鑑賞・見学おでかけ奈良市
2019/01/02 01:00

Vol.18 糞虫愛あふれる奈良のユニークな新名所「ならまち 糞虫館」

「キレイ!」と歓声が上がる。「カッコイイ」「まるで宝石みたい」と続く。

それは確かに見る人に驚きをもたらす「発見」なのである。

なにしろ糞虫(フンチュウ)がこんなに美しい姿かたち、そして魅力たっぷりの生き様(!)の持ち主(虫)だとは、ここに来るまで知らなかった!そんな人がほとんどだろうから。

奈良、大仏、奈良公園、鹿といえば糞虫!
奈良観光のちょっとユニークな新名所


人々の驚きと賞賛の声を浴び、TVや新聞などマスコミにも取り上げられて、今や「奈良、大仏、奈良公園、鹿といえば糞虫!」と呼ばれることも。奈良観光のちょっとユニークな新名所として注目を浴びるのが、ここ、糞虫館である。

糞虫館。なんとインパクトのある名前だろう。糞虫とは、食糞性のコガネムシのこと。一部の糞虫は俗名フンコロガシだといえば、アァ、と思う人も多いのでは。

館がある奈良町近くの奈良公園は、実は糞虫の一大聖地。3大聖地として他に宮城の金華山と広島の宮島も挙げられるが、そちらで確認される糞虫は約15種。一方、奈良公園に生息する糞虫は50種にも上る。聖地中の聖地なのである。

想像してみよう。広大な奈良公園にいる鹿たちが毎日出す1トンもの糞は、いったい誰が掃除をしているのか。

人ではない。実は糞虫たちが“大フン闘”をしているのである。

敷地に入れば、そこからすでに日本画の美の世界に誘われる。
大渕池を泉に見立て、100本以上も植わった松や四季折々の花木の間から水面が見える。

同館は故・佐伯勇近畿日本鉄道(現 近鉄グループホールディングス(株))名誉会長の旧邸宅の敷地内に立ち、日本画鑑賞と合わせて趣のある庭園散策も楽しめる。
ちなみに館長は上村淳之その人で、展覧会ごとに館長による美術講演会もある。





奈良公園で鹿と暮らす瑠璃色の宝石「ルリセンチコガネ」

鹿がポロっと糞(エサ)を落とすとその匂いを嗅ぎつけて、いっぱいに触角を伸ばした糞虫がブーンと羽を広げて飛んでくる。そして、せっせと掃除(食事)してくれるのだ。
もしも人手を使えば多大な費用がかかるという。糞虫は、実にエコなありがたい生き物なのである。

館長の中村圭一さん

LEDのハンドライトを当ててみる。糞虫の輝く色は、光の反射でこそ生まれるもの。
彼らの美貌がくっきりと浮かび上がる。
瑠璃色の「オオセンチコガネ」は、奈良公園で多く見られるもの。「ルリセンチコガネ」とも呼ばれている。
南米原産の「ニジイロダイコクコガネ」は瑪瑙石のよう。指輪にしてはめてみたくなるジュエリー感!

ゴマのように小さな糞虫たちもルーペで覗き込むと生き生きとその美しさをあらわにする。ツノや触角も立派でカッコイイではないか。

「彼らの本当にすてきな姿を見てほしくて」と語るのは、館長の中村圭一さん。

中村さんと糞虫の出会いは中学2年の時。ある時、級友に糞虫の標本を見せられて、その美しさにすっかり夢中に。
糞虫を求めて奈良公園に通い詰め、中学3年で昆虫同好会を発足。
高校2年の時には糞虫の生態を観察した独自の研究で、日本学生科学賞の奈良県知事賞も受賞している。

中村さんが国内外で手に入れた約100種の糞虫をメインに珍種、希少種、美しい糞虫たちが魅力いっぱいに展示される。

「糞虫は子育てをする、ごくごく稀な珍しい虫なんです」


虫といえば卵を生んで、産みっぱなしでハイ、さよなら。

だが糞虫は違う。たとえばオオセンチコガネは子どものために巣穴を掘り、糞を引きづり込んでそこに卵を産み付ける。
それはまるで子ども部屋。
子どもたちは土の中で外敵から守られ、与えられた餌を食べ続けて成長する。

訪れた人は、これほどまでにこの小さな美しい虫を思う、その熱量も受け止めて糞虫の魅力とともに心動かされてしまう。

まだ親子の累代飼育に成功した人はおらず、その生態はミステリー。同じ種でも産地によって色が変わるのはなぜか。
「そもそも糞虫を知らない人が多いですから」。
それが開館への思いでもある。糞虫の一大聖地がここにある。こんなに魅力的な糞虫たちのことをもっと知ってもらいたい。

そしてその奥には地球への思いがつながる。
「地球は大丈夫だろうか。小学生のころからの思いです。糞虫を通して環境のことまで思いを広げてもらえたらうれしいですね」。

小学5年生の男子が記した昆虫日誌が展示されていた。アツイ昆虫愛に目を見張る出来ばえ。

2018年7月の開館からまだ5ヶ月ながら、人の輪、虫の輪が広がって、館は進化中である。
いろんな人が訪れた。糞虫を知らない人、虫に興味がない人も目を輝かせて楽しんだ。
もちろん現・昆虫少年やかつての昆虫少年も。彼らの標本、写真、観察日記が展示に加わることも。
館の2Fのセミナー室では、子どもたちの研修が行われ、環境を学ぶ学生の講義に使われることも。自然観察会も開かれる。

開館前は「誰が糞虫を見に来るものか」と周囲に心配されたが、「まさかここまで人気を呼ぶとは」。

中小企業診断士でもある中村館長。館がオープンするのは仕事が休みの土日となる。

今はちょっと先を見る。
「もっと長居してもらえるよう談話室を設けたり、サロンのようになれば」。
虫のこと、エコのこと、地球のこと。大事なことをゆっくり語り合いたい。
「グッズも出したいですね。糞虫せんべいとか」(笑)。

そこは人と自然と糞虫愛にあふれた場となることだろう

ならまち 糞虫館

  • 住所/奈良県奈良市南城戸町28-13
  • 電話/070-1798-6464
  • 営業時間/土・日の13:00~18:00 *新年は1月5日(土)から営業
  • 定休日/無
  • 駐車場/無し*近隣に有料駐車場あり
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