2022/01/21 10:00
ぱ〜ぷるmama
【子育てコラム】子育てとジェンダー「家族のあり方は自由だけれど」
子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。
子育て中のモヤモヤをジェンダーの視点で見つめるコラムを連載させていただいております。
こんなふうに家族や子育てについてジェンダー視点で書いていると「確かに今の時代、そういうのが流行ってるのは分かってる。でも、古い考えが悪いわけじゃないよね?男性が働いて女性が家庭を守る、っていう方がしっくりくる人はそれを選べばいい。要は、家族のあり方はそれぞれが選ぶことであって、性別役割分担意識をなくすべきっていうのは逆に多様性を否定しているのでは?」と言われることがあります。
もちろんその通りで、各家庭や個人がどのような選択をしようと、否定されるべきではないと思います。専業主婦/主夫になりたい人、仕事に専念したい人、どちらもバランスよくやりたい人、様々だと思います。
しかし問題は、個人がその選択をするときの基準が、“それまでに与えられた価値観“によって決まるということではないでしょうか。女性は愛する人に尽くすことが幸せ、好きな人の苗字になることが幸せ、母性本能があり子育てに向いている、男性は仕事で稼いでこそ立派、身の回りの世話を甲斐甲斐しくしてくれる妻を得ることがステータス、などなど。自分でも気付かないうちに内面化している価値観によって個人が選択をするとしたら、その価値観を生み出している社会と個人の選択は無関係ではないはずです。なので、まずは社会の中の偏りを無くしていきませんか?という話であり、選択した個人を否定している訳では決してありません。
例えば、男女の賃金格差が大きい社会において、夫婦のどちらが稼ぎ手役割を担い、どちらが家庭を守る方が合理的か?となれば、おそらく女性が家庭を守る方がお得ということになり、その選択をする個人の方が多くなるでしょう。これにより、社会は「女性はいずれ家庭に入ってしまうので昇格と無縁の役職でいい」と位置付け、男女の賃金格差は是正されず、以下繰り返し繰り返し…となってしまいます。
現状に偏りがないという前提に立てば「どちらもありだよね」「個人が選択することに口出ししなくていいよね」と、中立の立場を取ることもできるでしょう。しかし、既に具体的な偏りがある中で「それぞれが選択したことなんだから」という中立っぽい立場を取るのは、その偏りを是正しない、もっと言えばその偏りを維持することに加担してしまうのではないでしょうか。
そこで、こうした社会の中の偏りを積極的に是正していきましょう!というのがアファーマティブアクションです。女性管理職を積極的に増やしましょう、とか、女性研究者を支援しましょう、というのがそれにあたります。最近では「男性ばかりが登壇するトークセッションには自分(男性)は登壇しません。その分、女性に登壇してもらってジェンダーバランスを整えてください」という著名人もいらっしゃり、おー!そういう手段があるのか!と感動したりもしました。
※なお、この図の「マジョリティ」「マイノリティ」というのは単純な多数派・少数派という数の概念ではなく、より重要とされ特権を持つ側とそれを持たざる側という意味で使用しています。
こうして考えてみると、育休の取得が圧倒的に女性に偏っている社会で、女性のための子育て支援を拡充させるのは格差を拡げてしまうことに繋がってしまうのでは?と思ったりもします。どちらかと言えば、男性に対する子育て支援を拡充させる方が格差是正になるのではないでしょうか。「私は夫に育休を取ってほしいとは思わない」「僕は育休を取りたいと思わない」という個人がいても勿論いいと思いますが、社会全体のバランスを考えたときには、できるだけ多くの男性が育休取得することが様々な格差の是正に繋がると思うのです。男性自身が積極的に育休取得していくこと、そして社会がそれをしっかり支援してしていくことは、立派なアファーマティブアクションといえるのではないでしょうか。知らんけど。(最大の保険ーーーーーーーー!
さて。アファーマティブアクション、と呼べるほどのものではないかもしれませんが、実は私もコラムを書く際に気をつけていることがあります。それは「お父さん/お母さん」「男の子/女の子」と男性を先にして表現することが多いものを「お母さん/お父さん」「女の子/男の子」と女性を先に書くようにしている、というものです。
ただ、実は過去に一度だけ男性を先に書いてしまっている箇所がありました。見つけた方には岩城の「スーを差し上げます」。(いらん
「男性を先に書いたら男尊女卑で、女性を先に書くのはいいのか。それは逆差別じゃないのか」という主張に対しては、上記のアファーマティブアクションの説明で理解を得られると嬉しいです。従来「どちらでもいい」もしくは「平等であることが望ましい」はずのものに明らかな偏りがある場合、それを積極的に是正していく行動を少しずつでも取っていくことが大切なのではないでしょうか。
格差というのは社会構造の問題であり、各個人が悪意をもって作り出しているわけではないと思います。だからこそ、悪意なき中立により格差を維持してしまわないよう、小さなことからでも気にしていきたいなと思います。
《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ
高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。
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