鑑賞・見学奈良市
2019/09/27 00:00

令和最初の正倉院展、堂々開催

螺鈿箱(らでんのはこ)

本年の正倉院展は、天皇陛下の御即位を記念し、正倉院宝物の成り立ちを示す宝物や、宝庫を代表する宝物、シルクロードの遺風を感じさせる宝物が出陳される。

今回は北倉14件、中倉8件、南倉17件、聖語蔵2件の41件の宝物が出陳される。
そのうちの4件は初出陳。

その中から7点の煌びやかな宝物をご紹介。

豪華絢爛な宝物に注目


金銀花盤(きんぎんのかばん)

盤面

部分

六花形の銀製の皿で、宝庫伝来の盤の中ではもっとも大きく華麗な遺例。

中央に大きく表された鹿は花状の角をもつ特徴的な姿で、正倉院宝物では紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)にも用いられているが、中国・唐(とう)代の工芸品にしばしば登場するモチーフである。

裏面の銘文に中国固有の重量の単位が記されるなど、中国製である可能性がきわめて高い。
その大きさと豪華な装飾から、遣唐使が唐から公式に賜(たまわ)った品との見方もある。

赤漆文欟木御厨子(せきしつぶんかんぼくのおんずし)

聖武天皇と光明皇后の婚姻に際して相交わした品のように夫妻にとって殊に重要なものや、刀子(とうす)や帯、笏(しゃく)といった装身具、双六(すごろく)の駒や賽子(さいころ)、念珠、尺(ものさし)などの小物類、尺八など(北倉4~23)、身近に置かれた比較的小さな品々が納められていた大型の厨子(ずし)。

天武天皇から、持統、文武、元正、聖武、孝謙と歴代の天武系の天皇に相伝されてきた非常に重要なもので、『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に「古様(こよう)の作」と記されるように、7世紀後半に遡(さかのぼ)る様式を示すと考えられる。

鮮やかな朱色が目を惹く靴


衲御礼履(のうのごらいり)

爪先の反り上がった浅い靴。左右は同形。

白い厚革を芯材とし、表面には赤く染めた牛革を用い、内面には鹿革の白革を使用している。

爪先の扇形部分や側面との底と継ぎ目など革の断面が見える部分には白色を塗り、縫い目部分は金線をあしらって化粧を施している。

表面には真珠やガラス、水晶を嵌(は)めた銀製鍍金(ときん)の花形の飾りを各13箇取り付けて、豪華に装飾を加えている。

天平勝宝4年(752)4月9日に行われた大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)にて、聖武天皇(当時は太上(だじょう)天皇)が履いたものと推測され、同じ時に使用された冠の部材を含むと考えられる礼服御冠残欠(らいふくおんかんむりざんけつ)(出陳番号11)とともに、当時の天皇の礼装を伝える品として貴重である。

七條刺納樹皮色袈裟(しちじょうしのうじゅひしょくのけさ)

部分

光明皇后による聖武天皇遺愛の品の献納(けんのう)目録である『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の筆頭に掲げられた9領の袈裟(けさ)のうちの1領。

赤・青・黄・緑・茶などの平絹(へいけん)を不規則な形に裁ち、これらを刺縫(さしぬ)いの技法で継ぎ合わせて作られている。

これは糞掃衣(ふんぞうえ)とも称される、端裂(はぎれ)を集めて縫い合わせ仕立てた袈裟に擬(なぞら)えたものと考えられ、袈裟の本義を踏まえたものと理解される。

ただし、本品の場合は上質の裂(きれ)が用いられており、美しい樹皮風の配色も天皇の所用に相応(ふさわ)しい。

かつては鳥毛が貼り付けられた樹下美人図
教科書で目にした方も多いのでは?


鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ) 第1扇

『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』記載の屏風(びょうぶ)で、各扇とも樹下に豊かに髪を結い上げたふくよかな女性を一人配する。

第1扇から第3扇は立ち姿、第4扇から第6扇は岩に腰掛ける姿で表される。

楮紙(ちょし)を貼り継いだ画面に白下地を施して描かれており、顔や手、着衣の袖口などに彩色(さいしき)が残り、着衣や樹木などには日本産のヤマドリの羽毛が貼り付けられていたことが微細な残片からわかる。

盛唐の風俗を反映した豊満な「天平美人」として名高い本屏風が6扇揃って出陳されるのは、平成11年(1999)以来20年ぶりである。

礼服御冠残欠(らいふくおんかんむりざんげつ)(一部)

正倉院宝庫に納められていた聖武天皇、光明皇后、孝謙天皇の御冠(おんかんむり)や、諸臣の礼冠(らいかん)が残欠(ざんけつ)となって伝来したもの。

天皇の即位に際して、礼冠の手本とするため度々用いられたが、鎌倉時代の出蔵時に事故に遭い、損傷したと伝わる。

附属の木牌(もくはい)の記載を参照すると、聖武天皇、光明皇后の御冠は天平勝宝4年(752)の大仏開眼会(かいげんえ)で着用された可能性が高い。

国内外の様々な素材を用いた装飾を含んでおり、当時の国際色豊かな素材の使用が注目される。

紫檀金鈿柄香炉(したんきんでんのえごうろ)

炉側面

持ち手の柄(え)がついた香炉を柄香炉と呼ぶ。

香炉は金属製が多いが、本品は火種を入れる内炉などを除く主要部をシタン製とする珍しい作例。

柄の末端に獅子形(ししがた)のおもしをつける「獅子鎮柄香炉(ししちんえごうろ)」と呼ばれる形式である。炉やそれを支える台座、柄の表面には金象嵌(きんぞうがん)で花卉(かき)、蝶、飛鳥などを表し、伏彩色(ふせざいしき)を施した水晶を嵌(は)めるなど華麗な装飾が見られる。

その美しさは柄香炉の遺例の中でも随一である。天応元年(781)の光仁天皇(こうにんてんのう)崩御(ほうぎょ)に際して東大寺に施入(せにゅう)された可能性が指摘されている。

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