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2022/06/17 23:06
ぱーぷるmirai編集部

【奈良育英グローバル小学校の目標】– Vol.47 – 母国語重視型トランスリンガルとは

【奈良育英グローバル小学校の目標】– Vol.47 – 母国語重視型トランスリンガルとは


これからの子どもたちは、これまでよりも世界に目を向けなければいけない時代を生きることになります。今のままの教育で良いのか、変わっていかなければいけない点は何なのか。グローバル時代を生きる子どもたちの成長のために、どのような価値観が必要なのでしょうか。
何のために教育するのかという、教育の価値観をしっかり持って、「親が笑顔でいること」「子どもへ何よりも愛していると伝えること」そして、「花(成果)を咲かせることだけでなく、丈夫な根っこ(土台)を育ててあげること」を大事にする。そう言うのは、「世界に負けない子に育てる」教育を提唱し、独自の能力育成教材を開発し続けてきた玉井満代先生。


玉井先生の考える子育てと教育について、48回にわたり、さまざまな視点でお届けします。


- 編集部 −
第47回目のテーマは、奈良育英グローバル小学校の「トランスリンガル」。
母国語である日本語を重視しながら、英語などを学ぶカリキュラムを取り入れています。
なぜ母国語が大切なのか、世界の人とやりとりしていくには何が必要かを玉井先生に教えていただきました。


母国語である日本語を
しっかり習得した上で、英語に変換する


「トランスリンガル」というのは「バイリンガル」とはまた違います。あくまで日本人ですので、通常はどんな科目も日本語で勉強したり、テストを受けたり、母国語の中で育っていくものです。もしある年から、日本の義務教育として小学校から全科目英語で学びましょうと制度が変わったらどうなるでしょうか。先生もすべて英語で教えることになります。テキストもすべて英語です。とても大規模な制度改革です。しかし、実際インドなどはそういう方向で教育改革が行われています。学校ではすべて英語で学びますし、授業もテキストもすべて英語なんです。

ただインドでも、やはり小学1年生から英語だけですべてを理解できるかと言うと、当然難しいので、ヒンディー語など母国語で説明しながら進めています。そして、だんだん英語に慣れさせて、すべての学問を英語で理解できるように舵を切っているんです。
日本はそこまでの大転換はないですが、選択はできるようにはなったと思います。大学受験を英語で受けることができるようになりました。しかし、まだ高校はほぼ日本語での受験のみになっています。なぜなら日本は母国語である日本語を重視しているからだと思います。これによって日本人の思考力の原点は母国語、要するに思考を日本語で組み立てているということです。

英語と日本語は完全な一対一の対応にはなりません。英語と日本語のみならず、その国で発達した言語というのは、その国の文化や慣習、風習、歴史を含んで言葉に仕上がってきていますので、文化や慣習が違う国の言葉は、ぴったりそのまま訳すことが非常に難しいんです。ですから、受け取り方に工夫が必要です。

学校で習う「Sit down」というのは「座れ」という意味ですが、普段、外国人からそんなことは言われないものです。「Sit down」というのは命令ですから、よほど緊急の時以外は使いません。普通は「Your seat」や「Have a seat」といった言い方をするわけです。
「犬じゃないんだから、Sit downってなんだ」という話になるんですが、日本では長い間、学校で「Sit down」と教わってきています。つまり、私たちが学んできた言葉とネイティブの人が受け取る意味にはズレが生じることがあります。

しかし、私たちは日本語に囲まれて成長する以上、日本語でしっかり思考し、その上で英語を理解してトランスレートしていくことが大切ではないかと思います。実際、小さいうちから日本語も英語も中途半端に混在した環境で育つと、かえって苦労している子も多いのです。
例になる話があります。ある家族がシンガポールで暮らすことになりました。上のお子さんは7〜8歳まで日本に住んでいて、そこからシンガポールへ行って英語での生活になりました。下のお子さんは生まれた時からシンガポールなので英語がネイティブ言語ですが、親御さんが日本人なので日本語を習わせていました。すると、上のお子さんは日本語で書かれている問題も英語で書かれている問題も理解できるのですが、下のお子さんは、日本語で書かれた問題の理解が難しく、英語のほうがわかりやすいという結果になっていきました。
つまり、日本に住んでいる子どもたちは、まずは日本語で書かれていることや言われていることをしっかり理解できるようになることが第一で、その上で英語に置き換えられる力を育むことが大切だと考えています。そのため、奈良育英グローバル小学校では、わざわざ「母国語重視型トランスリンガル」と言っています。「英語で育ちましょう」という意味とは違うのです。

奈良育英グローバル小学校のカリキュラムとしては、やはり日本語を重視していますので、算数も「国語的算数教室」といって、日本語の長文を読む算数を低学年の1年生から取り入れています。一方、「算数を道具に使って英語で話そう」という英語で算数を学ぶ取り組みも進めています。
例えば、「3/4」や「×(かける)」は英語で何て言うのかと問われても、なかなかパッと出てこないですよね。英語のテストや英検では出題されませんし、理数系の英語は普段習う機会が少ないものです。しかし、もし理系の大学へ進もう、そして海外で学ぼうとするとその時点から必須となります。このように、母国語を重視しつつ英語で算数もしています。


言葉だけではなく、
その背景にある他国の文化の理解を


トランスリンガルには他の意味もありまして、「他国の文化や慣習も理解していきましょう」という意味もあります。言葉が訳せるだけではなく、異国の文化を尊重して学ぼうという意味です。そういった観点がないと、なぜそういう言い回しをするのかという理解がないまま、ただ言葉を暗記していくことになってしまいます。
例えば、フランス語を学ぶときにフランスの文化がわかったほうが面白いですし、正しく学ぶことができます。そういったことも含めて学習していくことが大切だと思います。


