子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。

子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。

これまでこちらのコラムでは、子育てとジェンダーについて様々なことを書いてきました。特に、私自身も母親であることから、どちらかと言えば母親目線で、子育てにおける男女の非対称性について言及してきました。

子育て支援＝母親支援になってしまうこと。仕事に出れば「今、お子さんは？」「お子さんを見てくれるなんて、いい旦那さんだね」と言われてしまうこと。お母さんなんだから子育てするのは当たり前と思われてしまうこと。

これらはいずれも母親に対するマイクロアグレッションですが、視点を変えてみれば、父親にとってもマイクロアグレッションであるのだなと、最近改めて感じます。

父子で出かけても男性トイレにおむつ替えの台がなかったり、「イクメンだね、すごいね」と必要以上に称賛されたり、「今日はママはいないの？」と聞かれたり。これらは父親を子育ての主体と見なしていないことの表れではないでしょうか。また、子育てへの参加を期待されながらも稼ぎ手役割を免れることはなく、平日に子どもと出かければ「今日はお仕事はお休みですか？」と当然のように聞かれたり。いずれも、母親はあまり経験しないことだと思います。



こういった非対称性はいわゆる「男性優位社会」の副産物でもあるため、このような状況を男性が嘆くことに対して「おまいう」的な反応が多くなってしまうのも理解できます。私も、現代の日本にはまだまだ大きなジェンダーギャップがあると思っていますし、男尊女卑的な社会構造に対しては明確に「NO」を突きつけていきたいと思っています。しかし、私たちの敵はそういった社会構造およびそれを維持しようとする動きであり、“今、子育てを頑張りたいと思っている男性”ではありません。

もちろん、特権についての自覚は大切です。しかしそれを言うならば、“子育てしたい”場合に特権があるのは母親の方かもしれません。子育てに関する場から父親を排除するという積極的な意図がないとしても、母親と子育てが強く結びつけられることで父親は自然とそこから排除されてしまっていないでしょうか。排除されていることは、排除されている側にしか気付けないものです。他の多くの場面では女性がそうであるように、です。これは、社会で積極的に是正していく必要があると思います。

また、女性の社会進出（…っていう言葉は嫌いなんですけど便宜上使いますね）に際して「男並みに働いてこそ」と男性の作った評価基準に従わせることに無理が生じるように、男性の子育てに対しても「これまでの女性並みにしてこそ」を求めることは、お互いの首をしめ合うことになるような気がします。「自分達が苦労してきた並みにやってみな」と牽制し合いながら優越を手放さないのではなく、お互いがほどほどに分担・協力しながら社会を良くしていけたらいいなと思います。


そんなわけで、私自身もこうして文章を書くだけでなく、今年度は具体的な行動に移そうと思います。

1つは、子育てする父親の集い場を作ること。もう1つは、父親の子育てについて大学院で研究すること。いずれもこの4月にスタートします。これらの内容についても、いずれコラムでご紹介できればと思っています。

同じくこの4月から、改正された育児介護休業法が段階的に施行されます。企業には育休を取得しやすくするための環境整備が義務付けられたり、男性版産休が創設されたりと、男性の子育てを後押しするものになっています。これから益々子育てする男性が増えていくであろう中で、せっかくいい制度があっても、社会の空気がそれを応援していなければその効果は薄まってしまうと思います。

男性も当たり前に子育てしやすい社会へ。そのためにも私たち一人一人が良い空気を作っていきたいですね！（特に企業の中で決定権を持っている方々〜、よろしくお願いしますよ〜）