子育てコラム生活
2022/03/02 11:15
ぱーぷるmirai編集部

【子育てコラム】子育てとジェンダー「パートナーの呼び方問題」


子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。

子育て中のモヤモヤをジェンダー視点で見つめるコラムを連載させていただいております。


あるとき、同年代の男性から「最近パートナーをどう呼ぶのが正解か分からないんですよね。嫁、って呼ぶと、ちょっと見下した感じになる雰囲気ありませんか?」と聞かれたことがありました。

確かに最近は何となく「嫁って呼ぶのは良くない」という空気が広がってきている気がしますね。

「嫁」という言葉の印象の良し悪しはさておき、そもそも自分の配偶者の呼び方としては相応しくないということをその時はお伝えしました。自分の配偶者を指すのは「妻」や「夫」であり、「嫁」というのは息子の妻を指す言葉なので、自分の妻を「嫁」と呼ぶのは単純に正しくないということになります。

同様に「婿」というのは娘の配偶者を指す言葉なのですが、自分の配偶者を婿呼びしている方とは未だにお会いしたことがありませんので、こちらはあまり誤用されていないようですね。

では、「妻」「夫」以外の呼び方についてはどうでしょうか。

実は私、結婚してすぐの頃は、職場などで夫のことを話すときに「主人」という言葉を使っていました。単純に、夫を指す最上級の丁寧語だと思い込んでいただけで、特に深い意図はありませんでした。しかし「主人」というのはその字の通り、主従関係を示す言葉でもあり、男性が主体で、女性はそれに仕えるという、家父長制の色を濃く残した表現です。これに気づいてからは、自分の夫のことを主人と表現するのはもちろん、他人に対して「ご主人」という表現をすることもやめました。

ちなみに、配偶者の呼称ではないのでここで言及する必要はないかもしれませんが、「嫁」や「婿」も、単純に子どもの配偶者を指すというよりは、“家に入る”というような家制度の名残を感じる表現なので、私はあまり使いたくないなと思ってしまいます。

最近では、テレビ番組で街ゆく人にインタビューをして「嫁が」「主人が」という発言が出てきた場合にも、テロップでは「妻が」「夫が」に変更されている場面をよく目にしますので、世間的にもそのような認識が広がって来ているのかもしれません。



では、「奥さん」や「旦那さん」という表現はどうなのでしょう。これについては私も深く考えたことがなかったので、辞書で調べてみました。「奥さん」というのは敬意の含まれた表現であり、他人の妻や既婚とみられる女性(どうやって判断するんやろ)を指すとのことで、自分の妻を指すものではなさそうでした。一方「旦那さん」というのは自分や他人の夫のことを指すようで、何気にこれが一番混乱しました。そうなのか。そうなのかーーーーいっ!

つまり「私の奥さん」はおかしいけど「あなたの奥さん」はOK。
「私の旦那(さん)」はOKで「あなたの旦那さん」もOK。

なるほど、分かった分かった。じゃぁ、自分の配偶者のことは「妻」「夫」と呼ぶのがベストで、他人の配偶者のことは「奥さん」「旦那さん」と呼んでいいんだな。

と思った矢先。

「奥さん」という表現は、女性=奥や裏、男性=前や表 という非対称なニュアンスを含む表現だという説に出会いました。もちろん、奥や裏がダメということではないのですが、確かにこれは「女性=家の中のことをする人」というイメージを持たせてしまう気がします。「家内」などと似たニュアンスでしょうか。

更に「旦那」は、語源になっているのが「施し・布施」の意味を持つサンスクリット語「ダーナ」で、お金を出し生活の面倒を見てくれる人という意味でこれが用いられるようになったとのことでした。

これはいかん。私は知らず知らずのうちに、ほんのりと「お~い、奥で家のことをやる人~!」「へい、生活のためにお金稼いでくる人!」みたいな呼び方をしてしまっていたのか。

益々他人の配偶者をどう呼ぶのがいいのか、分からなくなりました。

そんなに気にしなくても、今はそういう意味で使ってないし、悪気があるわけじゃないんだから、と思われるかもしれません。しかし私はやはり、こういったことには少しでも敏感でいたいと思うのです。決して言葉狩りをしたいわけではありません。ただ、誰かのことを表し、自分の口からも出る言葉ですから、できる限り偏った意味を含まない表現をしたいのです。

とはいえ、自分の中でのベストな呼び方がなかなか見つかりません。妻さん、夫さんっていうのもなんだか不自然ですし、同性婚も早く認められて欲しいので同性パートナーの場合にも使える表現だと更にいいなと思ったりもします。

そんなわけで、他人の配偶者のことは暫定的に「奥さん」「旦那さん」と呼びつつも、もっとフラットないい表現がないか常に頭のどこかで気にしておきたいなと思います。配偶者の呼び方に限らずですが、言葉をここまで気にするのは、“自分がちょっと気にかける”ということが“誰かにずっと我慢させる”ということを減らせるような気がするからです。

皆さんは、どんな呼び方がいいと思われますか?





《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ


高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。

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