2026/02/02 12:00
ぱーぷる編集部 松石
【上方講談×『奈良墨(ならすみ)』】 伝統文化の奥深い魅力を国内外に発信 する『瑚都寧楽(ことなら)プロジェクト』始動
日本国内では年々外国人観光客が増加し、奈良県内でも寺社仏閣や町屋近辺を中心として多くの外国人観光客の姿が見られるようになった。
特筆すべきは、食や買い物といったいわゆる観光旅行の王道的な楽しみ方以外にも、日本独自の文化や伝統に対する興味が観光動機となっているという統計データも発表されている点である。
しかしながら、日本の特に奥深い場所にルーツを持つ地域特有の文化や伝統といったものに外国人観光客が触れ、そこに潜む歴史の息づかいを感じることができる機会というのはまだまだ少ないのではないだろうか。
そんな中、日本の芸能の中でも能(のう)に次いで歴史が深いといわれる“講談”と、長い歴史の中で日本の文化や生活を支え並走してきた奈良墨(ならすみ)を掛け合わせた文化発信プロジェクト『瑚都寧楽(ことなら)プロジェクト』が動き出している。
日本文化の息吹を現代につなぐ『奈良墨』とは
墨によって描かれるモノトーンの世界。
そこに描かれる濃淡と黒白(こくびゃく)には、筆を執る人間の精神が表現される。
そんな墨の国内シェアの9割以上を占め、古くは政(まつりごと)、宗教、そして人々の生活に密接に関わってきたのが、奈良県奈良市で生産される奈良墨(ならすみ)だ。
植物性の油を燃やして採った煤(すす)を原料とし、膠(にかわ)や香料と混ぜて作られる日本の伝統的なこの墨は、粒子が細かく、その深みのある色合いと光沢、繊細な墨色の変化から、書道や日本画に不可欠なものとなっている。
現在は県内10社(※奈良製墨組合による)が古くからの製法を受け継ぎ、1400年以上の歴史と伝統を守り続けている。
今回の『瑚都寧楽プロジェクト』では、講談師の旭堂南龍さんによる奈良墨の歴史や特徴などをテーマとした講談のほか、奈良墨を用いた書道の実演動画が、奈良町にある大正6年建築の町家「にぎわいの家」で収録された。
奈良から海外に、そして海外から奈良に
そんな『瑚都寧楽プロジェクト』の発足の背景にはどのような想いがあるのか、さっそく『瑚都寧楽プロジェクト』実行委員会の代表で講談師の旭堂南龍さんと、同プロジェクトのプロデューサー、今村大輔さんにお話を伺った。
「書という文化に込められた祈りや精神性といったものを通じて、訪日観光客に日本文化の本質に触れてもらいたい」と語る今村さん。
今回のプロジェクトをきっかけとして、より深く日本の文化・奈良の文化に対する興味を喚起し、一時的な観光ニーズだけではない持続的なファンづくりを目指していく考えだ。
このプロジェクトの目標は潜在的訪日観光客に対する情報発信だけにとどまらない。
「当たり前に感じていることが実は当たり前じゃないんです」。
普段何の気なしに触れている物や日常の習慣など、当人たちにとっては当たり前のコトやモノでも、一歩外の世界から眺めた時に新しい価値が生まれることが有ると語る今村さん。
海外へと日本文化を発信し、関心・評価を得ることで、その評価・関心を日本国内に住まう人々にも逆輸入し、地域における観光コンテンツの造成を促進する狙いもあるという。
受け継がれてきた芸能に宿る日本の精神を感じて
「講談はおよそ550年以上前から伝承されてきた能の次に古い日本の伝承芸なんです」。
その息づかいの中に、時代を超えて受け継がれてきた伝承芸に宿る日本人の魂を感じてもらいたいと語る講談師の旭堂南龍さん。
永い時間をそれぞれの時代の先達によって伝承されてきた講談という話芸。
取材時には動画収録も行なわれており、実際に旭堂南龍さんの講談を拝見・拝聴させていただいたのだが、講談独特のトーンと緩急で表現される世界観は、永い奈良墨の歴史に重厚なストーリー性を想起させる。
語り部・旭堂南龍さんによるストーリーテリングの妙は、言語や文化が違えどその背景にある人々の祈りや想い、時を超えた美学といったものを、国境を越え広く共感の波を起こしていくのではないかと思わせるに十分なものであった。
『ジャパンエキスポタイランド2026(JAPAN EXPO THAILAND 2026)』に出展
今年2026年2月6日(金)から8日(日)までの3日間、タイ・バンコクで開催される『ジャパンエキスポタイランド2026(JAPAN EXPO THAILAND 2026)』に出展予定だという『瑚都寧楽プロジェクト』。
現地では同プロジェクトのステッカーが配布され、ステッカーに印刷されたQRコードから、今回撮影される動画のリンクを入手できるという仕組みだ。
奈良墨と語り部文化(講談)をきっかけに日本文化に興味を持った訪日観光客が、日本に住まう人々に向けてその文化の希少性を改めて伝える。
そんな国境を越えた伝統文化の再評価が生み出す人・経済・文化の好循環に期待していきたい。
