子育てコラム生活
2021/12/25 05:00
ぱ〜ぷるmama

【子育てコラム】子育てとジェンダー 「イクメンくん、さようなら。」

子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。


子育て中のモヤモヤをジェンダーの視点で見つめるコラムを連載させていただいております。

今回は「イクメン」についてです。冒頭から恐縮ですが、タイトルは大好きな小説の影響を大いに受けております。

さて。「イクメン」という言葉を聞くようになって久しいですが、この言葉に対して今、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

SNSなどでは「自分の子どもを育てるのにイクメンっておかしくない?」とか「男性は自分の子どもを育てるだけで褒められる」「女性は子育てしても何も言われないのに」という、どちらかと言えば否定的な意見が多く見られます。

いや、本当にその通りで、自分の子どもを育てる人をわざわざ「イクメン」と呼ぶのはなんだか違和感がありますよね。

この“育児する男性”を表す「イクメン」という言葉は、ある広告会社のコピーライターさんによって作られたものでした。また、その言葉を流行らせたいとして2010年には厚生労働省が「イクメンプロジェクト」と名付けた取り組みをスタートさせました。たった10年ほど前とはいえ、今以上に子育てが女性に偏っていた時代でしたから、様々なアプローチで男性の育児参画を進めようと、子育てする男性に対してポジティブな印象を与えるものだったように思います。この言葉はその年の新語・流行語大賞のトップ10にも入り、子育てをする男性有名人などが「イクメン、イクメン」ともてはやされたものです。なお私自身も、親子教室に来てくださるお父さんたちに褒め言葉として「皆さん、イクメンですね~!」なんて言っちゃってたこともありました。


では、当事者であるお父さんたちはどうでしょう。イクメンという言葉をどんな風に思っているのでしょうか。

先日、ぱ~ぷるmama(誌面)の特集で、父親の座談会にオーディエンスとして参加させていただきました。そのとき印象的だったのが、「イクメンアピールしてるみたいになると嫌だから、職場で子育ての話や相談をしにくい。自分自身は、いたって日常のこととして子育てしているのだけど・・・」という意見でした。これを聞き、イクメンという言葉が意識高い系に近い色味を帯びてしまい、もはやイクメンと思われることがお父さんたちにとって嬉しいことではなくなっているのかなと感じました。SNS等を見ていても、「イクメンと言われたくない」という意見の方が多く見られる気がします。

また別の方は「子育てで主にどんなことをしていますか?」という質問に対して「特に何をしてるってこともないですね・・・あまり僕は・・・思いつかないかな・・・」と控えめな発言。しかし丁寧に聞いてみると、おむつは変えるしお風呂にも入れるし父子だけでお出かけもするし、と、十分「子育て」をしていらっしゃいます。それを特別「僕はこれをやっています!」と言うことなく、当然のこととして日々されているようでした。

近年私の教室に来てくださるお父さんたちも、皆さんものすごく手際よく赤ちゃんを着替えさせ、おむつを替え、ミルクを作って授乳していらっしゃいます。抱っこ紐で抱っこする姿も板についていて、普段からそうしていらっしゃるということがよく分かります。

私が長子を産んだのが13年前で、その頃はショッピングモールに買い物に行ってもお父さんが抱っこひもで赤ちゃんを抱っこしている姿なんてほとんど見かけませんでしたから(もちろん地域によっても違うと思いますが)、たった10年ちょっとでこんなにも変わるのかと驚きました。



今となっては「その表現、おかしくない?」と言われがちな「イクメン」ですが、この10年での変化に表れているように、男性の子育てをポジティブに、そしてキャッチ―に、印象に残る形で伝えてくれたという意味では、かなりの功労者(功労語?)ではないでしょうか。信じがたいかもしれませんが、「男が子育てするなんて、格好悪い(まるで妻の尻に敷かれてやらされているようだ)」という時代がそう遠くない過去にあったのですからね・・・。


ただもうそろそろ、この表現に頼らなくてもいいのではないでしょうか。

「イクメン」が2010年の新語・流行語大賞トップ10に入ってからおよそ10年、今年の新語・流行語大賞トップ10に「ジェンダー平等」が入ったことは何とも感慨深いものがあります。女性も男性も当たり前に子育てできる社会が目の前まで来ていると信じたいです。

もちろん、これは男性の意識改革だけで実現するものではなく、社会がしっかりと男性の育児を阻む問題を解決・支援してこそ実現するものですから、当事者だけに「頑張れ」と言うのではなくみんなで一緒に変えていかねばなりません。


ありがとうイクメンくん、お疲れ様。
さようならイクメンくん、もう会うことはないだろうけど。


いよいよ盛り上がってまいりました、いい感じに一曲仕上がりそうです。

あとのことは「お父さん」たちに任せてくれ。
心配せずに行くがいい。


そんな気持ちで「イクメン」に別れを告げる日を1日でも早く迎えたいですね。
曲調はメタルでお願いします。





《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ


高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。

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