子育てコラム生活
2022/01/06 14:00
ぱ〜ぷるmama

【子育てコラム】子育てとジェンダー 「いい旦那さんですね、と言われて 冬」

子育てしやすい社会の実現を目指して活動する「Alright Baby」プロジェクト 代表の岩城です。


子育て中のモヤモヤをジェンダーの視点で見つめるコラムを連載させていただいております。

今回は私自身が経験したモヤモヤについてです。

私は現在フリーランスで仕事をしています。仕事の内容やクライアントによっては、夜や土日に仕事に出向くこともあります。そういったとき、よく言われたのが「今、お子さんはどうしていらっしゃるんですか?」という言葉でした。

子どもが大きくなった今ではあまり言われなくなりましたが、子どもが小さいうちは本当によく言われたものです。「夫が家におりますので」と言うと「旦那さんが見てくれてるんですね、いい旦那さんですね!」と言われるところまでがセットでした。時には「そういう理解のある旦那さんだからこそ、こうしてお仕事できるんですね」と言われることもありました。

これにモヤモヤする私は心が狭いのかもしれません。相手は完全に褒め言葉として言ってくれていますし、私が仕事の間、子どもと一緒にいてくれる夫は間違いなく「いい旦那さん」でしょう。

しかし、例えば相手が父親であった場合、私が「そちらはいかがですか?奥さんがお子さんを見てくれてらっしゃるんですね!いい奥さんですね!そういう奥さんだからこそお仕事できてはるんですね」と言ったらその人はどんな顔をするだろう?と思ったりするのです。まぁさすがにそんなことは言えず「そうですね、ありがとうございます」とバレバレの作り笑顔で応えるのが精いっぱいでしたが、あの笑顔は逆に怖かっただろうなと我ながら思います。

“母親”である私だけが、本来は一番担わねばならぬはずの子育てを誰かに委ねて仕事できていることに感謝を忘れてはいけないと言われているようでした。これは少し前に炎上した広島県の「働く女性応援よくばりハンドブック」にも似たものを感じます。母親も父親も同等に子育て当事者のはずなのに、何故か社会の扱いはそうではありませんし、個人の中にも【子育ては母親がするもの】というアンコンシャスバイアスが潜んでいます。



以前、うちの親子教室に通ってくださっていたママが「最近ちょっと子どもが大きくなってきたからか、夫が夜遅くまで飲んでくることが増えたんですよねー」と話してくれたことがありました。それは全く愚痴っぽくもなく、にこやかに、ただの話題として話してくれたものでした。なので私は「そうですか、いいことですね。ママも同じくらいの頻度で夜遊びしなきゃダメですよ」と大真面目に言ったのですが「えーーー!先生がそれ言う(笑)?」とめちゃくちゃ笑われました。親子教室の私が、母親の夜遊びをすすめることは意外だったようです。私が言わなくて誰が言うんだ、と思いながら「いや、笑い事じゃなくて本当にね。ママもちゃんと遊んでね」と念押ししたものです。あのママはちゃんと夜遊びしてくれただろうか・・・(遠い目)

こういった母親と父親の非対称性に敏感になってから、仕事絡みの飲み会や異業種交流会みたいなもので集まるときに気になることが増えました。それは、子どもがまだ小さい女性と同席することはほとんどないのに、同じ状況の男性と同席することは少なくないということでした。もちろんこれは、男性に対して「稼ぎ手役割」が担わされていることの裏返しでもあるので、単純に「男性だけずるい」という話ではありません。しかしそれも含めてこの非対称性はやはり不自然だと思うのです。

「今度このメンバーで飲みながら話さない?」と仕事絡みで誘われたとき、そこにまだ子どもが小さい父親がいると、ちょっと考えてしまうようになりました。私たちとの飲み会でこの人の家庭での時間を奪っていいのだろうか。その間、パートナーは一人で子育てしているのだろうか、と。考えすぎだと言われるかもしれません。子育て中でも息抜きの時間は勿論必要です。しかしその方のパートナーも同等に一人で息抜きする時間を持てているのであればいいのですが、現状そういった家庭の方が少ないように感じます。女性は家庭、男性は外で付き合い。そういう構図に加担する集まりの中に、自分が居たくないと感じてしまうようになったのです。

それであれば、仕事の話はお酒がなくてもできますから、また後日ZOOMで!とか、平日にランチしながらミーティングしましょうか、お子様連れてきていただいても大丈夫ですよ!と提案したくなります。リモートワークや子連れミーティングは、母親だけのための手段ではなく、父親のための手段でもあると思いますから。

ここ2年ほどはコロナ禍で、そもそも飲み会や集まりがなくなったのでこのようなモヤモヤを感じることは減っていたのですが、また以前のように集まれるようになる頃には、見かける光景が変わっていればいいなと心から思います。






《コラム執筆者》
Alright Baby 代表 岩城はるみ


高校教諭を7年務め、自身の第2子出産を機に退職。
その後、子育てに関わる事業を立ち上げる。

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