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2022/06/26 07:00
春川悠

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

ここは奈良県生駒市にある「まほうのだがしや チロル堂」。地域でこどもを支えるメソッドや寄付文化の普及、店内通貨などのユニークな取り組みで、今全国から熱い視線が寄せられているお店だ。ガチャガチャを回して手に入るチロル堂独自の通貨「チロル」を通して、大人はこどもの楽しい居場所づくりに貢献できる。多様な人を惹きつけるこのアプローチは、いかにして生まれ、どんな未来を見据えているのか。オーナーの一人であり「ダダさん」の愛称で親しまれる吉田田タカシさんに、こどもも大人も心躍るチロル堂のまほうについてお話を伺った。

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

アートスクール「アトリエe.f.t.」や大学講師を通した教育活動のほか、デザイナー、クリエイティブディレクターなどマルチに活躍。バンド「DOBERMAN」のボーカルも務める。

関わる余地「関わりしろ」があるデザイン

チロル堂という場所を一言で言い表すのは難しい。駄菓子屋兼飲食店としてこどもが訪れるのはもちろんのこと、昼は近隣住民や働く人々のお腹も満たし、放課後にはこども達がカウンターに並んで宿題やゲームにいそしみ、夜は酒場として大人の憩いの場となる。

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

扉を開けると、こどもの興味を掻き立て、大人には懐かしい駄菓子屋の風景が。

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テイクアウト弁当も販売。昼休憩に訪れる大人の姿も多い。

チロル堂では、駄菓子だけでなく、お弁当やカレーなどを販売・提供。これらの代金を大人が支払うことで、こどもはガチャガチャを回す100円さえあれば100円以上の価値のものを食べることができる。これがチロル堂の「まほう」のひとつだ。

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大阪・堺筋本町にあるスパイスカレーの名店「ツキノワ」のカレーが食べられる。珈琲とのセットメニューも有。

「ここに来て珈琲を飲むのは、こどもを支えるのが理由ではなく“珈琲が美味しい”とか、“この店が好き”とか、そういう気持ちだったら嬉しい。いち飲食店としてプライドを持ってやらないといけないなと思っているんです。こどもたちを支えているとか、そういうところに甘えたくないなという気持ちはありますね」

そうダダさんが話すように、カレーも珈琲も味わいは本格的。チロル堂では大人が寄付することを「チロる」と呼び、大人は美味しい食事と引き換えにこどもをワクワクさせるまほうつかいになれるのだ。

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この日キッチンに立っていたかおりんさんは、チロル堂を「色んな関わりしろがある」と表す。夜の部・チロル堂酒場来店を機に「私も何か関われたらな」とスタッフになったという。

チロル堂ではお馴染みとなったカウンターに並んで宿題をするこども達の姿。この光景は、こども達の口コミから自然発生的に始まったというのだから面白い。チロル堂にはこども同士で誘い合い、行きつけの場所にしたくなる魅力があるらしい。

こうした予想外の展開を「みんながチロル堂の使い方を熟知してきている」とダダさんは歓迎している。「偶然発酵されて美味しいお酒ができるように、はじめからガチガチにつくり込まずに場を醸す」というのは、チロル堂が当初から方針としていたことだ。ダダさんは、その象徴的なエピソードを教えてくれた。

「ある地域の方がFacebookで呼びかけてくれたんです。“誕生日にいつもみんなプレゼントをくれるけど私はもういらないから、その気持ちを絵本に変えてチロル堂にチロりませんか?”って。チロル堂を知らなかった人たちも“何それ?え、楽しそうだからじゃあそうする”って絵本をチロってくれたんですね。そしたら別の方が“絵本コーナーで長く仕事していて詳しいから”と、Amazonの欲しいものリストを作ってくれました。今度はそれに乗った仲間たちが、また絵本を寄付してくれて。さらには、絵本をチロるだけじゃなくて読み聞かせをしようということになって、ワークショップを開催したんですよ」

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靴を脱いで上がる飲食スペースにはチロ(寄付)による絵本やおもちゃがいっぱい。乳幼児連れでもくつろげる。

