2018/07/11 01:00
vol7.『Vanda melilie』
ここでしか受け取れない音がある
血の通った歌が手に届く。温もりもそのままに、客の1人1人に、じかに手渡されていく。
アーティストは客を見て歌うし、客もそれを受け止める。繊細なやりとりが熱を帯び、放出されたエネルギーがライブ空間をつくり上げる。
ここではアーティストと客の垣根は無いようだ。良いライブにするのか、最高の夜にしたいのか。それは客にも委ねられる。他人事ではいられない親密さ。音楽を抱いて抱かれて、どっぷりひたる感覚がある。
客は20人から25人も入ればいっぱいになる。「この大きさがちょうどいい」。オーナーの重坂匡子さんは言う。「近くて、濃い。ここでしか受け取れない音があります」。
ライブはアコースティックが中心でジャンルはソウルにブルース、フォークやジャズにロックなど。弾き語りの夜が多い。
アーティストは「Vanda セレクト。私たちが聴きたい一流の音を出す人たち。大きなホールを満杯にするメジャーどころではないが、絶品の音楽を聴かせてくれる」。
北海道発のデュオ、 Mojo houseのライブ
私たちとはここに集う人すべて。店と客との距離も近くて濃くて、アーティストのブッキングには客からの声も上がる。
取材日の夜のライブも客が大ファンだという北海道発のデュオ、Mojo houseが奈良初登場。
「うちは奈良初、結構多いんですよ。7月5日の鈴木常吉さんもそう」。小林薫主演のTVドラマ「深夜食堂」テーマ曲で話題のアコーディオン弾き語り。
ブッキングは縁だと言いつつ「全国を行脚するツアーミュージシャンが気持ちよく歌える奈良のハコになればいい」。
マンスリーで歌う奈良のシンガーソングライター、村瀬真弓
もちろん奈良のアーティストも歌う。2018年1月から12ヶ月連続ミニワンマンライブを開くシンガーソングライター、村瀬真弓もその1人。
「うちはアーティストにチケットノルマや出演費用など負担を求めません。若いアーティストがマンスリーをするには良いハコでしょう。ここから羽ばたく姿が見たいと応援しています」
オーナーの重坂匡子さん「見るのも演るのも歌うのも、飲むのもあり。音楽にどっぷり浸りたい人のハコです」
重坂さんがVanda melilieを開いて約4年が過ぎた。
音楽不況からライブバー、ライブハウスの経営は大変にシビアな時代。通っていた倶楽部Zが閉店すると知り、名乗りを上げた。
「周囲からは無理だ、無茶だ、と猛反発で」と笑う。なにしろ「ロック好きのただの専業主婦」。だが生の音を身近に浴びるライブバーの素晴らしさは全身で知っていた。
この4年でライブスケジュールに工夫を凝らし、Vanda の固定ファンを増やしてきた。
アーティストライブはもちろん、聴くのも好きだが演るのも好きな人たちの場を設け、ブッキングライブやブルースセッションにジャズセッション、弾き語りアマチュアライブは「男の弾き語り」の日、「女の弾き語り」の日と題して開催。バンドパーティなどハコ貸しも行う。
「お酒も豊富。いろいろに楽しんで」。
音楽にどっぷり浸るもよし。音と酒に酔うのもいいし、歌いたければ歌えばいい。音楽を楽しむ人すべてのハコであればと願う。
Vanda melilie ヴァンダメリリー
- 住所/奈良県奈良市大宮町2-5-27 ジョイパレス1F
- 電話/0742-35-2818
- 営業時間/
- 定休日/無
- 駐車場/無(近隣に有料Pあり)