鑑賞・見学おでかけ奈良市
2019/05/08 01:00

Vol.22 四季の花咲く竹の美術館「大和文華館」

景勝に名建築、自然美とともに。
静かな時が流れる「美のための美術館」


蛙股池(かえるまたいけ・菅原池)を望む丘の上。学園前駅からのんびり歩いて10分とかからない。
門を入れば、すでに美への楽しいアプローチが始まっている。

館の周りは四季の花咲く自然苑で名高い「文華苑」が囲う。5月下旬からはたおやかな風情のササユリが咲き出し、次は池のほとりを彩るアジサイ。春夏秋冬、いつ訪れても見頃の花が迎えてくれる。

梅林もある

希少なササユリの群生。花の見頃はHPやツイッターをチェックして

名物の三春瀧桜

その時々の花を愛でつつ、なだらかな坂を上がれば美しい和の名建築、海鼠壁(なまこかべ)の美術館が現れる。

 

桃山時代の城郭をイメージさせる「なまこ壁」

1962年に優秀な建築作品に与えられるBCS賞を受賞。2005年には「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれた。名高い建築家、吉田五十八の代表作である。この建築を目当てに館を訪れる人も多いという。

竹の中庭がある
美のための美術館


そして館に一歩入れば、重厚なエントランスから渡り廊下の向こうに、光が降り注ぐ竹の庭があらわれる。

そう、ここは「竹の庭の美術館」である。

大和文華館をあらわす、いくつもの呼称の一つ。展示室のその中に、竹の中庭があり、来場者を美の世界へと迎え入れるのである。

「自然の緑が展示室の空気をも彩るように。自然の額縁の中で東洋の美術は一番美しく見える」。初代館長で世界的な美術史学者であった矢代幸雄の思いがここにそのまま込められている。
まさにその通り。文華苑も館も展示室も、すべてが自然美の中で、清澄な空気とともに美を楽しめるように設えられている。

展示されるのは東洋古美術の名品。特筆すべきは、ここが「美のための美術館」であるということ。
多くの美術館が実業家などの大コレクションをもとに創設されるのに対して、大和文華館は、美術館をつくるために美術品が集められた。つまり、偏らない、縛られない。ここのコレクションは美術史というものを意識し、テーマを追った展覧会のときも美術史をひもときながら展観できる内容となっている。

5月19日まで開催中の「茶の湯の美術 」では、国宝の「 雪中帰牧図」ほか同館のマスコットキャラクター的存在「色絵おしどり香合」も展示中。正面ガラスケースに展示され、愛らしいお尻までぐるりと360度鑑賞できるチャンス!

展示室奥の休憩室でちょっと一休み。バルコニー越しの景色もいい。眼下の蛙股池は日本書紀にも記され、日本最古のダムと伝わる池。その向こうには平城京跡や春日山という悠久の景勝が望める。

中国から来た女子学生も和の美を楽しんでいた。

展示を見終え野趣あふれる自然苑を歩く。
聞こえるのは鳥のさえずり、木々の葉擦れ。

ここは本当に静かな美術館である。
繁華街を離れた閑静な地にあり、この静けさもまた美術館の大きな魅力となっている。あなたは最後に静寂の美に身を置いたのはいつですか。

人気の北斎講座や無料コンサートも
文華の“華”は幾通りにも用意されている


見頃の花に合わせて、さらに彩りが添えられる日もある。
展覧会ごとに催される無料の「華コンサート」である。当日先着150名で毎回満員御礼の大人気。この日は花を楽しみ美術を楽しみ、さらに音楽まで楽しめる。これで入館料620円はかなりおトクでかなりぜいたく。

このほか参加無料の特別公演や講座などもあるのでお見逃しなく。
6月2日からは浅野秀剛館長による葛飾北斎の連続講座「北斎―神の領域に至らん」がスタート。世界的ブームの北斎の70年に渡る画業を4期に分けてレクチャーする。

花の盛りには無料招待デーが設けられることも。見頃の花だよりなどもツイッターで更新されるのでチェックしてみては。
大和文華館の“華”は幾通りにも用意され、訪れる人を楽しませてくれる。

大和文華館

  • 住所/奈良県奈良市学園南1-11-6
  • 電話/0742-45-0544
  • 営業時間/10:00~17:00(入館は16:00まで)
  • 定休日/毎週月曜日 *ただし祝日の場合は次の平日
  • 駐車場/40台(無料)
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