2023/04/24 19:00
ぱーぷる編集部
vol.16 著書『行列のできる子ども健康相談室』について【連載】気になるこどもの病気 「こころ」と「からだ」 【たけつな小児科クリニック|生駒市】
今回は、奈良県生駒市の『たけつな小児科クリニック』院長・竹綱先生に著書『行列のできる子ども健康相談室 0~10歳児の病気とケガのおうちケア』について詳しくお話を伺った。
「子どものけがや病気にどのように対処したらいいのか?」という不安や悩みは、多くの親が抱えているもの。
休日や夜に子どもの具合が悪くなったら、様子を見るべき? それとも救急に連れて行くべき? 家ではどんなケアをしてあげられる? だれか教えて…。
そんな悩めるご家族の強い味方になってくれる本が『行列のできる子ども健康相談室 0~10歳児の病気とケガのおうちケア』だ。
竹綱先生には「どのような想いで執筆されたのか」、「この本をどのように活用したらよいのか」などをお話していただいた。
Q1. この本を執筆することにしたのはなぜですか?
結論から言うと、全国にたけつな小児科クリニックがないからです。
少し、「ぽかん」でしょ(笑)。
ここだけ切り取られると、炎上すること間違いなしです。
では、この本を執筆するに至った経緯と、先ほどの結論に至った想いをお話しさせていただきます。
突然ですが、今この記事を読んでいただいている方に質問です。
今の日本で子どもが病気になった時、日本全国どこでも平等に小児医療を受けることができると思いますか?
答えは「No」です。
もう少し、私自身の経験を踏まえて具体的に、わかりやすくお話ししましょう。
私の祖父は大阪市内で私と同じ小児科の開業医をしていました。そして私は子どもの頃、今開業している奈良県の生駒市で生活していました。
今はちょっとのことでは風邪などひかない私でも、子どもの時はそれなりに熱が出たり、風邪にかかるわけです。そして私が病気になると、その都度父が車で大阪の祖父のクリニックに連れて行ってくれて、祖父が私を診察してくれました。
つまり、私には24時間、365日祖父という主治医がいたわけです。
時は流れ、私が無事医師国家試験に合格し、母校の愛知医科大学付属病院で勤務が始まりました。
愛知県には4つの大学病院があり、その中でも愛知医科大学病院はどちらかというと市民病院に近い感じで、風邪の子どもから白血病やICUで治療しないといけない重度の病気の子どもまでを診る病院でした。
その病院の性質もあり、病院には小児科の当直医が毎日いる、つまり、またまた24時間、365日、子どもが病気になった時に子どもの専門家である小児科医が直接病気の子どもを診る環境があったのです。
私自身がこの24時間、365日子どもを小児科医が診ることができるという環境を30年近く経験してきたため、日本では昼夜問わず小児科医が子どもを診る環境が普通だと思っていました。
そして、大学で10年程勤務した時に、私の都合で関西に戻らないといけなくなり、次の就職先を探している中、前職である生駒市の二次医療機関の小児科の立ち上げのお声がけをいただきました。
元々生まれ育った地であり、少しでも小児医療の役に立てればと思い、奈良に帰ってきたのですが、実際に勤務をしだすと今まで私の経験してきた24時間365日、小児科医が子どもの診察をすることが難しいという現実に直面しました。
でも、生駒市の隣の大阪府では夜間でもどこかに小児科医がいて、子どもを診ることができる環境があります。
つまり、先ほど話をした小児医療の地域格差があるということです。
その現実を少しでも打開しようと試行錯誤を繰り返しましたが、大きな組織のなかで24時間、365日子どもを診る環境を作ることが難しいと実感し、2017年にたけつな小児科クリニックを開院しました。
私は少なくともクリニックがある生駒市をはじめ奈良県において「24時間、365日子どもを小児科医が診れる環境」を作っていきたいと思っています。
その取り組みの一つとして、たけつな小児科クリニックは毎日午前、午後の診察時間を設け、平日の休診はありません。
そして、可能な限り私が診ることができると判断した場合には診察時間外でも受診の受け入れを行っています。
さらに、クリニックが休診の時には月1回ではありますが、生駒市の休日夜間診療所で子どもたちの診療をしています。
それでも、24時間、365日子どもを診れる環境ができているわけではありません。
そして奈良県だけでなく、東京、大阪などの大都市圏を除く地域では奈良県同様、いやもっと小児医療体制が整っていない地域もあると思います。
その中で、たけつな小児科クリニックが開いていないとき、たけつな先生が休日診療所にいないとき、他の地域の子どもの体調が悪くなったときに、小児科医が側にいてアドバイスできる環境を少しでも作り、子どもと家族が安心して過ごしてほしいとの想いからこの本を執筆しました。
Q2. 毎日多忙な中での執筆だったと思いますが、なぜそこまでこの仕事に打ち込めるのですか?
