スイーツ洋菓子奈良県生駒市
2022/06/05 16:20
春川悠

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti】

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

ならやま大通りのこの看板が目印。konditorei Dettiオーナーシェフの田坂裕美子さんにインタビュー(撮影のためマスクを外しています)。

奈良県生駒市にある白庭台本店に続き、2020年には神戸市の住吉に2号店をオープン。メニューのポイントや美味しさの秘密、お店のストーリーをオーナーシェフの田坂裕美子さんに伺った。


「konditorei Detti(コンディトライ・デティ)」は、果物や茶葉など素材の味わいを愉しめるタルトと焼き菓子の専門店だ。芳醇なアーモンドクリームとサブレ生地のベイクドタルト、カスタードクリームや季節のフルーツを合わせたフレッシュフルーツタルト、バターの香りにそそられる焼き菓子……オープンキッチンからショーケースへと並べられるスイーツの数々に、思わず顔がほころんでしまう。手土産にもぴったりなラインナップで、女性のみならず男性のファンも多い。

ドイツの女の子・デティの名を店名に


「ドイツ語で“お菓子屋さん”・“洋菓子店”・“パティスリー”といった意味を持つのが“konditorei”。“Detti”は、私がドイツのお菓子屋に勤めていた頃に一緒に働いていた女の子の名前です。彼女の家にホームステイもしたので、ご家族含めて大変お世話になりました。自分の店をオープンするにあたって、一番最初に連絡したのもデティです」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

デティさんに店名のことを話すと「いいの?」と照れながらも喜んでくれたのだそう。

日本で製菓の修行を積んだ後、兼ねてから興味のあったドイツ菓子を勉強するため単身ドイツへ旅立った田坂さん。ドイツで勤めたのが、デティさんとの出逢いの場ともなったデュッセルドルフのケーキ店「Café Schuster(カフェ・シュスター)」だった。

「ドイツ語が全く喋れなかったので、まずは語学学校に通いました。一方で仕事をしないと生活ができないので、お菓子屋さんに“働かせてください”と飛び込みでお願いしに行ったんです。そんな初めてドイツに来てドイツ語も喋れへんような子を雇ってくれたのが、Café Schusterでした。曜日を間違えて面接をすっぽかすなんてこともしたのに、店長のステファンはとても良くしてくれて。店を出すと報告した時にもすごく喜んでくれましたね」

そこで一緒に働いていたのが、店名の由来になったデティさんだ。

「デティは当時見習いとしてCafé Schusterで働いていた製菓学校生でした。ドイツにはマイスター制度という職業能力認定制度があります。ドイツ版の製菓学校に通っている子は、日本で言うところの職業訓練みたいに結構長いこと実務経験を積むんですよね。私がドイツにいる間は、デティもずっとCafé Schusterで働いていました。当初私はドイツ語の語学学校に斡旋してもらったマンションで一人暮らしをしていたんです。そこへデティが“うち今部屋空いてるし来る?”と声を掛けてくれて、一緒に暮らすことになりました。デティも留学などの海外経験があり、“自分も良くしてもらったし”という考えがあったようです。滞在させてもらったのはデティが家族と暮らしている家で、すごく大きい家でした。家族みんなにとても良くしていただきました」

オーソドックスな伝統菓子を学びに、ドイツへ


数ある製菓のジャンルの中でもドイツ菓子に興味を持った理由を、田坂さんは次のように話す。

「フランスにケーキを見に行ったことも何度かあるんですが、パッと目を引いて華やかなんですよね。ただ、やっぱりそういうお菓子よりも、私はどちらかというとオーソドックスな地方菓子や伝統菓子に興味があって勉強したかったんです。知人からもドイツの話を聞いていて、一度行ってみたいなぁと想いをつのらせていました」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

タルトの詰め合わせやラッピングにも対応。記念日やパーティー、贈り物に利用できる。

日本でマンションの一室を借りて2005年にお取り寄せ専門店をオープンしたのも、このドイツ菓子への想いからだった。

「本当はドイツで勉強し続けたかったんです。でも当時ドイツは就職難で、ドイツ人でも働き口がなかなか見つからないような状態でした。そんな状況下で私の場合はビザの問題も出てくるので、ひとまず帰国。ドイツで働くことは叶わなくとも日本から通いながら勉強して、勉強したものを出せる場所を持ちたいなと思ったんですね。それで始めたのが、お取り寄せ専門店でした。なので、店を構えるつもりはなかったんです。本当にドイツに行きたかったので」