「これって予想していなかったことが、勝手に巻き起こっているんですよね。“関わります”の申し入れもなく、勝手にやってるんです(笑)。ジワジワとみんなによってつくられていく感じがあって、最近“関わり代(しろ)”みたいな言葉で言われますが、正にそういうデザインだったと思いますね」

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サコッシュ型チロル堂オリジナルエコバッグを作成中。布も縫製の技術もチロによるもの。長さ調整もできるデザイン性も抜かりない。

大事なのはひらめいた人ではなく、アイデアに乗った人がいたかどうか

空間、仕組み、見せ方、ネーミング──関わりやすい動線や「そのアイデア乗った!」と言いやすい空気づくりは、チロル堂のあらゆるところでデザインされている。しかし、それをいくらやったところで「“乗った”って言ってくれる人がいるかが勝負」。ダダさんはそう言って、ある海外の野外フェスの動画を例に挙げる。

「芝生の広場で大勢の人がピクニックみたいに座って音楽を聴いている中、一人の男性がずーっと変な腰振りダンスをしているんです。それを面白がった二人の酔っ払いが彼に近寄って、そのダンスを真似て踊ったんですよ。変な踊り手が三人になったのが滑稽で、さらに五人くらいが走り寄って踊りに加わります。そこから一気に爆発して、会場にいた全員が集まって踊りまくるめっちゃ変なムーブメントが起きたんです。この動画は縮図で、つまり、おもろいことやる人は一人でもいいんです。乗った人がいるかは、それがムーブメントになるかどうかのポイントになります。アイデアを思い付いた人ばかりがクローズアップされるけど、実はその人って一人で踊っているだけなんですよ。チロル堂では、“乗った!”、“おもろい!”っていう人が、一人また一人と集まってきて、勝手に色々なイベントや人それぞれのチロり方でこの仕組みに乗ってくれました。楽しいことを気持ち良くやりたいんですよ、世界中のみんな。そんな仕組みを“作ったよ”って人が一人でもいたら、みんなやりたいんです。チロル堂でも、関わる人みんな“ありがとう”って言ってくれますね」

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天井オブジェは竹工芸家・三原啓司さん指導の元制作。材料も技術もチロで溢れている。

ハイブリッドな感覚を学び、アクションを起こせる場所

チロル堂はこどもだけでなく、大人にとっても重要な場所だ。こどもに対するメリットと大人に対するメリット。チロル堂に流れる二本の筋についてダダさんはこう説明する。

「絵本の読み聞かせ、ミニチュア制作、勉強嫌いなこどもたちのための英会話教室など、自分の特技を活かしたワークショップを開催して、その参加費をチロってくれた人達がたくさんいます。その人達はみんな口々に、“すごく楽しい”と言ってくれるんです。地域への主体的な関わりが自分の心を豊かにしてくれることに、みんな気付き始めている。これこそが、大人が手に入れているものなんです」

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店内や立看板には思い思いのメッセージが。チロル堂では利用方法や過ごし方、マスクの着用も個人を尊重している。

「こどもがいる人も、いない人も、みんなで地域のこども達を育てるのは僕の理想です。それに賛同してアクションを起こすことが、自分の精神的な豊かさに繋がっていくと思っています。物質的な豊かさだけを求めて進んできた近代社会に限界はとうに来ていて、みんなが心のどこかで精神的な豊かさを求めているんです。物質的な豊かさって、簡単に言うとお金です。お金と精神的な豊かさの二つをバランス良く持つのが、次の時代だと思うんです。“そのハイブリッドな感覚をどこで学んだらいいの?”というのが課題。その答えとなる場所の一つになれたらいいなと思っています。地域のこども達に何かしたい想いがあった時に、珈琲一杯飲むだけでその“何か”ができるんです」

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「サブスクチロ」も“何か”の一つ。「身銭を切って自分が苦労することでこどもを支えるのではなく、自分が楽しくなるために500円や1000円を使う仕組み」とダダさん。(画像はチロル堂公式Webサイト)

