2023/09/29 07:00
ぱーぷる編集部
「共生」「奈良の森」や「いのち」を子どもたちが学ぶ『ジュニアコトクリエカレッジ(生物・自然)』開催レポート
大和ハウスグループ「 みらい価値共創センター コトクリエ(主催、所在地:奈良市)」にて、奈良県の小学校に通う5年生、6年生を対象にした「ジュニアコトクリエカレッジ(生物・自然)」が2023年6月25日(日)から9月10日(日)の期間、全3回のプログラムで開催されました。
ジュニアコトクリエカレッジは、子どもたちが「好き」と向き合い、未来を切り拓く5つの教養をテーマに、地域や地球の様々な課題を理解し、生き抜く力のヒントを新しい仲間と身につけてほしいという想いで企画されています。
本記事では、全3回に渡って行われた「ジュニアコトクリエカレッジ(生物・自然)」での取り組みを紹介します。
第1回「生き物の共生と街づくりについて学ぼう!」
第1回目の講師は、『株式会社空から蝶』蝶使いの道端慶太郎さんが務めました。
物心がついた時から生き物を追いかけていたという道端さん。自然環境調査の仕事に就き、夢が叶い、生き物の種類(鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類、植物など)をたくさん調査しきてきたそう。
調査や研究を重ねる中で、絶滅危惧種が多く存在することに気が付いた道端さんでしたが、大好きな生物が減っていくことを研究でわかったのに、何も対策ができていない自分に歯がゆさを感じてきたといいます。
そこで、会社を辞めて、生物の先生をしながら大好きな生物が増えるような活動に取り組むことを決意しました。
参加者は、道端さんが取り組んできた活動を熱心に聞いていました。
中でも、庭に2,000km旅するアサギマダラという蝶々を呼びたかったそうで、蝶を育てて空へ返す飼育キットの開発に成功!
でもキットを開発しただけでは、世界を変えられないと考えたため、実際に1,500人しか住んでおらず、コンビニもなく、雨ばかりで寒い岡山県西栗倉村に移り住んで、生物とともに生活したらしい!
村にはオオサンショウウオが存在していたそうで、参加者の子どもたちからは「すげー!」「カッコよい」という声があがりました。
うなぎの養殖活動、森の獣害に対応する活動を重ねてきたようです。
次に、道端さんが今の活動をするに至った絶滅危惧種(キキョウやフジバカマ等)が植えられている「万葉の庭」に出て散策しながら、道端さんの話に耳を傾けました。
ヤマモモの実を手に取って味見をして「酸っぱい!」という反応が見られたり、虫や蝶、蜂を観察て、身近な街の中でも、自然と共生ができていることを学びました。
最後に、今回の講座で感じたことをまとめて発表しました。
第2回「奈良の森から、暮らしとの繋がりを考える」
第2回目は会場のコトクリエを飛び出して、講師を務める『森庄銘木株式会社』森本達郎さんを訪ねて宇陀の森林へ行ってきました。
まずは「かえでの郷ひらら」に集合して、森本さんが現在の活動をしている背景や、お父さんの会社を継ぐことを決めた理由を聞きました。
仕事をする中で自然と共生しながら生きることに幸せを感じたり、四季の変化に思いを馳せることで、生活の豊かさを感じていることを学びました。
次に、森本さんが管理し、育てている森を訪問するグループ、遊歩道やご神木を訪問するグループに分かれて実際に現地を訪れました。
森を訪れたグループでは、周りに豊かな木々に囲まれながら、今の日本の森の中は、杉や檜の木が人工林として植えらていることや、木を切っても植えないために自然のバランスが壊れていることで土砂災害や獣害の被害につながっていることを学びました。
木は、土根を張り地盤を固めたり、水を吸収したりするので、極端になくなると土砂災害の危険にもつながってしまいます。
また、鹿や猪などの動物たちが、森での食物がなくなってきてきたために、植林した木の芽を食べたり、里山にきて作物を荒らすことで一般的に「獣害」と言われるようになり、自然の循環とバランスが崩れていることを教えてくれました。
人の手をかけながら、木や自然を守ることではじめて自然と人が共生することができると話してくれました。
もう一方のグループでは、遊歩道を歩き、ご神木を訪れました。
人の手が加えられた山の遊歩道を歩き、自然と人が共生するために手入れが必要であることを感じてもらいました。
四季の移り変わりが見られる気持ちの良い場所でしたが、教えてもらった通り、人が歩いている場所に鹿やイノシシの足跡が見られ、人の暮らしに近いところに動物が来ていることを感じました。
また、樹齢約600年の杉(ご神木)を訪れることで、木を切り、森を守る仕事が、森と共にあり、山に入らせてもらうことへの感謝、恵みを頂くことへの感謝を伝え、山仕事の安全祈願をしていることを学びました。
お昼ご飯は、今回のジュニアコトクリエカレッジ専用で用意してくれたジビエ料理を食べました。
ジビエを食べることで、獣害というネガティブなものをポジティブに捉えてほしい願いを伝え、根本的に、自然の循環のサイクルが乱れていること目を向けてもらいました。
森を育てるためにいのちをいただくことを、実際に食べてみることで参加者の子どもはより深い学びや体験に繋がっていたようです。
