子育てコラム生活
2021/11/22 00:00
ぱ〜ぷるmama

【子育てコラム】子育てとジェンダー「ママの笑顔、そんなに大切?」

子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。


子育て中のモヤモヤをジェンダーの視点で見つめるコラムを連載させていただいております。

先日、あるキャッチコピーを目にしました。そうです、「ママの笑顔系キャッチコピー」です。(周知の通り、みたいに書きましたが、私がそう呼んでいるだけです。)

ママの笑顔が家族を幸せにする!とか、ママの笑顔が世界を救う!とか、笑顔で仕事も子育ても楽しむママ!みたいなキャッチコピーを目にするたび、これって誰に向けて発しているキャッチコピーなのかな?と考えることがあります。

え、もしかして、ママに向けて発してます?

例えば仕事でヘトヘトになって帰宅するパパに向かって「パパは笑顔でなきゃ!パパの笑顔が家族の元気の源!お仕事も楽しんでいこ!」みたいなことを啓発するキャッチコピーがあったら、さすがにちょっと狂気を感じると思うんですよね。

「24時間戦えますか」とか「風邪でも絶対休めない」系のCMがなくなった今でも、ママの笑顔系キャッチコピーが何故しぶとく生き残っているのかなと考えてみました。

ママが笑顔でいるのは勿論いいことであり、それ自体は文句をつけることではありません。しかし笑顔でいられた方がいいのはママに限った話ではありませんよね。誰もが笑顔でいられるのが理想です。

それなのにまずママが笑顔でいることを求められてしまうのは、女性、とりわけ母親という存在が「他人をケアする」役割を担わされていることと関係しているように思います。

明るく朗らかに、周囲を気遣い、ときに勇気づけ、共感し、励ます。仕事でこういった役割を担う人もいるでしょうが、プライベートでは主に母親がその役割を担うことが良しとされがちです。「良妻賢母」という言葉が象徴的ですね。キャッチコピーの「ママの笑顔」のあとに他者の幸福がセットになっているところからも、そういった想いが読み取れます。



ちなみに「良妻賢母」でネット検索すると「現代の良妻賢母像とは」みたいな記事がたくさん出てくるのですが、『いつも笑顔で楽観的な肝の据わった妻や母』『感謝を忘れない、聞き上手などの細やかな女性らしさも必要』『良妻賢母の存在が円満な家庭をもたらす』などというアドバイスがわんさか出てきたので、思わず目をかっ開いて大きめの声で「よもやよもやだ!!!!」と叫んでしまいました。

いやいや、背負わせすぎでしょうよ、普通に。

現在の日本は子育てしにくい社会と言われます。そんな中で子育てや、場合によっては仕事との両立に奮闘するママ達に向かって「笑顔でいよう」「楽しもう」「ポジティブに考えよう」と周囲が言うのは、啓発の方向が間違っていると思うのです。

ましてそんなママ達に向けて放たれる「いつも笑顔でいられる心の持ち方をお教えします!」みたいな謎アドバイスには「うっせぇうっせぇうっせぇわ」と心の中で静かに唱えてお焚き上げ完了です。

こう言うと極端ですが、ママにだって不機嫌でいる権利はあるのです。しんどいときは「しんどい」と声を上げていいし、それをしやすい環境であってほしいです。母親という存在を都合よくキラキラと神格化することで、無理や我慢を強いてしまってはいないでしょうか。

自己啓発の推進も結構ですが、それが様々な問題の本質を透明化してしまっては意味がありません。ママたちの意識変革に頼って社会が変わらないのはおかしい。

そんなにママの笑顔が大切なら、ママがママ自身のために心から笑顔になれるよう、社会が変わりましょう。社会を変えていきましょう。啓発すべきは、そちらの方向であってほしいと心から思います。






《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ


高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。

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