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2022/11/11 21:00
ぱーぷる

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティ再生を図る『プロジェクト粟』主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

2022年12月12日(月)~15日(木)に奈良市『奈良県コンベンションセンター』にて、日本初となる『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』が開催される。

そこで奈良県奈良市で「大和の伝統野菜」を調査・研究等をしている『プロジェクト粟』の主宰・三浦雅之さんにインタビューを行った。



ガストロノミーツーリズム世界フォーラムとは?

「ガストロノミーツーリズム」とは、地域に根差した食文化を楽しむ旅のことである。

その土地の自然や風土から生まれた、食材や文化によって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的とした、いわゆる「その地域の食」と「観光」をコラボした旅の形である。

奈良県は日本の食文化やその他の文化の発祥の地とされている。
ここから全国に広まったものも多い。

例えば清酒や完全甘柿、まんじゅうなどの「食」だけでなく、樽などの道具や相撲や歴史文化なども奈良県には発祥地とされるものが数多くある。

そんな「はじまりの地 奈良」で開催されるのが、第7回目となる『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』である。

主催するのは、国連世界観光機関(UNWTO)と美食で世界をリードするスペイン・バスク州サンセバスチャン市にある料理専門大学校『バスク・カリナリー・センター(BCC)』。

各国観光大臣級及び政府関係者、自治体関係者及び、教育関係者、食・農・観光関連の事業者及び団体、シェフやジャーナリストなど国内外から約600名が参加を予定している。

食・観光の伝統や多様性をサポートするとともに、文化の発信、地域経済の発展などを目的に、国連世界観光機関(UNWTO)が中心となって、2015年以降、この世界フォーラムを開催している。

今年で7回目となり、日本で行われるのはこれが初めて。

『プロジェクト粟』主宰 三浦雅之さんにインタビュー


『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』が開催されることに伴い、ぱーぷるでは「ガストロノミー最前線」と題し、5回にわたって地域に根差し、食と文化を次世代に繋げていくことに尽力されている4人の人物と、世界フォーラムの直前紹介をお届けする。

今回は「大和の伝統野菜」を調査・研究し、栽培の継承をライフワークとする『プロジェクト粟』の主宰・三浦雅之さんにスポットをあてる。

まずは世界フォーラム開催について三浦さんは
「今回、奈良県で開催されることで、私たち奈良県民が奈良にある豊富な食文化を再認識するいいチャンスだと思っています。
かつてより奈良は日本の中で新しいものを生み出していく場所でもあったので、世界フォーラムを通して、奈良県独自の新しい日本的なガストロノミーツーリズムが始まるきっかけになるのではないかと期待しています」
と述べられた。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

トウモロコシとの出会いから始まった、三浦さんの農的暮らし


「大和の伝統野菜」を調査・研究し、地域活性化の活動に取り組んでいる三浦雅之さん。
どうしてこの分野に興味を持たれたのだろうか?

実は、もともと三浦夫妻は全く違う仕事に従事していた。
それは医療福祉の仕事である。
「予防医学」を学んでいた2人が「農業」に関心をもったきっかけは「トウモロコシ」との出会いだった。

日本ではかつてより予算の3分の1が医療・福祉に使われていた。

しかしながら、2人が医療・介護の現場で働いていた当時、高齢者が要介護者として施設に入り、家族と別れて最期を迎えているのが現状。これで果たして本当に幸せなのかという疑問を抱くようになっていった。

そこで見聞を広めるために、当時の世界最先端の福祉都市と称されていたアメリカのカルフォルニア州バークレー市を訪れた。

その旅の途中でカリフォルニア州にあるネイティブアメリカンの集落に滞在する機会があり、その体験がのちの2人の人生を大きく変えることとなった。

この集落にはバークレーのように近代的な介護施設などないが、幼い子どもから高齢者まで共にトウモロコシを育て、活き活きとした生活を営んでいた。

トウモロコシはこの地の人々の主食であり、暮らしの中心にあるもの。種を中心にした「生き方」にこそ、人が豊かに暮らすことができる生活に繋がるのではないか。

帰国後、農を学び、農の生活を始めた三浦さん。

在来種の聞き取り調査を始める中で、ネイティブアメリカンの集落で感じた人々の暮らしは、日本の昭和30年以前の農村とよく似ていることに気がついた。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」は、主食の米と共に食される副菜と言われるおかず文化がとても豊か。おかずには、地方独自の食材を生かした郷土食があり、そこにはその地で作られた野菜が使われている。

