2022/03/24 13:00
ぱーぷるmirai編集部
【子育てコラム】子育てとジェンダー「トツキトオカの幻想」
子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。
子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。
先日、婦人科検診で久々に産婦人科を訪れました。
もうすぐ出産かなという妊婦さんや、数日前に生まれたばかりの赤ちゃんたちと待合室ですれ違うたび、妊娠・出産という大仕事をやってのける女性は本当にすごいなと改めて思いました。
これまでこのコラムの中で幾度となく「子育て=母親がすること」ではないということを書いてきましたが、母親と子育てを結びつけ、当然のようにそこに違和感を抱かないのは、妊娠・出産そして母乳を与えることが母親にしかできないからなのだろうと思います。
いわゆる妊娠期間とされる「トツキトオカ」、母親にとっては自分の身体の中で人間が育っていくのですから、神秘的な体験であることに間違いありません。日に日に身体の状態は変わってきますし、つわりでものが食べられなくなったり、お腹が張ったり、眠かったりと、マイナートラブルによってその変化を感じることはあるでしょう。
しかしこの期間でこれまた神秘的に母性がムクムクと勝手に湧いてきて、何だか知らないうちに精神が子育てに順応していくかというと、少なくとも私自身は否でした。なので、このトツキトオカで母親は父親よりも早く親になる準備ができているとか、父親は母親ほどすぐには自覚が持てないとか言われると、それはちょっと違うだろと思ってしまいます。
妊娠が分かってから出産の日まで、母親と父親に与えられる時間は同じです。出産までに何を準備しておかなきゃいけないか、産後にどんな生活が待っているか、それをどう過ごせばいいのか。そんなことがトツキトオカで母親に自動インストールされるわけではありません。自分自身と大切な子どもの命に関わるため必死に予習しているだけであり、これは父親にも出来ることだと思います。むしろ、マイナートラブルを抱える母親よりも、体調の安定している父親が積極的に取り組む方が効率的とすら言えるかもしれません。
まさか未だに母性神話なんか本気で信じてる人はいないとは思うのですが(え?いないですよね?まさか、ねぇ?←煽りスキルの高さ)、「母は強し」だとか「母性本能」だとか、そういった表現は日常の中で本当に都合よく使われているなと感じます。本能でやっているということにすれば、社会としてサポートが足りないことへの罪悪感も少なくなるのでしょうか。本能本能って、子育ての話になったときだけ知性はどこに置いてきたんだよ?と、思わず喉まで出かかって、そのまま口から出たりします。(結局出る)
妊娠・出産で母親の体はボロボロであるという明確な性差には言及せず、トツキトオカお腹の中にいたんだから母親の方が子育てに順応できるはず、子どもを愛せるはずという、不明確な性差については当然のように受け入れられてしまう。
父親はなかなか実感が湧かないよね、ということが許される横で、母親は子どもを愛せて当然だという神話が、そうできない母親を必要以上に追い詰めてはいないでしょうか。本来はどちらも同じように戸惑い、理解できず、時には逃げ出したくなるものなのではないかと、私は思います。
現状よく耳にする「やっぱりお母さんがいい」「お母さんだから出来る」は、ただの結果論。大切なのは、母親であろうと父親であろうと、いかに当事者意識を持って子育てに臨んでいるかの一点だろうと思います。
妊娠・出産と母乳を与えること以外は全て、母親か父親かに関わらずできます。父親のすべきことは「サポート」ではありません。子育ての当事者であることを自覚してパートナーと共にトツキトオカ過ごせば、子育てスタート時の差なんて生まれないはずです。ただでさえ満身創痍の産後の母親に“父親育て”までさせるなど言語道断!!父親自信にその自覚を持ってもらうことはもちろん、母親にも「自分がやらなきゃ」の呪いを捨ててもらい、社会もそれを当たり前としたサポート体制を用意しなければなりません。
令和のプレママさん・プレパパさんが、二人三脚、共に悩み、考え、喜び、子育てが始まる日を同じ足並みで迎えられますように。そんなお二人に心からのエールと、子育てのことで妻に「どうすればいいの?」と聞く夫には最大級の「ググレカス(^^)」をここに置いて行きますね。
どうぞ良いトツキトオカを!
《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ
高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。
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