活でかけてあげること。雨が降っていたら「雨がしとしと降っているね」、夕焼けを見て「空が茜色だね」、キュウリやトマトを見て「みずみずしいね」など、“言葉のシャワー”とともに知覚体験をさせると、子どもたちは、初めての言葉でも知識としてすんなりと吸収していきます。そして、知らず知らずの間に、言葉に興味を持つようにもなり、将来実際に使える言葉となっていくのです。

思考をふくらませる知覚体験とは、キャンプやリゾート、海へ行くなど、大それたことをしないといけないわけではありません。普段、身近で起こっている何気ない出来事であっても、美しい言葉を意識して大人が使うことで、子どもの読解力のもとを育むことができるのです。


③ 「読み解く力」を育むには子どもが面白がる本を



読解力を育むために、読書が大切であることは言うまでもありません。しかし、それには大前提として、子どもが本を好きになることは外せません。そして、それによって多読へとつなげることが重要です。そのためには、とにもかくにも子ども本人に好きな本を選ばせてあげることです。大人が道徳的な良本を選んで子どもに「読ませる」のではなく、子どもが興味のある本を自分で選ばせることです。大人は「本で勉強させる」というイメージを捨てて、「本を好きにさせる」ということに重点を置いてほしいと思います。大人が良い本だと思っていても、子ども本人がワクワクしないと本を好きになりません。また、文字を認識する能力、私はこれを「文字脳」と呼んでいますが、その育成も、多読をすることによって育まれます。しかし、これについても大人が「読む本を推薦する」「本を読む時間を決める」という方法ではない方がいいでしょう。なぜなら、読書に対して「受け身」の子どもたちをつくることになってしまうからです。

まずは、子どものワクワクポイントを見てあげることが大切です。それは子どもによって違います。例えば、電車が好きだったら電車の本が読みたいでしょう。伝記ものが好きだったり、歴史ものが好きだったりするかもしれません。同じような種類の本ばかり読んでいても良いのです。好きな本をワクワクして読んでいると、本が面白いから自然と多読になっていきます。本を機械的にたくさん読ませたら本が面白くなるのではありません。そもそも本の面白さに気がつかなければ本を読まなくなるのです。面白い本を”自分で“探させてあげてください。

本に対象年齢が書いてあったとしても、子どもによっては読みやすい文字の大きさが、必ずしも年齢どおりではないことも要注意です。せっかく子どもが好きな本を選んだのに、「あなたは高学年なのに、そんな小さい子が読むような本を読むの?」などと言うと、子どもはそんなふうに思われたくないため、親に忖度して自分にとっては難しいと感じる本を選んでしまうこともあります。そうすると、結局本が好きではなくなってしまうかもしれません。

たとえ学齢より下と思われる、大きい文字の本を選んだとしても、「この子は、今この文字の大きさが読みやすいんだな」とシンプルに受け止めてあげてください。まずは、好きな本を自主的に選ばせて、読ませること。本が面白くなって多読するようになること。これが目標です。

もしも大人が本を読むきっかけを与えたいとするならば、子どもが好きな本の文字の大きさと絵の配分をチェックして、同じような本を10冊くらい置いておき、「あなたが好きな本を選んでごらん」と言ってあげてください。子どもが好きな本を選べる喜びを大切にした薦め方なら良いと思います。

読解力とは、結局のところ、たくさんの文章を読み込んで伸ばしていくしかないのですが、子どもが自然と多読になるには、好きな本から入らせてあげること。ここで失敗してしまうと本を読まない子になってしまいますので気をつけましょう。


④ バイタリティの根っこにある一つ
「自分の考えを表現する力」


これからの日本は、人口減少が進み、仕事でも生活でも、より多くの外国人と接する機会が増えることでしょう。日本人も海外で働くことが特別なことではなくなるに違いありません。だからこそ、「世界でも生きていける」といった「メンタリティ」と「表現力」を持たせる必要があります。そのバイタリティの根っこの一つとして「自分の考えを自分の言葉で表現する力」は欠かせないものとなるでしょう。そのためにも、読解力は根っこになる力です。焦らず、じっくりと、太く、長く、育てていってあげてほしいと願っています。


子どもは尊厳ある一人の人間。
親としてどう向き合う?



子どもたちを育むために、実はとても大切だと思っているのは親の笑顔。子ども時代は今しかないのですから、時間がある限り子どもと接して、その子なりに考えていることを聞いてあげてください。また、普段から愛情ある言葉を伝えながらコミュニケーションを取ってあげてください。
子育てや教育に、正解を求めるのは困難です。しかし、教育の最終目的は「子どもの人生が幸せなものになること」。これは世界共通の目的であり、目標です。そして、これを達成するのは、実は、保護者の皆さんの「愛」なのです。

どうか、愛ある言葉、優しい笑顔を忘れないでください。皆さんのお子さんはいつもいつまでもお母さんやお父さんが「大好き」なのですから。


玉井式全国研修会が開催されました!






子どもたちの教育に熱い思いを持っている教育者が集う研修会が、京都で開催されました。全国の学習塾や私立小学校、幼稚園が集まり、玉井式の活用方法や大切にしていることをプレゼンし情報共有しました。小さい頃から知的好奇心や「考える力」を支える非認知能力を育むこと、一方的に教えるのではなく、子ども自身が探求し、答えのない課題を試行錯誤すること、成果を急がないことなどの大切さを伝えていました。
 学ぶ楽しさ、自分を表現する楽しさを知り育った子どもたちは、きっと自信を持ってどこの世界にも羽ばたいていけるでしょう。一人ひとりの強みを伸ばす教育が、全国の思いある教育者によって進化しています。

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