ドイツと日本とを行き来しながらも、アウトプットする場を求めお取り寄せ専門店を営んでいた田坂さん。およそ5年におよぶ年月を経た2010年6月24日、要望に応える形で奈良に実店舗をオープンさせることとなる。

「お取り寄せだと送料が掛かりますし、お渡しできるのがどうしても翌日以降になります。やっぱりつくりたての方が美味しいですから。お客様からリクエストをいただくにつれ、どこか店を出す場所を探そうと考えるようになりました。当時は修行していた店に通うために奈良市に住んでいたので、物件も奈良市内で探していたんです。条件に合う場所がなかなか見つからないまま一年が過ぎた頃、お世話になっていた不動産屋さんから“奈良市内ではないけど条件に合う物件があるよ”と勧められたのが、今の白庭台本店がある場所でした」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

見晴らしが良く、夕暮れには青がひたひたと沈み茜色に染まる街並みを望める。田坂さんのお気に入りの景色だ。

いよいよ実店舗を持つ上で、田坂さんが特にこだわったのはオープンキッチンだ。

「焼き上がりの香りなどをリアルタイムで感じてもらえるのが、オープンキッチンを取り入れたかったポイントです。それは、店を構える一番の魅力だと思うんですね。お取り寄せ専門店の経緯もあり、できたてを提供したいという気持ちは強くありました」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

店内にあるオープンキッチン。香ばしく芳醇な香りが運ばれてくる。

シンプルかつ、インパクトのある味わいを


五感で焼き上がりの臨場感を味わえる「konditorei Detti」のオープンキッチンからは、季節の移ろいを垣間見ることもできる。一年を通して食べられる定番タルトの他に、季節のタルトも「konditorei Detti」がファンを引き付けて離さない理由だ。その時期ならではの美味しさを私たちに届けてくれる。

数あるラインナップの中でも、一つ一つ種を取り、甘露煮にして……と、特に手間がかかるのが「金柑タルト」。でも実は季節のタルトの中で一番の好みなのだと田坂さんは明かす。

「あくまで好みの話なのでそれが苦手と言う方もいらっしゃるとは思いますが、個人的には金柑はアク・苦味があるから美味しいと思うんです。私は味がぼやーんとしたものはあまり好きではなくて、何かしらパンチのあるものをつくりたいという想いがあります。例えば、“洋梨のメープルタルト”という定番タルトには、洋梨だけでなくメープルシロップが混ざっているんです。メープルの味があるのとないのとでは、インパクトが違うんですよ」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

甘くクセになる美味しさが評判の「洋ナシのメープルタルト」。

「味にしろ、食感にしろ、インパクトを効かせるのが好き」と話す田坂さん。食感にアクセントを加えたタルトの代表例として挙げるのは、「チェリーのシュトロイゼルタルト」だ。「シュトロイゼル」はバター、小麦粉、砂糖などを合わせポロポロの粒状にしたドイツ起源のトッピングを意味する。

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

田坂さんがドイツ修行時代その美味しさに感動したシュトロイゼルをトッピング。下には甘酸っぱく炊き上げたチェリーがたっぷり。

「ドイツ菓子では定番で使われるシュトロイゼルには、アーモンドが混ざっているんです。アーモンドがあるのとないのでは、食感のコントラストが違います」

ここまででわかる通り、konditorei Dettiの菓子はネーミングが非常に明快だ。そのシンプルさは、商品づくりを通して貫かれている。

「実は、いろんなものを組み合わせた創作菓子はあまり好きではないんです。結局何を食べさせたいのかよくわからない物よりも、食べてこれってわかる物が好きですね。杏のタルトだったら、食べて杏だとわかるとか。ネーミングも同じなんです。だから奇をてらったような珍しい物はないと思います、うちのお菓子は」

素材を活かすkonditorei Dettiの味わいを下支えしているのが、基本材料であるバターと小麦粉だ。

「バターと小麦粉は使っている量が多くて、味が大きく左右されるんです。なのでこれまで使ってきた物から変えたくはないですね。konditorei Dettiのお菓子に一番合う材料を探して使っています」