チロル堂のまほうが生まれた日

こどもも大人もワクワクするこのまほうの仕組みはいかにして生まれたのか、その軌跡を紐解いていく。

2021年8月20日にスタートした「まほうのだがしや チロル堂」。オーナーは、地域こども食堂「たわわ食堂」を運営する溝口雅代さん、「非営利型一般社団法人無限」理事で複数の福祉事業所を展開する石田慶子さん、東吉野のクリエイティブファーム「オフィスキャンプ」代表でデザイナーの坂本大祐さん、そしてダタさんの4名だ。

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生駒駅ほど近くに佇むチロル堂。手描き看板とのれんが目印だ。営業日程や最新情報はSNSでチェックを。

「溝口さんのお悩み相談からスタートしてるんです」と、ダダさんはチロル堂オープンに至る経緯を明かす。「溝口さんの運営するこども食堂が、コロナ禍により公民館を利用できなくなったんです」。

こども食堂とは、無料または低価格帯で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場だ。たわわ食堂では、家庭や学校、職場とは別のサードプレイス/居場所として、食卓を囲む場を提供している。現在たわわ食堂はチロル堂にて毎週水曜日にオープンしているが、当時は常設の場所を持っていなかった。

「“自分たちの場所があったなら”という溝口さんの思いを知った石田さんが、“ダダさんや坂本さんと一緒にやろう”と提案してくれたんです。僕と坂本さん、石田さんは、“何かやりたいね”って以前から話していたこともあり、“じゃあ1つ目のプロジェクトはこれにしよう!”と。そんな風に動き出しました」

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「尾道からチロル堂に惚れ込んで移住してきた子がいます。チロル堂関連で生駒に移住してくる人が増えました」とダダさん。

こども食堂をやろうとなったものの、どこか引っかかる部分があったとダダさんは続ける。

「本当にリーチしないといけないところにリーチできてないんじゃないかとか、来たら来たでちょっと情けない思いするような仕組みになりがちだなとか。全部のこども食堂が当てはまるわけではないけど、そうなり得る仕組みだなぁと思っていました。リスペクトはもちろんあるんです。こども食堂があることでどれだけの人が救われ、支えられているかということは想像がつきますから。でも、“その中にあるバグみたいなものを、どうにかしても取り除けないかな”と、ずっと考えていました」

チロル堂のまほうの仕組みの種となったこの気付きは、ダダさんが持つ「反骨思考」に起因するものだ。

「反骨思考とは、現状に満足せず、固定概念や前提条件を疑う姿勢です。それは、デザインの考え方と似ています。デザインは、現状と理想の間にある課題を見つめることで生まれてきます。反骨思考からスタートして、現状に対してもっと良くなる可能性があると疑う姿勢から、理想が見えてくるんです。だからこども食堂という素晴らしい仕組みを前にしても、“でも待てよ”、“これって素晴らしいけどもっと磨けば良くなるんじゃないか”、“どうやって磨けばいいんだろう”みたいな視点を持っていました」

この問いの答えはある夜、まほうの仕組みのアイデアとなって表れる。

「僕は趣味で、一ヶ月に一回ぐらい断食と瞑想をするんです。健康など自身にとってメリットがあることから“ファスティング”という言葉になって欧米で流行して、今では逆輸入的に日本人にも浸透してきていますよね。僕もちょいちょいやっていて。断食してる時って、結構頭が冴えているんですよね。ある断食中の夜に考えていて、思い付いたのがチロル堂の仕組みでした」

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チロル堂のこどもの扉には丸い覗き穴が。ワクワクする気持ちを膨らませる。

それは、ふいに見つけた絵本を開くかのようにダダさんの頭の中に映し出された。

────ここはまほうのだがしやチロル堂。大人の入り口とこどもの入り口があります。こどもの入り口をくぐると、そこにガチャガチャがあって、100円でガチャガチャを回すとチロル札が出てきます。