お昼ご飯を食べたあとは、午前に訪問した森で伐った木を実際に、丁寧に手間をかけて銘木にしていく現場を見るために、森庄銘木産業株式会社を訪問しました。
森本さんのお父さん、森本 定雄さんに工場を案内してもらい、土壁倉庫とショールーム見させてもらいました。
木の一生にかかわる森本定雄さんの想いを聞きかせてもらい、木は住宅や家具、紙、電気などに姿を変え、自分たちの暮らしに寄り添っていること、自分たちの暮らしの中には、たくさんの木があり、その自然の中の一部を使っていることに気づきました。
次に、製材所を訪れました。製材機を使って、とても大きな1本の木材をスライスしていく瞬間を見学しました。
大迫力の瞬間に参加者の子どもたちからは「おー!」と驚きの声が上がりました。
一緒に参加した保護者も「はじめて見ました」と親子ともに充実した時間を過ごしていました。
森の木が実際に人の暮らしに使われる木材に変化していく工程を見学したことで、森林と自分の暮らしとの関係性を体感できました。
最後にかえでの郷ひららに戻ってきて、今日1日学んだことや、この森林との共生が自分たちの20年後、30年後の未来にどう関わってくるのかをグループで共有しました。子どもだけでなく、参加した保護者同士でもディスカッションしました。
参加者の小学生からは「木は植える人と加工する人がいて、僕たちが使うまでに大変なことをしているんだなあと思った」「木の大切さを知れて、もっと木を大切にしようと思った」「ジビエは獣害だけどおいしかった、また食べたい」「土壁で乾かしていたら水たまりができないことがびっくりした」「切り株もあって、年輪を数えるととても長生きしている木があったので自然派すごいなと思いました」などの意見があがりました。
参加した保護者からは「近くに森林があるけど、世界遺産などに登録されていることで手入れがしたくてもできない。住民の暮らしに柔軟に対応してもらう法整備で自然も人間もお互いに共生しやくすくなると思った」「実際に現地に足を運んで五感で学べたことで子どもよりも自分の方が多くの学びがあったと思う」などの感想が寄せられました。
森と暮らしの繋がりや木の可能性を存分に感じた1日になりました。
第3回「いのちをいただくということを学ぼう」
第3回目の講師は、『手づくりハム・ソーセージ工房 奈良五條ばあく』の泉澤ちゑ子さんが務めてくれました。
実際にいのちをいただくことで「自分の周りにあるいのち」について自分なりの考えを見つけてもらうことが今日のゴールだと泉澤さんから話がありました。
そのあと、自分の身近にいる動物はどんな動物があるのかを考えました。
子どもからは、犬や猫などのペットや牛や羊などの家畜が挙げられましたが、中でも動物のうち「家畜」を飼育、繁殖させ、肉や卵、乳製品や皮革などを生産することで人の生活に役立つ産業を「畜産(業)」ということを学びました。
畜産業の中でも、酪農、肉牛、養豚、養鶏、養蜂、めん羊などたくさんの種類が存在していくことを知りました。
次に、泉澤さんから「養豚クイズ」と題して、「子豚は生まれたときにきばや尻尾を切るのがなぜか」「人間と同じように動物が病気にかかったときにはどうするか」「豚は1回の出産で何匹の子豚が生まれるか」について質問してくれました。
子どもからは「人に危害を加えないためにきばを切る」「病気にかかったら病院はないから殺してしまう」「1匹しか生まれない」「5匹くらい生まれる」など様々な回答がありました。
次に、いつも食べている豚が私たちの食卓に届くまでにどのような流れで届いているのかを学びました。
豚が誕生してから出荷されるまでのこと、競りにかけられ食肉業者の手に渡ること、泉澤農園では「自家割」と言われる屠殺された豚を持ち帰り、購入した豚を加工することで消費者に届けていることを学びました。
実際に加工された肉として、今回は羊の腸やソーセージのもととなる肉の感触を感じ、ノートに書き留めて、グループで共有しました。
循環型農業についても学びました。
食べるまでには、農作物を育てる人、家畜を育てる人など様々な人が関わっていて自分の食卓に届いていることを実感しました。
最後に、自分たちで作ったソーセージを食べてみて「いのちをいただくこと」でどう感じたのか、「自分の周りのいのちと自分のいのちの繋がりをどう考えたのか」を考え、グループで考えを共有し、他のグループにも発表形式で伝えました。
参加者の子どもたちからは「ソーセージの皮は羊の腸だと知って驚いた」「豚のおいしさを知れた」「羊の腸は30mもあってヌルヌルしていたので持ったら滑る」「生き物のいのちを大切にいただこうと思った」などの感想が寄せられた。
いのちをいただくことはとても尊いことであり、おいしいことだと体験を通じて学ぶことができました。
修了証書授与式
全3回の講座を休むことなく受講した参加者には、「タウン情報ぱーぷる 」の椿野唯仁編集長より修了証書が授与されました。
椿野編集長から参加者たちにメッセージが送られ、参加者へは参加特典としてジュニアコトクリエカレッジオリジナルバッチがプレゼントされました。
参加者は、喜びの表情を隠しきれない様子でした。
ジュニアコトクリエカレッジ後期は、「歴史」と「アート」の各3回を予定しており、12月から開始される予定。
学校やおうちとは異なる「サードプレイス」のような環境で、子どもたちの「好き」で未来を切り拓くジュニアコトクリエカレッジから目が離せません!