(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生


英語の場合は、母国語でなくても英語を使っている国はたくさんあるので、ネイティブの人だけが英語を話すわけではありません。インド人も中国人も母国語がありながら、英語を公用語として使いこなす人が増えてきています。
その中で、中国なら中国、インドならインドという各国のバックボーンがあって英語を話しているわけなので、それをわかった上でコミュニケーションをとることが大切です。政治的な話や歴史的な話、それぞれの国・地域の立ち位置などを理解した上でのコミュニケーションになってきます。それをわからないで、ただ言いたいことを言っていると、英語がいくら話せても喧嘩になってしまうこともあるでしょう。このようにトランスリンガルには、いろいろな国・地域のバックボーンを理解して話しましょうといった意味があるのです。


日本人としての
アイデンティティをどう持つか


グローバル化に対応するためにも、われわれ自身が日本人としてのアイデンティティをどう持つかが大切だと思います。海外の人たちとのさまざまな交渉の場などでは、日本人としてどう思うかといったことを聞かれることが多々あります。談話をしている中で、第二次世界大戦のこともよく話題にのぼり、歴史観や日本人としてどう考えるかを聞かれることもあります。

私がよく聞かれたのが「あなたの国はアメリカに原爆まで落とされたのに、どうして怒っていないの?」「私たちなら絶対許せない!」とインドの人たちは言うんです。インドの小学校の教科書には日本は原爆を落とされた国だと明記されているので、みんな知っているのです。

現在、日本は平和になっているわけですが、当時、現実に何があったのかを学び、子どもたち一人ひとりが考える場が乏しいのが日本の戦後教育です。正しい歴史を学び、自分の頭で考えることが奪われてきたのではないかと思います。与えられたものに、とにかく「イエス」と言いながらやり過ごす癖がついているのではないかとさえ思います。

けれども、普通のビジネスマンでさえ、海外に行くとしばしば日本の伝統や文化、歴史観などについて聞かれます。異国の人と対等にコミュニケーションをとるためにも、自分の国の歴史や文化をよく理解し、日本人としてのアイデンティティを持って世界に出て行くことが大切ではないでしょうか。


クリティカル・シンキングの重要性


奈良育英グローバル小学校の教育指針として「4つのCと1つのI」を掲げています。この中に、これから生きていく子どもたちにとって重要なものとして、「クリティカル・シンキング」というのを入れています。


【4つのCと1つのI】
①Creativity
Critical Thinking
③Communication
④Collaboration

Imagination


(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生


クリティカル・シンキングとは、物事を批判的に見ることができる精神であり思考力です。単に文句や不満を言うことではなく、「これは本当に正しいのかな?」「これでいいのかな?」「実はこうなのではないかな?」と多角的に物事を見て発想し、発言ができるような精神です。このメンタリティがないと、世界に出た時に「あなた自身の意見はないのですか?」ということになります。

奈良育英グローバル小学校で大事にしたいことは、「日本語であっても英語であっても、自分の考えをしっかり持って、自分自身で相手に説得しながら伝えられる力」です。その力をもって生きていかないと、権力のある者や強い者に盲目的に従ってしまうのではないかと思います。

これからの若い人たちには、自分の考えや正しいと思うことを諦めないで発信していくメンタリティを持って、世界に羽ばたいて欲しいと思います。


トランスリンガル、
そして日本人であること


グローバル社会は英語がマストなので、英語はできるほうがいいのですが、その根幹となるのは日本語だということを忘れてはいけない。それは、私自身が世界に出て思いました。私は50歳で起業して、世界でプレゼンテーションを始めたわけですが、その時にいかに自分が日本人として話を聞かれることが多いかを体験しました。それに対して意見を言えないことや、自国について知らないことは恥ずかしいということが身に染みてわかりました。

子どもたちには、小さいうちから日本人だからこそできることを身につけてくれたらいいなと思っています。例えば、浴衣(ゆかた)は着られるようにしようとか。着物はやはり日本の文化の一つですし、他にも日本人であることを誇りに思えることがたくさんあるので、それらを子どもたちに伝えていきたいと、自分が世界に出た経験から思います。

このように、トランスリンガルには、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、他の国や地域の文化を尊重し、英語や外国語を話せる人になって欲しいというビジョンがあるのです。


(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生



いよいよ次回の「Vol.48」は玉井先生の最後のコラムです。
奈良育英グローバル小学校が大切にしている教育のひとつ「STEAM教育」についてお届けします。6月24日(金)配信です。お楽しみに!



(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ 玉井満代先生

《教えてくれたのは》
(株)タマイ インベストメント エデュケーションズ
代表取締役 玉井満代さん

京都市生まれ、ICT教材クリエイター・脚本・演出家。20年にわたる全国数百の学習塾での指導経験を生かして、学校、またインド、ベトナム、シンガポール等で続々と導入されている「玉井式 国語的算数教室®」「玉井式 図形の極®」など、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を全国展開。2021年現在、日本全国で24,000人が学習しており、有名私立小学校・大手学習塾・幼稚園・保育園及び学童などで広く活用されている。また、インド著書には「世界に出ても負けない子に育てる」(青春出版社)他。国内外での年間講演回数は120回(2018年度)を超える。洛南高等学校附属小学校で「玉井式 図形の極®」が授業カリキュラムとして取り組まれている。また、2021年度より、奈良育英グローバル小学校の副校長に就任。

>> TAMAISHIKIオフィシャルサイト
>> 奈良育英グローバル小学校



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