2022/04/27 07:01
ぱーぷる編集部(喜畑恵太)
絵本作家を目指した些細なきっかけとは?「100人のサンタクロース」「 カメレオンのかきごおりや」などの作者・谷口智則さんインタビュー
2022年4月27日(水)~5月3日(火・祝)まで近鉄百貨店奈良店開業50周年記念として、「谷口智則展~絵本の世界~」が開催される。5月1日には作品展の場にご自身も登場する。今回は子供から大人までトリコにする絵本作家の谷口智則先生に「作品展の見どころ」「絵本作家を目指した経緯」「奈良県のかき氷で有名なほうせき箱とコラボしたきっかけ」などのお話を伺った(場所:大阪府四條畷市『Gallery&cafe Zoologique』)。
ー谷口先生は大学で日本画を専攻されていますよね。今の谷口さんの作品とは少し違うのかなと思ったのですが。
絵本作家になりたくて、まずは金沢美術工芸大学で日本画を専攻しました。世界でも通用する絵本作家になりたかったので、まずは日本の絵のベースを勉強しました。
ー大学時代から海外を拠点にしようと考えていましたか?
はい、若い時はフランスで絵本を出版していました。その時は日本では1冊しか本は出ていなかったですね。日本に拠点を置いたのは今で7~8年くらいですね。
ー日本と海外での違いってありますか?
どこの国でも子供たちの反応がよかったのはうれしかったですね。
ただ、海外では日本と違い作家と読者の距離が近いです。私がよくパリの見本市に行っていたのですが、子どもの頃に読んでいた絵本作家がサイン会とかしているんですよね。日本ではなかなかない環境だなと思います。
そういった場所を作りたかったので、私も大阪府四條畷市に『Gallery&cafe Zoologique』を作りましたね。
Gallery&cafe Zoologique店内
gallery&cafe Zoologique(ホームページ)
ーこの『Gallery&cafe Zoologique』に常時谷口先生はいらっしゃるということですか?
土日月に基本はオープンしているのですが、イベントが入っていない時はだいたいいますね。
ー谷口先生と会えるって夢のようですね。奈良の有名なかき氷専門店「kakigori ほうせき箱」とコラボしたきっかけは?
ほうせき箱の店主・岡田桂子さんが高校の先輩なんです。お店を始める前に私のお店にいらっしゃり、私が相談を受けまして。3年前ですが、『Gallery&cafe Zoologique』の7周年イベントの際には、ここでもかき氷を出してくださいましたよ。
ー高校の時から岡田さんと知り合いだったのですか?
いえいえ、学校にいる時は岡田さんはもう卒業されていました。でも私の高校はかぶっていない年代の人でも後輩を大事にしてくれる傾向があるんです。私のお店には他の先輩方もきてくださいますよ。
作品の原点は『鳥獣戯画』
ー絵本を描くときに大切にされていることはありますか?
子供が読んでも大人が読んでも楽しめるような作品作りは心がけています。大人でも自分に置き換えることができるようなキャラクターを登場させるとか。あとは絵本なので、皆さんにいろいろ感じてもらえるように描いていますね。自分が意図していない伝わり方をしても、それが絵本の特徴だと思うので。
ー自身の作品で好きな本はありますか?
デビュー作『サルくんとお月さま』は思い出深いです。大学4年の時の作品で、言葉のない絵本なのですが、世界でも受け入れられたのでよかったと思いましたね。
ー絵本は全世界共通なんですね
そうですね。普遍的なテーマなどこの世界でも共通するんでしょうね。その人によって感じることが違うのは絵本のよさなので、そういう意味では共通なんでしょうね。
ー谷口さんの絵本には人間以外のキャラクターが出てきますがその理由を教えてください
擬人化して書くようにしているんですよね。読者自身が置き換えやすいようにするために。
例えばゾウだと大きくて力持ちだとか。そういう特徴を人間に置き換えられるようなストーリーにしていますね。
こういったものを描くきっかけになったのが大学時代に勉強した『鳥獣戯画』です。あれを模写しているうちに、自分が作りたいのはこういったものだと気づいたんです。模写って何週間もその作品に向き合うんです。鳥獣戯画には物語が描かれていないですし色もないのですが、模写しているうちに浮かんでくる感覚がありました。こういうのを絵本にしたいと思い、人間以外のキャラクターが出てくる絵本を描くようにしています。
ーご自身の作品以外で好きな絵本は何ですか?
