2022/09/06 05:00
ぱーぷるmirai編集部
【子育てコラム】子育てとジェンダー「お母さんは“口を出してもいい存在”?」
子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。
子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。
突然ですが「乳腺炎」ってご存じですか?このコラムを読んでくださっている方の中には、経験されたことのあるお母さんも少なくないかもしれません。
読んで字の如く、乳腺に炎症が起こり、発熱したり乳房に痛みを伴ったりする病気で、授乳期の女性によく見られるようです。私自身も、2人の子どもの授乳期にそれぞれ1回ずつ罹っています。
そのときの私はというと、高熱でふらつきながら、おっぱいの痛みをこらえながら、頭の中では「最近なんか脂っこいもの食べたっけな?」「生クリームも焼肉も我慢してるのにな・・・」なんてことをグルグル考えていました。どこかで「脂っこいものを食べると乳腺が詰まる」とか「食事に気をつけないとおっぱいがドロドロになって不味くなる」などと言われたことがあったからです。
しかし結論から言うと、「〇〇を食べると乳腺炎になりやすい」には科学的根拠がなく、むしろ赤ちゃんが上手におっぱいを飲めていないことや、授乳時にできた傷から細菌が入ってしまうこと、ストレスや疲労・寝不足、サイズの合わない下着での乳房の圧迫などが原因とのことです。
な、なんだと…。食べたいものを我慢してストレスをためる方がリスクを上げていたのではないか!あのときのケーキを返せ!!…などと根に持っているわけではないわけでもないのですが。それより気になるのは、何故このような科学的根拠もない言説が、お母さんたちに向けては平気で(そしてまことしやかに)浴びせかけられてしまうのかということです。
妊娠中に髪を染めるなとか、ミルクより母乳の方がいいとか、離乳食は手作りじゃなきゃとか、ポテトサラダくらい作れとか(やかましわ)、とにかく“お母さん”って他人からあれこれ口を出されやすい。バスや電車ではベビーカーを畳むべきとか、使うならせめて申し訳なさそうな態度を見せるべきとか。近年では子ども用ハーネスの使用についてまで賛否が出たりしていますね。
自分が良いと思っている方法と違う方法で子育てする母親を批判することをマミーシェイミングと言いますが、まさにこれではないでしょうか。
まぁ私くらいになると心にチベットスナギツネを3匹ほど飼っているので、何を言われても「何言ってんだおめぇ」くらいでスルーできるのですが、子育て始まってすぐのお母さんだと「そういうものなのかな」「気をつけなきゃいけないな」などと必要以上に気にしてしまうのではないでしょうか。
(いいですか皆さん、心に、心にチベットスナギツネを飼うのです・・・)
ちなみに、父親が批判されるダディシェイミングもあるにはありますが、まだまだ「子育て=母親」と結び付けられてしまう社会では圧倒的に母親の方が批判の対象になりやすく、また、同じことをしていても父親なら批判されず母親なら批判されるという場合も少なくありません。
相手が“お母さん”であれば、法的根拠も科学的根拠ないような批判やアドバイスをしても構わないと思っているとしたら、苦労してなんぼ・楽をするなんてけしからんという押しつけをしても構わないと思っているとしたら、その根底にあるものは一体なんなのでしょうか。
もちろん良かれと思ってアドバイスしている人もいるでしょうが、自分が信じ込んできたものを押しつけたいだけの自己満足なアドバイスになってないか?と、一旦立ち止まって考える必要があるかもしれません。
あれこれ謎のアドバイスで口を出すよりも、当事者たちが望むかたちで子育てできるよう手を貸せる人でありたい。先日また1つ歳を取り、最近ちょっと余計なこと口走っちゃう場面増えたなぁと自らの老いを感じる岩城が、たっぷりの自戒を込めてお送りしました。
《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ
高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。
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