「絵本を自分が読んでいるような感覚で、物語がバーッてイメージできたんです。チロル堂のまほうの仕組みも、入口が2つあることも、既に絵としてハッキリ在って。“できた”という感覚になりました。それを物語調のまま、石田さん達とのLINEグループに送ったんです。そうしたら朝7時ぐらいに、“最高”、“さすが”、“O K!”、“天才”、“いこう!”って、僕からしたら“ほんまに読んだ?”とツッコミたくなるくらい短い形の、でも“100%やろう”みたいな気持ちいいリアクションがきて、“やったー!それでいこう”となりました」

反骨思考がポジティブでポップな形として表れたのがチロル堂

チロル堂のルーツを語る上で、ダダさんのアートのバックグラウンドも外せない。映像で浮かんでいるのに言葉がうまく追いついていない感覚があると、言葉を手繰り寄せるような姿は取材中も垣間見えた。

「自分の中に浮かんでるイメージや絵を言葉で追いかけていって、伝えられるものに直すという作業をいつもやってるんです。言葉に直した瞬間に、大体圧縮されてものすごくチープなものになるんですけどね。感覚を色んな言葉にすることでなるべく包囲網を狭め、手触りのあるものにしていきます」

大学講師として教育活動も行うダダさんが、アートスクール「アトリエe.f.t.」を立ち上げたのは21歳。その前身となるチーム「e.f.t.」をはじめたのは高校時代に遡る。

「マルセル・デュシャンという人らが起こしたダダイズムという芸術運動があるんです。その運動が高校生の頃好きで憧れていました。ぶっとんでいて、めちゃくちゃオシャレだけど、やり口が何だかパンクスなんですよ。僕の“ダダ”って名前もそこからきているんです」

「e.f.t」というチーム名は、芸術家ジャン・コクトーの代表作である中編小説のタイトル「enfant terribles(アンファン・テリブルス)」に由来する。

「アンファン・テリブルスはフランス語で“恐るべき子供達”を意味して、アバンギャルドで才能があり過ぎる人達のことを指します。単なる不良ではなくて、“やばいやつら”と言った方がイメージは近いですね。そういう人達に高校生の僕らはすごく憧れていたんです。高校の昼休みにごく普通の小さなお弁当屋さんに学生100人でドァーっと入って“唐揚げ弁当100個ください”と言うイベントをやったり、バスケットコート2面分ぐらいある絵を描いて先生達を驚かせたり、地上すごろくをやったり。当時は、まぁ、そうやって遊んでいたんですよね。学校がつまらなさすぎて、でも不良になる気はなくて。もうちょっとおもろくならんかなぁと思ってたんです。学校行かなくなるか、おもろくするか。どっちかしかないなら、おもろくしよう。そう思って、半分イタズラでブラックユーモアを含んでいるありとあらゆるバカみたいなことをしたんです。学生運動をリバイバルしたくて、でもどうやったらシリアスではなくポップにできるのかなと考えていました」

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

チロル堂の壁に飾られたガチャガチャをモチーフにしたオブジェ。

その頃からイマジネーションはたくさんあったというダダさん。しかし、社会に憧れや期待は何もなかったと当時を振り返る。

「だから、それを変えたい気持ちがありました。学生の頃は、それをアートや音楽で表現していたんです」

実はチロル堂のアイコン的存在でもあるガチャガチャをモチーフにした作品を、ダダさんは大学時代に制作していた。

「500円入れてガチャガチャを回すと500円分の領収書だけが出てくるっていう、悲しい大人の現実を突きつけるガチャガチャです。他にもFAXから紙が出てきて次のFAXに入るだけみたいな、シュールな作品を創ってました。社会の虚しさみたいなものを見える化してたんですよ。昔からしてきたそういったことが、ポジティブな形で出てきたのがチロル堂です」

