2023/01/10 12:00
ぱーぷるmirai編集部
【子育てコラム】子育てとジェンダー「ママ起業のススメ?」
子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。
子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。
皆さんは「ママ起業」というワードを目や耳にしたことがありますか?
「ママ起業」や「ママ起業家」でWEB検索をかけてみると、“ママ起業”なんて意識が甘い!とか、もっと本気でやるべき、とか、キラキラSNSやってるだけでしょ、みたいな辛辣な記事も出てきたりして(しかもまあまあ大手のサイトだったり…)、なんというか、人の働き方にケチつける方が品がないよなと思いながらいつものチベットスナギツネ顔で拝読したのですが、今回私が言いたいことはそういう視点のものではありません。
ママ起業家をひとくくりにしてどんな働き方でなければならないなんて述べるのは野暮なことで、人の数だけそれぞれの事情や働き方があって、他者が口出しすることではありません。ただ、社会が都合よく誰かに何かを押し付けるような構図になっていないか、ということは常々気になっています。
日本における女性の就業率は、出産・育児期に落ち込むM字型曲線を描きます。近年では育児しながらでも就業する女性が増えたので、落ち込みの度合いがやや緩やかになり台形に近くなっていると言われますが、非正規雇用の割合が高いなど、女性の労働問題が解決しているとは言えません。
結婚や出産・育児で女性が自分のキャリアを諦めないというのはとても重要なことですし、女性あるいは母親であっても起業したい人が起業しやすいよう支援体制が整うのはとてもいいことだと思います。そういった意味での「ママ起業」の推奨は大賛成です。
しかし時々、ちょっと違和感のある文脈で推奨されている場面に出くわします。
ママ起業なら時間の融通が利くとか、子育てしながら自宅でもできるとか、家事育児とのバランスがとりやすいとか、なんだかんだで家事育児とセットになっているものです。
もちろんそういったメリットもありますし、それ自体を否定するつもりはありません。ただ、これらが男性起業家・パパ起業家に対してメリットとして語られている場面を私は見たことがありません。
そもそも起業にそういったメリットがあるのであれば、現状圧倒的に多いはずの男性起業家がもっと家事育児を担えていてもいいはずです。しかしそうではない。
結局のところ、やはり家事育児は女性の役割で、その役割を十分果たしながらでもできる「ちょこっと起業」という意味で「ママ起業」を謳いそれを推奨しているのであれば、これには賛同しかねます。子どもが保育園に入れなくても仕事できますよ!じゃねぇんだわいつになったら全員が望んだタイミングで保育園に入れるようになりますかコラ。(急に荒ぶる)
社会課題をママの働き方の工夫でなんとかしようとするのではなく、パパもママも子育てしながら自分たちの望むスタイルで働けるように社会が設計されるべきではないでしょうか。
正直なところ、私自身も母親であり起業家ですので、今回の内容は「おまいう」感満載になってしまいます。今の働き方を選んだ背景にはやはり家事育児とのバランスというものがありましたから、同じように感じ、同じような選択をするママ起業家さん達を否定するつもりは一切はありません。むしろ、多くの女性にとってそれを選ぶことが「一時的にお得」になってしまうような社会設計の方を変えるべきだと思っています。
子どもができれば、どうしたって子育てに注力しなければいけない期間というものが出てくると思います。子育ては計画通りにはいかないことの連続ですから、その期間を、フレキシブルに働けるようにするということには大賛成です。ただしそれは、男女ともにそうあるべきで、女性ばかりがそういった選択をさせられる(そういった選択がお得になるよう設計されている)現状を肯定してしまえば、次世代の女性の働き方も自由なものにはならないでしょう。
今を生きる私たちの「最適だ」と考える働き方が次世代の女性の働き方に与える影響を、少し考えてみなければなりません。これは、たっぷりの自戒を込めて。
最後に。本当の意味で自分の望むキャリアを実現する女性起業家・ママ起業家が増えることと同時に、柔軟な働き方で家事育児に大活躍する男性起業家・パパ起業家が増えることを心から願っております!
《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ
高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。
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