私の夢は「子どもたちの夢になること」です。これも「は?」ですよね(笑)。
先ほど話した小児医療の地域格差をなくすことは私一人では当然できません。すべての小児科医は子どもの健康を守っていきたいと思っていると思いますが、私一人の力では私が生きているうちに実現することは限りなく難しいことだと思います。
でも、10年後、30年後、50年後、100年後も子どもは生まれてきます。
その中で私が100年後に残せるとしたら、次の世代に私の「24時間365日、日本全国どこにいても病気の子どもを小児科医が診れる環境を作る」という想いのバトンを具体的に次の世代に渡すことです。
私は幼稚園、小学校の文集でも将来の夢を「小児科医になること」と書いていて、おそらく、祖父の背中を見ていたため祖父からバトンを受け継ぎ、小児科医になったのだと思います。
私が祖父の背中を見て小児科医になったように、「たけつな先生みたいな小児科医になりたい」と想ってもらう、つまり私が「子どもたちの夢になること」ができれば将来生まれてくる子どもたちが安心して暮らせる社会ができて、日本が豊かになると信じています。
なので、仕事に打ち込める理由は「私自身の夢を実現するため」です。
Q3. この本を読者にどう使ってほしいですか?
この本の使い方は2つあります。
1つ目は子どもが病気になった時にどうしたらいいかを調べるツールとしてです。
子どもの多くは夕方から夜にかけて、また、小児科の開いていない休日に体調不良になることが多々あります。
子どもが病気になった時、本当はどんな時でも小児科の先生に診てもらいたいという気持ちです。
しかし、先ほどお話ししたように現実はそうはいきません。
子どもが病気になるとご家族は心配になり、#8000に電話したり不安になることと思います。
この本は私が日ごろ診察の中でお話ししている受診時の目安や、病気の時の対処法をそのまま書いています。
なので、子どもが病気になった時、一家に一台ドラえもんではないですが、この本を開けばいつでもたけつな先生がいるのです。
子どもが病気になった時、かかりつけの小児科が開くまで、この本を小児科医の代わりとして、そしてご家族の安心材料として使っていただければ幸いです。
ただし、注意点が2つ。
1点目はご家族が咳や鼻水など気になる症状があれば軽症でも早めに受診すること、2点目はこの本を開いた時には翌日にはかかりつけの先生に診てもらっておくということです。
使い方の2つ目は、病気になった時を想定して子どもの病気の知識を増やしておくツールとしてです。
この本には「けいれん」したときに救急車を呼ぶのか、休日診療所を受診すべきなのか、翌日かかりつけが開くまで待ってもいいのかなどの緊急度をフローチャートで紹介しています。しかし、実際子どもがけいれんしているときに悠長に本など開いていられません。
子どもが病気にかかった時にご家族が慌てず対応できるように、日ごろからこの本を読んで子どもの病気について学んでいただければと思います。
現在もyoutubeでこの本の解説動画をupしていますが、今後この本を教科書代わりに私が講義形式で皆様に子どもの病気の解説もしていければと計画しています。
Q5.『行列のできる子ども健康相談室』というタイトルに込めた想いは?
この本は「令和版、子どもの家庭の医学」と言っても過言でないくらい情報量が満載です。
ただし、いくら内容が充実していても本を手に取ってもらわなければまったく意味がありません。
したがって、出版元のKADOKAWAの方やこの本に携わっていただいている方で知恵を絞り出し、皆様のなじみがあり、堅苦しくないタイトルとして「行列のできる子ども健康相談室」とすることで、皆様に読んでもらえるのではないかと考えました。
さらに、たけつな小児科クリニックに受診していただいている患者様はご経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、ありがたいことにインフルエンザの流行期など診察開始前から並んで待っていただいていることもあり、このタイトルにさせていただきました。
できるだけ多くの方にこの本を手に取っていただき、今増えてきている発達なども「行列のできる子ども発達相談室」などのシリーズ化ができればと思っておりますので、この本が役に立ったなと思った方は是非KADOKAWA様に次のシリーズを出してほしいとご要望いただければ幸いです。
竹綱先生著書「行列のできる子ども健康相談室 0~10歳児の病気とケガのおうちケア」
院長・竹綱先生
院長である竹綱先生は常に全力で子どもたちと向き合い、「子どもたちを守るために小児科医として自分にできることは何か」を日々追求している。
午前診から午後診の間も休むことなく、竹綱先生が運営している向かいの『病児保育室 バンビ』の診察や、子ども発達サポート『のびいく』に顔を出す。
月に1度発行されるA4サイズのおたよりには、
片面には季節に応じた子どもの病気やトラブル、もう片面には先生のプライベートな話が。
くすっと笑えるありのままの文章に、飾らない竹綱先生の人柄が表れている。
そんな先生の一生懸命な姿に、子どもたち、親御さんから厚い信頼が寄せられている。
たけつな小児科クリニック
- 住所/奈良県 生駒市真弓 1丁目2-8
- 電話/0743-71-0929
- 営業時間/ <午前診>9:00〜12:00
<専門外来>14:00〜16:00
<午後診>17:00〜19:30
備考/※木曜の午後診は16:30〜18:30
- 定休日/日 その他休業日/土曜日の午後診察
- 駐車場/駐車場完備(なんぶ眼科、薬局と兼用)