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

絵本としてダダさんの脳内に映し出された時には後ろに「(仮)」が付いていた店名は、「チロルチョコ株式会社」の快諾を受けて晴れて正式名称に。

社会への主体的な関わりで自分の心が豊かになる

そんなダダさんが福祉に携わることになったキッカケを尋ねると、返ってきたのは「福祉に携わっている気は全くないんです」という応えだった。

「アトリエe.f.t.の活動をして二十数年経ちますが、当初から発達障がいと呼ばれる大人もこどももいっぱいいました。精神疾患やうつを持っている人、性的マイノリティの人など、ありとあらゆる人達が通う場所なんです。そういう人達が生きづらさを感じることなく、自分を解放して前向きに人生が送れる教育現場をつくってきたんですね。活動していく中で、“これって制度利用したら安くなるやんな?”ということが出てきたので、つい最近になって制度を使っただけで、福祉をやろうなんて思っていなくて。チロル堂も福祉という感覚は全くないですね」

ダダさんの中にあったのは、もっとシンプルで根源的な「好き」という気持ちだ。

「社会の仕組みが悪いせいで、能力が発揮できずに苦しんでいるマイノリティの人達がいるじゃないですか。そういう人が好きなんです。かっこいいなと。嫉妬しているのかもしれない。僕も小学生の頃とか、人の顔とか名前が覚えられなかったりとか、数字が苦手だったりとか、色々なことで悶々としていました。僕もその一人かもしれないけど、そういう人が生き生きしていない状況を、すごく悔しく思っています。例えば、アトリエe.f.t.には学校に行っていない子達や高校や大学を辞めた子もいっぱいいて、人生挫折したみたいな顔をしてることがあるんです。でもそれって、その人達の能力がないのではなく、一方的な物差しでその人を測ろうとしているに過ぎません。その人しか持っていない特別な武器に気付いていないだけなんです。彼らが自分の能力に気付いて、それを生き生きと社会で発揮できるようになるのを見るのが、もうこの上ない幸せなんです。そういうのってジワジワ解けていくんですが、あって思う瞬間があるんです。“今この人、解放された”って。その瞬間に立ち会う時に、“あぁ、やってきて良かったな”と思います」

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

店先には、こどもによるマジック書きのチロル堂のサインが。

ハイブリッドな感覚を持ち合わせた人がたくさんいる地域にチロル堂はある

「チロル堂がオープンしてまだ一年経っていないので、今はまだ実証実験の途中です。こども食堂ができなかったことを僕達ができるかどうかは、まだわかっていません。みんなのチロだけで自走できる状態が何年か続いたら、まぁ成功したなという目安ですね。“大人が地域のこどもに間接的に奢るぞ”、“みんなで地域のこどもを支えるんだ”って感覚が広がるかどうかなんですよ。チロル堂がここにあるってことは、地域の人たちがそういうハイブリッドな感覚を持ち合わせている証拠でもあります。逆に言うとつくっても潰れるんですよ、そういう人達がいなかったら」

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

こども達はガチャガチャを回して手に入れた「チロル札」で駄菓子のみならず、カレーやポテトフライ、ドリンクを飲食できる。

異質なものに寛容な生駒という街

チロル堂のまほうの広がりには、異質なものを受け入れる地域の土壌も一役買っている。なぜ生駒は度量を持つことができたのかをダダさんに尋ねてみた。

「これは推測の域を超えないですが、僕は生駒がベッドタウンとしてこの50年栄えてきたところが大きいのかなと思っています。大阪に通勤していた人達が、培った能力を少しづつ生駒で発揮し始めたんです。アトリエe.f.t.の生駒校を開校して、僕もローカルでやるおもしろさを知りました。まず、オープンしただけで市長が来てくれたのがすげぇなって(笑)。別に市長に認めて欲しかったわけではなく、地域と一緒に活動できる方が楽しいと気付いたんです。生駒の人達って、異質なものに対してめちゃくちゃ寛容なんですよ。普通、地方だと一回離れて、遠巻きにジーっと観察します。それで大丈夫そうならようやくちょっとずつ近付いてくるんです。でも生駒は、“まずは一回乗った!”、“おもしろそうだからやってみる”という調子なんです。これ以上の資産はないと思っています」