モーリス・センダック作の『かいじゅうたちのいるところ』やチャールズ・キーピングなどの作品ですね。大人になってからいいなーと思って、絵本作家を目指しましたね。
昔の日本の絵本があまり好きでないんですよね。子ども向けのものばかりなので。海外の作家さんのは絵がすごくきれいなんですよね。あとストーリーも深いものがあり、大人でも楽しめるものが多いですよね。あの当時は子どもでも大人でも楽しめる絵本が少なかったので、自分で作ろうと思いましたね。
カフェの2階『Zoologique hanare』では先生が好きな絵本の数々が置かれています
ー子供のころから絵本を読まれていたのですか?
いえ、子供の頃はほとんど読んでいなかったです。子どもが絵本を読むって親の影響が大きいですよね。日本では親が読み聞かせるためのものなので。
小学3年生の時に読書の時間があり、それをきっかけに図書館に行きだしてから、本の魅力にはまっていきましたね。
4月27日から『谷口智則展~絵本の世界~』が近鉄百貨店奈良店で開催
ー4月27日(水)~5月3日まで行われる『谷口智則展~絵本の世界~』の見どころを教えてください
今までほとんど描いたことがなかった鹿の絵がまず一つですかね。奈良県ということでチャレンジしました。
二つ目が近鉄百貨店で毎年クリスマスの時期に袋を描かせてもらっているんですが、その原画がありますね。
あまり奈良県では展覧会をしたことがないので、ぜひ遊びにきていただければと思いますね。
ー谷口先生は大阪府四條畷市出身ですが、子供の頃に奈良県に遊びに行くことはなかったのですか?
学校の遠足とかだけですかね。家に車がなかったんで。四條畷からだと電車では行きにくいので。
ただ、浪人生の時はよく行ってましたね。お寺とかよく行ったり、お水取りとか。奈良県に遊びに行くようになって、日本画を専攻しようと決めました。
ー高校の時から絵の世界に進もうと思っていたのですか?
高校3年の時に、美術の道に進もうと決めましたね。
ー急にですか笑?何かきっかけがあったのですか?
進学校に通っていたので、周りのみんなが頭がよかったんですよね。私は本だけ読んで学校に入ったので、勉強に付いていけないんですよ。付いていけなくなったというのもあるんですが、「この勉強は将来意味のあるものなのか?」と思うことが多くなり、高校3年の時に勉強を止めました。
自分が実力でのし上がっていくものはないものかと考えた時に、小学校の時に絵がうまいと言われたことがあり、それなら美大に行ってみようかなと思ったんですよね。本も好きだったこともあり、絵と文章を書くなら絵本だと思い、絵本作家を目指すようになりましたね。
絵がうまいと小学校に言われた些細なことがきっかけですね。
ー些細なきっかけからここまでの絵本作家になれるってすごく夢のあることですよね。今後チャレンジしたいことはありますか?
コロナ禍で海外に全然行けてないので、海外で活動したいですね。
あとは四條畷市で『100人のサンタ』のオブジェを作るプロジェクトをしているんです。最初は勝手に始めたんですが、市の方々も協力してくださるようになり、今は58体(2022年4月25日現在)あるんですよね。これを目標の100体まで作りたいですね。街中を美術館にしたいです。四條畷市のPR大使として。
gallery&cafe Zoologique
- 住所/大阪府 四條畷市南野 1丁目7−2
- 電話/072-396-5233
- 営業時間/ 11時00分~18時00分
備考/詳しくはお店のInstagramへ(@galleryandcafe_zoologique)
- 定休日/火、水、木、金 その他休業日/詳しくはお店のInstagramへ(@galleryandcafe_zoologique)
- 駐車場/なし