つまり、食文化を継承するものこそが、その地の伝統野菜だったという答えが見つかった。

近年では、健康で幸福度の高い暮らしを意識した「健康寿命」や「ウェルビーイング」「生涯現役」という言葉がある。
これらを追求する中でも、伝統野菜を軸にした地域のコミュニティはとても関係が深いものだということがわかっている。

「大和の伝統野菜」とは


「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

「大和の伝統野菜」とは、2005年に開催された大和野菜認定審査会で、奈良県による認定を受けてブランド化に向けての生産と流通促進の取り組みが行われている県内産野菜のことである。

認定基準には以下の2つがあげられる。
①戦前から奈良県内で生産が確認されている品目
②地域の歴史や文化を受け継いだ独特の栽培方法により「味・香り・形態・来歴」などに特徴を持つもの。

2022年9月現在認定を受けた野菜は「宇陀金ごぼう」「ひもとうがらし」「大和まな」など20品目に上る。まだ未認定・未確認の在来種も存在し、奈良の在来種の多様性が伺える。

「大和の伝統野菜」が流通してこなかった理由


「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

2022年には、三浦さんが経営する農家レストラン『清澄の里 粟』と『粟 ならまち店』はともに、『ミシュラングリーンスター』を獲得した。『ミシュラングリーンスター』とは、持続可能なガストロノミーに対し、積極的に活動しているレストランを評価するものである。

今までの活動がここまで注目・評価されるまでになったのは、25年間続けてきた三浦さんをはじめ県や携わってきた人々の功労だろう。

三浦さんが県内の在来種について調べ始めた当初はたった9品目だったという。
この数字に、人々の関心の低さが表れている。
しかも、奈良県には在来種について調べている人は1人としていなかった。

なぜ、「大和の伝統野菜」が今まで流通していなかったのか、またブランド化されてこなかったのか。

それは、大阪と京都という大消費地に隣接する奈良県の立地に理由があった。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

古くから水田化され、江戸時代から田畑輪換が生産体系になっていた奈良盆地では、商品作物の需要が高かった。
収穫された作物は大阪・京都へと換金作物として出荷されていった。

さらに1961年に農業基本法が制定されたことにより、農協や市場を使って県内外に流通する仕組みが整えられ、規格の統一性、旬を先取りする早生品種、生産量などが求められるようになったのだ。

食の安定流通を図るため、求められた規格の野菜を生産するための品種改良など、農業が工業化されていった背景がある。

しかしそれらとは別に、「大和の伝統野菜」はひっそりと農家の自給用として作り続けられていた。
市場に出回ることはなくとも、それぞれの地域に根づき、小さな種子は脈々と受け継がれてきていたのだ。

その理由が次にある。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

先人たちが育み継承してきた「大和の伝統野菜」。

伝統野菜の聞き取り調査の時、三浦さんが農家さんに必ず尋ねる質問があるという。

「なぜ作り続けてこられたのか」

すると、多数の方々から異口同音に2つの答えが返ってくる。

1つ目は気候風土に適応していて「つくりやすい」いうこと。
そしてもう1つは、「家族や日ごろから付き合いのある友人・知人の好物だから」ということ。

2つ目の答えに三浦さんは驚いたという。
「誰かの喜ぶ顔を思い浮かべながら栽培されてきた」ことが素敵だと感じた。

名も知れず、ひっそりと受け継がれてきた小さな農


「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

脈々と受け継がれている種子。
大切な種子を途絶えさせるわけにはいかない。

顔が見える相手の笑顔を想像しながら、大切な人を思い浮かべて育てられてきた「大和の伝統野菜」を三浦夫妻は「家族野菜」と呼んでいる。

そして家族野菜を中心とした「コミュニティ」こそが、ネイティブアメリカンの集落でみた人々の暮らしを実現できると確信した。

この地域コミュニティの再生こそが、三浦さんが「大和の伝統野菜」にこだわる理由であり、「生涯健康で豊かに暮らせる地域づくり」を目的として活動を続けている『プロジェクト粟』につながっている。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

