子育てコラム生活
2022/02/22 11:39
ぱーぷるmirai編集部

【子育てコラム】子育てとジェンダー「発掘!化石の名付け本」


子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。


さて。前回のコラムで、何故私は特別な事情がなければ女性が改姓するのが当たり前と思い込んできたのだろうかということを、自らの不便な体験や子どもの命名の話と共に書きました。

そして、今の名付け本ってどうなっているのだろうと書店に駆け込んだのですが…。
※名付け本:子どもの命名をする際に参考となる、名前に使える漢字やそれが持つ意味、画数、気をつけるべきことや人気の傾向などを掲載した本。


子育て関連書籍コーナーに何冊も並ぶ分厚い名付け本たち。そもそも【女の子用】と【男の子用】に分かれているものが目立ちました。まずは端っこから、と最初に手に取ったのは女の子用の名付け本。パラパラっとめくってビックリ!

最初のページ、最初の項目に「女の子は将来姓が変わることも考えよう」というアドバイスがバババーーーーーンと目に飛び込んできました。1丁目1番地にこれか…と思わず白目を剥きました。

また別の本では「将来的には選択的夫婦別姓が実現するかもしれませんが」という前置きをしながらも、そうなるまでは基本的に女の子が姓を変えることになるだろうからという書き方がされており、これはある意味さらに酷いのではと思いました。選択的夫婦別姓が実現していないのであれば尚更、1日でも早く「女性が改姓するのが普通」という固定観念を無くした方が良いと思うのですが。

それ以外にも何冊か手に取りましたが「女の子は優しい・朗らか・柔らかいイメージの漢字を」「男の子は強い・知的・自由わんぱくなイメージの漢字を」と、名付け以前にどんなジェンダーバイアスやねん!と地団駄通り越してボックスステップ踏みたくなるようなアドバイスや、「男女の区別がつきやすい名前にしましょう」という何だか根底から考え直してほしいアドバイスが、ざっと最初の数ページ目を通した程度でも出るわ出るわ。



思わず店員さんに「大変です!化石です!化石群がここに!!!」と、発掘の興奮を大声で報告してしまうところでした。

さらには「将来子どもから名前の由来を聞かれたときに答えられないと、子どもが自分は愛されていないと感じてしまうので、後付けでもいいので由来を考えておきましょう」というアドバイスまで。

ベストオブやかましいか。

もう何というか、時代錯誤という言葉では片付かない現状に腰を抜かしそうになりました。これを、令和のプレママさん・プレパパさんが読んでいるの…?本当に…?と怖くなり、念のため発行年を確認したところ、軒並み2020年から2021年。

「そうですね、あの瞬間は、とどめを刺された気分でしたね、はい(遠い目)」と、ザ・ノ○フィクション風にBGMも流してお焚き上げしておきますね。


できるだけ良い名前をつけてあげたいと思えばこそ何かを参考にしたくなるのは当然で、そこでこのようにアドバイスされてしまえば、特に疑問も抱かず受け入れてしまうのも仕方ありません。こんなふうに、親も知らず知らずのうちにジェンダーバイアスを強化され、それに従った行動を取ることで次世代へと継承してしまうのだなと思いました。


かくいう私自身も、子どもの名付けの際、息子や娘の改姓可能性については名付け本にも書いてあった通りのジェンダーステレオタイプに従ってしまいました。しかし、これで子どもの全てが決まってしまったわけではありません。子育ては現在進行中ですから、いずれ子どもが誰かと結婚するという選択をした場合、姓をどちらにするかきちんと相手と話し合いできる人に育てるということが今やるべきことなのだと思います。その結果、息子も娘も相手の姓にするという選択をするならば、それはそれで良いと思っています。(そもそも、どちらも姓を変えたくないという場合のために、さっさと選択的夫婦別姓が導入されてほしいのですがねー)

そんなこんなで、14年前に私が参考にしていたものからほぼ進化を遂げないままの名付け本たちに再会することとなった今回。あまりにもあまりだったので(語彙力)、購入することなく帰路についたわけですが、逆にありったけの名付け本を買い占めて研究対象にしても面白いかなと思い始めています。

子どもの命名をきっかけにジェンダーバイアスを強化してしまうことができるのであれば、逆もまた可能なはずで、名付け本出版各社には、ジェンダーバイアス解消のきっかけとなるようなものを2023年版として製作していただきたいものです。





《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ


高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。

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