こどもの居場所づくりで注目!地域の大人が支える【まほうのだがしや チロル堂】

のれんを開けるとすぐに線路と生駒駅前の近鉄百貨店が見える。珈琲一杯、ビール一杯から立ち寄りやすい立地だ。

チロル堂のまほうの仕組みを全国に

チロル堂への賛同のアクションは、地域に止まらず日本中に広がっている。

「北海道からいつも野菜をチロってくれている人もいて、先日僕も機会がありお会いしました。北海道の広大な農場の真ん中にポツンと家があって、“ここで見えている土地は全部うちの畑です”っていうんです。そんな人があの広大な土地の中から奈良県生駒市にあるチロル堂という小さなお店のことを想像して、考え方を理解して、“自分もこども達を支える一人になりたい”と野菜を箱に詰めてチロル堂に送ってくれてるんだなと思うと、もう、涙が出て。すごいことやなと、めっちゃ感動したんです。全国からチロル堂に賛同してくれる仲間がいることはとてもありがたい。けど同時に、北海道にもあったらいいなとも思うんです。各都道府県にあったら、それはその地域の人が分け合う経済を理解して、ハイブリッドな感覚を持ち合わせている証拠でもあるんです。“まほうのだがしやグループ”として、全国にチロル堂をつくりたいと思っています」

その一手ともなるのが「サブスクチロ」だ。毎月500円から定額のオンライン決済でチロることができる。チロル堂の存続を支え、後の他店舗でシェアする仕組みも叶えるのだと言う。

「サブスクチロはまだ100人にも届いていないのですが、目指しているのは1000人です。1000人チロってくれたら健全に運営できる状態になります。まほうのだがしやグループで、サブスクチロを分け合うことだってできるんです。“自分達は足りたから、余剰の部分は分けても大丈夫”という感覚を共有したい。それは、資本主義の仕組みに対する、新しい取り組みなのかなと思うんです。ビジネスにおいて“数字を上げ続けなくてもいいんじゃないの”と、“脱成長”なんて言葉が流行っています。どこで足りたかを理解するのは、すごく大事なこと。“これでチロル堂は健全に運営できる状態になっている”、“じゃあここで足りたんだ”という自覚が必要です。継続できればそれでよくて、どんどん儲ける必要はありませんから」

あなたもまほうつかいに

最後に、読者へのメッセージを尋ねると、ダダさんは「大人にぜひ来てほしいなぁ」と声を漏らす。

「チロル堂はこどもを支えているけど“こどもの場所”ではなくて、大人が訪れることでこどもを支える場所です。例えば、今チロル堂酒場と題して夜の部も営業しているのですが、これはオススメですね。ビールを1杯飲むと1チロルがこども達の支援にまわっていると思ったら、いくら飲んでもどれだけ酔っ払っても罪悪感がないんですよ(笑)。この感覚は不思議だと思います。僕、今はお酒を飲まないものの、昔は酒飲みだったんです。酒好きな人ってガンガン飲んでいるとちょっとどこかで“こんな飲んでていいんかな”みたいな罪悪感があるんですけど、こんな仕組みがあったらいくらでも飲むなぁと思って(笑)。めちゃくちゃ飲んで、お金使って、翌日起きて、“しまったなぁ〜”って思うじゃないですか。でも“まぁそれでいっか、地域のこども支えてるなら”、“だいぶ支えたな”って思えるんです(笑)。飲食店なんで誰でも来ていいし、珈琲一杯飲んでもらうだけでもチロれます。それぞれのやり方で、チロってくれたら嬉しいです」

まほうのだがしやチロル堂

  • 住所/奈良県 生駒市元町 1-4-6
  • 電話/0743-61-5390
  • 営業時間/ 11:00〜18:00
    備考/水曜日は地域こども食堂「たわわ食堂」 ・たわわモーニング/8:45〜11:00 ・めし処 きさいや/11:45〜13:00 居場所駄菓子屋たわわ堂 14:30〜17:00 ※毎月第4日曜日はたわわ【地域・居場所】食堂 営業時間 11:00〜13:00 ※スケジュールの詳細はまほうのだがしやチロル堂のSNSをご確認ください。
  • 定休日/日、祝日
  • 駐車場/なし
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