『プロジェクト粟』としての取り組み


三浦さんは、トウモロコシをきっかけに「大和の伝統野菜」と出会い「生涯健康で豊かに暮らせる地域づくり」のために活動を続けている。

2002年に、在来種野菜の発信拠点でもあり、地域交流拠点にもなる場として農家レストラン『清澄の里・粟』を開店し、その後『プロジェクト粟』として、在来種の調査・発掘や農村文化の調査・継承などを目的とするNPO法人『清澄の村』と、在来種の農産物を生産する『五ケ谷営農協議会』、そしてレストラン運営など農業の六次産業化に取り組む『株式会社 粟』の3事業が連携・協働する体制を確立させた。

「大和の伝統野菜」を調査し、育て、提供する。
この3つの役割をそれぞれが担っている。
三浦さんは「先人が育み継承してきた品種は地域資源であり、またその土地固有の食文化や栽培方法が秘められている、かけがえのない地域の文化遺産でもある」と、それを守っていくことの大切さを伝え続けている。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

「大和の伝統野菜」を身近に


「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

しかし、『プロジェクト粟』や生産者がどれだけ「大和の伝統野菜」を守り広げていく活動をしたとしても、消費者(奈良県民)も、考え、意識を高めなければ意味がない。

それにはまず、「大和の伝統野菜」に実際触れることから始めてみてはどうだろう。

『清澄の里 粟』や『粟 ならまち店』では「大和の伝統野菜」を使った料理が楽しめる。
素材そのものの味を生かした繊細な味付けで、調理法なども参考になるだろう。

また、まほろばキッチンJR奈良駅前店や橿原店などの県内農産物直売所では、一部の「大和の伝統野菜」も販売している。難しく考えず、一般的な野菜と同じように自分で調理を楽しんでみるのも一つの手だ。

そして近年では家庭菜園をする人が増えてきている。
安心・安全を求め、「農がそばにある暮らし」や「小さな農」に関心のある方にはぜひ地元の野菜を育ててみてはと三浦さんは提案する。
自分で栽培すると愛着がわき、そのプロセスを感じることが隠し味となる。
それこそ今の時代に合った、SDGsなどにも繋がる。

まずは、ひもとうがらしや紫とうがらしから挑戦するのがおすすめだそう。
自宅の庭で誰でも簡単に育てることができるようだ。

大切なのは食べて、知って終わりではない。
繋げていくことにこそ意味がある。

知ることからはじまり、親しみ、それを食することで食文化が守られる。生産する者と消費する者が理解を深め、その自然なサイクルを紡いでいくことが求められている。

「大和の伝統野菜」で地域コミュニティを再生!「プロジェクト粟」主宰・三浦雅之さんに迫る【奈良のガストロノミーツーリズム最前線 Vol.1】

第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラム


会場参加は食・農・観光関連の方のみ。
一般の方はオンライン配信(要登録)から参加可能。
国内外の注目の料理人やオピニオンリーダーの話を聞けるまたとないチャンス!

ただいま参加登録受付中!


清澄の里 粟

  • 住所/ 奈良県奈良市高樋町861
  • 電話/0742-50-1055
  • 営業時間/10:45~16:00(L.O15:30)
  • 定休日/不定休
  • 駐車場/有
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粟 ならまち店

  • 住所/奈良県奈良市勝南院町1
  • 電話/0742-24-5699
  • 営業時間/ランチ11:30~15:00(最終入店13:30/L.O14:00) ディナー 17:30~22:00(最終入店20:00/L.O21:00)
  • 定休日/火
  • 駐車場/なし
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