2018/04/11 01:00
vol9.古民家空間でアートと向き合う『画廊飛鳥』
引き戸を開けて、本日の癒しはアート
今日は明日香へ行く。おだやかな里景色に歴史深い社寺、時の積もりも美しく、心がほっこり癒される土地である。
だが本日の癒しはアート。目当ては画廊飛鳥である。
築160年の格子戸が美しい古民家の引き戸をガラガラと開ける。ほの暗い土間から、趣のある和の空間が広がる。黒々した梁に凛と白い土壁が、ここでいろんなアートを受け入れてきた。
格子戸から漏れる光を受けて、ガラスの器がいく通りもの表情を見せる。ここでは陶器もすっかりと場になじむようだ。
白壁にかかる絵画作品を見て回る。
いわゆる8畳6畳6畳4畳半の4間取りの襖を払った広々とした空間で、時を忘れてアートと向き合う。
オーナーの喜多龍之助さんに話を聞いた。
父が書家。母も芸術一家の血筋。幼い頃から芸術家たちに囲まれて育つ。
普通の会社でサラリーマンとなるも、吉野の山中にある実家アトリエでは、芸術家や芸術家の卵が「どんちゃん騒ぎ」。「平日は数字に追われて、週末は浮世離れした彼らと遊んで10数年」。
画廊飛鳥をオープンしたのは今から12年前、41歳のとき。
両親の介護が転機となった。美しい吉野の山中から、両親とともに、美しい明日香ヘ降りた。
老境を見守った作家の作品を預かる。それも1人ではない。そんな星のもとに生まれたか。とことん面倒見がよい人である。
芸術家たちのために、純粋な画廊をしよう
芸術家たちの声が響く。「奈良には画廊文化がない」。
ともに多くの時を過ごした彼らの願いは身に沁みている。
「だからこそ、作品だけの純粋な画廊をしようと思いました」。
彼らは道楽や趣味のために芸術家をしているのではない。
「芸術家は変人やと思う。だって、これほど割の合わない商売はありません」。
命を削り、渾身込める。労は多いが、実入りは少ない。
ならば、自身が彼らの作品を売ろう。その場となろう。
ただし売り込みはしない。作品は思いの通じる人のもとへ自ずと渡るものだから。
ギャラリー空間から庭に通じる憩いの場。作家や客と歓談する。
画廊飛鳥はイベントが多い。
明日香村のガラス作家がつながる「明日香のどこかでガラス展」は7回を過ぎた。演劇、音楽会なども開く。
展覧会とのコラボも多い。アートは本来自由なもの。この空間を生かしてくれるのなら、受け入れようと思う。
庭に面した縁側も展示空間。古民家の風情ある“つし2階”は絵画教室に。カフェにと言われるが、そのつもりはない。「アートを見に、ここに来てほしいから」。
ただし「介護から解き放たれて、今、ちょっと燃え尽き中」と笑う。
いやいや、一息ついたその後、肩の力が抜けてもっと自由になった喜多さんの、画廊飛鳥のこれからは、さらに面白くなりそうだ。
画廊飛鳥
- 住所/高市郡明日香村平田260
- 電話/0744-54-5533
- 営業時間/11:00~17:00*展覧会ごとに異なる
- 定休日/不定休
- 駐車場/有