2022/10/03 10:00
ぱーぷるmirai編集部
【子育てコラム】子育てとジェンダー「専業主婦という仕事」
子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。
子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。
いきなりですが、皆さんのご職業はなんですか?
会社員、公務員、経営者、主婦・・・など、アンケートのときはいくつか選択肢があったりしますよね。その中で、主婦についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「主婦だって立派な仕事だよね!」というような言葉はよく耳にしますが、じゃあ主婦を「働いている人」とみなすかと言われれば、多くの人は「働いてはいない」というイメージを抱きませんか?
主婦がおこなう家事労働には金銭的見返りが発生しません。いわゆる無報酬労働(アンペイドワーク)です。だからなんとなく、本人も「働いてはいないし・・・」と思いがちですし、周囲も「働いていない人」と判断しがちです。
では、専業主婦の仕事を年収換算してみるとどうなるでしょうか。実は、470万円ほどになるのではないかと言われています(※諸説あります)。算出方法はいくつかあり、それによって金額も変わってきますが、例えばこの額は「主婦がおこなっている家事労働を外部委託した場合どれくらい支払わなければならないか」という観点から算出しています。つまりこの労働を妻がしてくれていることで、その分の支出を抑えることができているということです。
そうなるとですよ。例えば年収800万円の夫が家事育児を妻に任せた状態で仕事に専念できているのだとしたら、800万円というのは夫1人で稼いだ額ではなく、そこから470万円の支出を抑えた妻の労働によりキープされた額ということになります。一緒に800万円を稼いでいるのです。
これをお互いに認識できていればいいのですが、どこか夫側は「俺が働いて食わせている」と思ってしまいがちですし、妻も「私は養ってもらっている身だから」となってしまいがちです。事実、数年前のあるテレビ局のアンケート調査で、主婦の労働に値段をつけるとしたら?という質問に多くの男性が「0円」と答えたことに震えたのを覚えています。
ただこの主婦の年収換算、「主婦も立派な仕事だって分かったよ!年収470万円相当なんだね、いつもありがとう!」とキラキラした話で終わらせるために提示しているわけではありません。これだけの価値があろうとも結局は対価が支払われない、そういった労働がなぜ日本では圧倒的に女性に偏っているのか、考えなければいけないと思うのです。
「女性活躍推進」という言葉や「女性の社会進出」という言葉にも“働く=報酬労働”といった価値観が顕著に表れています。結局のところ、その多くを男性が担う報酬労働こそが“活躍”であり、その報酬労働の現場こそが“社会”であるという考えが根底にあるのではないでしょうか。無報酬労働も正式な労働であると解釈していれば、女性はむしろこれまでも活躍しっぱなしであることが分かりますし、家事育児なんて思いきり社会と地続きなのに今さら進出とか言われても大困惑です。
逆説的に聞こえるかもしれませんが、女性を報酬労働の場に引っ張り出そうと思うのであればまずは、報酬労働の方が無報酬労働より価値が高いのだという社会の価値観を変えてほしいものです。そうしない限り、家事育児のために仕事を休むことへの後ろめたさはなくならず、報酬労働に携わっている男性の家事育児参加も叶いにくいのではないでしょうか。これはつまり、女性が無報酬労働の場から抜け出しにくくなるということです。
よく目にする「仕事の方が大変か、家事育児の方が大変か」みたいな議論は、個人の置かれた状況によっても違うでしょうからやや不毛だなと思ったりするのですが、そうではなく報酬労働が男性に偏り、無報酬労働が女性に偏っていることをどう考え、どう変えていくのかの議論がもう少し深まっていけばいいなと思います。
《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ
高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。
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