生まれ育った神戸に、2号店をオープン


konditorei Dettiは10周年を迎えた節目の年に、2号店をオープンさせた。場所は、神戸市の住吉。神戸は田坂さん自身が生まれ育った土地であり、住吉は大好きだった祖父に会いによく通った場所だった。

「神戸出身なので、いずれはやりたいなぁという夢はありました。物件を探そうなんてつもりはなく散策していた時に、たまたまテナント募集の看板を見つけたんです。その日は水曜日で不動産屋がお休みだったので、翌日すぐに電話したのを記憶しています。人気があり競争の激しい場所と知っていたので、2〜3日の内に決めました」

そうして田坂さんが2号店出店を決断したのは、感染症拡大が私たちの生活に大きな影響を与えるよりも前のこと。「こんなことになるとは」というやりきれない気持ちを抱えながら、工事が着工できない上に白庭台本店の営業に追われ2号店に手が付けられない状態が続いた。2店舗分の家賃をただただ支払い続ける日々を「仕方ないかなぁ」となんとかやり過ごし、2020年6月27日遂に神戸元住吉店をオープンさせる。

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

2号店の神戸住吉店には、この白庭台本店でつくった焼き立てを毎朝店の車・通称「デティ号」で届けている。

特別な日のお菓子屋さんに


日々の忙しさに埋もれそうになる田坂さんを鼓舞したのが、周囲からの応援と支えだ。ドイツや日本での修行の日々、そして現在においても「私はすごく恵まれています」と田坂さんは振り返る。

「製菓の道に進みたいと思ったのは、北海道の大学に通っていた学生時代。“ケーキハウス ありがとう”(現・パティスリーありがとう)というケーキ店でのアルバイトがキッカケです。お菓子づくりが好きなだけで専門の学校で学んだわけでもない私に、様々な経験をさせてくれました。そこのシェフに故郷の関西で就職したい想いを話すと、“昔フランスで働いていた頃に一緒だった人が徳島県で店を出しているから訪ねなさい”と道筋をつけてくださいました。徳島県に足を運んで紹介していただいたのが、京都のケーキ店“パティスリー・ナチュール・シロモト”の城本智和シェフです。たくさん怒られましたが、本当に多くのことを学ばせていただきました。私には周りに良くしてもらったという想いがあります。店を持つにあたって人を雇うなんてはじめは思ってもみなかったことでしたが、今ではたくさんのスタッフが働いてくれています。お菓子づくりに限らず、彼らは私より優れた能力を持っています。私には見えていなかったことに気付いてくれることも多いです。周りに対して気遣いできる子が店にいることで、後輩は気持ちよく働けますよね。いてくれて良かったなぁとしみじみ感じます」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

Webサイトのほか、白庭台本店と神戸住吉店それぞれのInstagramでも情報をチェックできる。

「私たちは日々いくつものお菓子をつくりますが、お客様にとっては大切な一個です。だからスタッフには、一つ一つきちんとつくって欲しいと話しています。規模の大きいお店のような数はつくれないですし、売り切れてしまうこともあります。例えばお誕生日ケーキだとお渡ししたいタイミングに用意することが大切だと思いますが、直前だとどうしてもご対応が難しいというのが実情です。もし事前にご予約をいただけましたら、精一杯おつくりいたします。毎日ではなくても良くて、特別な日や誰かにプレゼントしたい時に使ってもらえるお菓子屋になれたらと願っています」

特別な日のお菓子屋さん。タルトと焼き菓子の専門店【konditorei Detti/生駒市】

2019年5月から始めたジェラートも大好評。毎年楽しみにするファンに応え「今後も力を入れていきます」と田坂さん。

支店


神戸住吉店
〒658-0051 神戸市東灘区住吉本町1丁目4-8
定休日:火曜・水曜日 
TEL&FAX:078-854-9560

konditorei Detti神戸住吉店 Instagram @konditorei_detti_sumiyoshi

タルト焼き菓子 konditorei Detti(コンディトライ デティ)

  • 住所/奈良県生駒市南田原町2385
  • 電話/0743-71-2750
  • 営業時間/10:30~19:00
  • 定休日/水
  • 駐車場/3台
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