2022/07/02 05:00
ぱーぷるmirai編集部
【子育てコラム】子育てとジェンダー「加害者にしない子育て」
子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。
子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。
さてさて。びっくりするくらい急に暑くなりましたね。(そしてこのタイミングで我が家のエアコンが壊れましたことを此処にご報告いたします合掌)
夏はどうしても薄着になるので、私の娘もタンクトップや短いスカートを着用して遊びに出かけるのですが、親としてはついつい「あまり露出の多い服を着ないで~」と思ってしまいます。日中、近所で、お友達と遊ぶだけなのでそこまで口を出しませんが、例えばこれが電車に乗って遠出するのだとしたら、夜遅くに帰ってくるのだとしたら、口を出さずにはいられないかもしれません。
その背景には、性犯罪から子どもを守りたいという気持ちがあります。治安が良く安全だと言われる日本ですが、女子大学生の5人に1人が痴漢の被害経験があるということをご存じでしょうか?(ちなみに男子大学生でも40人に1人くらいは被害経験があるということで、女子と比較して少ないとはいえ無視できるものではありません)しかも「CHIKAN」という言葉は今や国際語になってしまっており、日本への旅行者に向けて注意喚起がなされるほどです。どこが治安のいい国なんだよ!と怒りがこみ上げると同時に恥ずかしすぎて頭に血がのぼります。(ただでさえ暑い毎日なのに勘弁してほしいしエアコンは早く直ってほしい)
公共の場で目にする性犯罪防止ポスターなどには「夜道に気を付けよう」「服装に気を付けよう」「隙を作らないで」といった自衛を促す表現が多く使われ、つい私たちも、我が子にしっかり自衛させなきゃという気持ちになってしまうのですが、果たしてそれでいいのだろうか?と考えるようになりました。
自衛をやめよう、と言っているのではありません。ただ、どんな服装であっても、どんな場所にいても、加害されて仕方がない理由になど絶対にならないはずで、なぜ性犯罪の防止が「被害者側の自衛」に矮小化されてしまいがちなのか、納得がいかないのです。犯罪は、被害者の問題ではなく、加害者の問題です。被害者に対して「自衛は十分だったのか?」という言葉が出てくる社会はおかしいし、そういったヴィクティム・ブレーミングは更に被害者を追い詰め、被害者が声を上げることを阻害します。
性犯罪のニュースなどを見ると私も「こういうことがあるから短いスカートなんか履くもんじゃないよ」「夜遅くに1人で歩くもんじゃないよ」と、心配のあまり言いたくなってしまいますが、こういった言葉も気を付けなければ子どもに刷り込みをしてしまうなと感じています。それは、被害にあったとき「自衛しなかった自分も悪かったのかな」と声を上げにくくしてしまうと共に、そういう被害者に対して「何かしらの落ち度があったのでは」と考えるようになってしまう可能性があるということです。
とは言え、現状として自衛をしなくても大丈夫な社会とは言い難いので、引き続きできる範囲での自衛を促してはいきますが、同時に「悪いのは加害者!被害者は悪くない!」ということを明確に言葉にして伝えていきたいと思います。
被害者をなくす上で最も大切なことは、加害者を生まないことです。誰だって、自分の子どもが加害者になるかもなんて、考えたくもありませんよね。しかし現実に加害者が存在するから被害者が存在するのです。また加害と言っても、直接的に一次加害することだけを指しているのではありません。加害を加害と気付かず、あるいは気付いていながらも傍観したり、声を上げた被害者を信用しなかったり、その口をふさいでしまうことも含めて加害です。
性犯罪から子どもを守るということは、被害者にならないよう守るのはもちろん、加害者にならないよう守ることでもあると思います。子育てする上で、このあたりのことをしっかり肝に銘じておかなければなと思ったりする、暑さ厳しい今日この頃でした。(皆さまもご自愛ください)
《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ
高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。
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