その他おでかけ五條市御所市
2019/08/21 01:00

Vol26.五條酒造「五神」「賀名生」社長 中元英司

祭りごとで、冠婚葬祭で、古来より酒は神と人をつないできた。
その佳きものを五條の地で醸す。

ゆえに酒の名は思いを込めて「五神」とした。
今も昔も五條酒造の変わらぬトップブランドである。

米にこだわり原材料は「佳きもの」を選んできた。水は金剛山の伏流水を蔵内井戸水で使う。

五條酒造は大正13年創業。
「五條市に『五神』のない店はない」と言われるほど、地元の人々に愛された。

ゆえに酒蔵の多くが昭和に桶売り、すなわち大手の酒造メーカーに自蔵の酒を卸して売っていた時代も桶売りには頼らなかった。
つきあいで多少は卸したものの、「五神」で十分造りができた。

桶売りが終わりを迎えるとともに、多くの蔵は転換期を迎え、廃業したり、自社ブランドの酒造りに苦心するも、五條酒造は変わらなかった。すでに時代が求めるものを持っていたから。看板酒の「五神」である。


時代の流れに、蔵の未来を重ねて


「酒を造れば造るだけ儲かった」昭和期から、儲けは造りの技術向上に注ぎ込んだ。
「先代の父の頃に、大規模な設備投資を繰り返し、この蔵の規模でこれほどとは、と見学に来た業者が驚いたほど」と語るのは、現当主、4代目を継ぐ中元英司さん。

それでも前進止めれば後退あるのみ。

自身が蔵に入った4年前から、時代の流れに蔵の未来を重ねるように。
小仕込み用のサーマルタンクを増やし、冷蔵庫を増設。増える吟醸、好まれる生酒に対応。
酒質の向上に磨きをかけた。

新たにサーマルタンクを追加。酒質は磨き続ける。造りは今も昔も但馬流。

「五神」の酒は太い。しっかりした旨口で、但馬流杜氏の造りである。
芳醇な大吟醸も米の旨みがのった純米も、人々の日常を彩る本醸造や上撰も。
この土台は変わらない。

だが変わらねばならぬもの。変わってこそ先に進めるものが確かにある。

昔と今では「絶対に酒が甘くなったように」。

変わらぬ土台をベースにしながら、蔵は未来を拓く。
「日本酒を飲む人自体が減っている今、足元だけを見ていては先に進めない」。

外に目を向け、賞に参加。次々受賞を重ねる。

2〜3年前から賞に参加するようになったのもその一つ。
「父の代で全国新酒鑑評会で金賞を受賞。一度取ればそれでいいとの方針で、以降は参加していませんでした」
 だが賞は脚光を浴びる。多くの人に知られる好機である。

そして受賞ラッシュ。航空会社キャセイパシフィックのワインコンテスト日本酒部門や「全米日本酒歓評会」「全国燗酒コンテスト」「ワイングラスで飲むおいしい日本酒アワード」…参加するたび金賞銀賞、連続受賞を重ねている。

もとより酒に自信はあった。広い世への挑戦は、これからだ。

左から有機米仕込みの特別純米酒、純米吟醸、奈良うるはし酵母の純米酒

旅する五神


販路の拡大にも力を入れる。大阪、東京、一流ホテルやレストランへ。
今や「五神」は旅をする。

海外もそう。だが「今のところは近場のみ」。中国、香港、台湾。蔵の酒がどう扱われるのか。品質は保てるのか。「目の届く範囲」で送り込む。

酒の種類は豊富にある。
有機米仕込みも10年以上前から取り組んでいる。契約農家が栽培した有機米を使った特別純米酒「五神」は定番ロングセラーである。

清酒発祥の地、正暦寺で分離された「奈良うるはし酵母」の酒は海外にも人気。蔵の造りとも合うようだ。

さらに地元との取り組みやPBに新たな活路も見出している。
その一つが五條の米、そして醸造、販売も五條と、“オール五條”の「ゆめ野山」。地元地酒店「うのかわ酒店」が扱うPBである。
他にも野迫川村の米、十津川村の米、で仕込み、それぞれ地元で愛される酒も造る。
「これぞ地酒」。
蔵の酒は、昔から五條で、そして十津川、野迫川に運ばれて愛され飲まれてきたのである。

中元英司さん。敷地内の珍しい酒樽を使った茶室「壺中庵」の前で。蔵見学の際にこちらも見学可。

「五神」を越えて、先へ


そして3年前から新たなブランド酒をリリースした。
これは蔵の先への一つの答え。
無ろ過生原酒のシリーズ「賀名生」である。

新たなブランド酒、無ろ過生原酒シリーズ「賀名生」を手に。

純米 山田錦
純米吟醸  八反錦
純米大吟醸  露葉風
純米大吟醸  吟のさと

奈良産米の露葉風とキヌヒカリ、そして山田錦に八反錦と米を変え、純米、純米吟醸、純米大吟醸と磨きを変えて4種出す。
たとえば「純米 山田錦」は兵庫県産山田錦の精米80%を日本酒度プラス12の辛口で米の旨みたっぷりにキリリと仕上げた。

酒の名「賀名生」は五條の地名。南北朝時代に南朝が行宮とし、夢がかなう、という願いが込められ叶名生(かなう)と呼ばれ、願い叶った喜びを込めて賀名生(あのう)とされたところ。
「お好みを選び、歴史のロマンを酒に重ねて楽しんでいただけたら」。

「五神」を越えて、先へ。
そこには蔵の夢も重なっている。

五條酒造株式会社

  • 住所/奈良県五條市今井1-1-31
  • 電話/0747-22-2079
  • 営業時間/
  • 定休日/無
  • 駐車場/なし
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