ライフ生活
2017/10/05 21:27

vol4.“いのちめぐる畑”たるたる農園 樽井 一樹さん

vol4.“いのちめぐる畑”たるたる農園 樽井 一樹さん

30歳のときに明日香の地で新規就農した樽井 一樹さん。

そこから始まった樽井さんの農業ライフは、まさに生きることをダイレクトに感じてきた8年間だったと言う。自然農法は、樽井さんの生き様そのもの。そこから出会ったビオマルシェでの人のつながり。そんな明日香の農業を変革させる第一人者の畑に入らせてもらった。

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今から8年と半年前に明日香村へやってきた樽井さん。当時は、大阪のベンチャー企業で働くサラリーマンだった。病院の立ち上げに携わるコンサルティングをしていた。仕事上、体の不自由な人や終末期を迎える人の自宅へも行くことが多かったと言う。

「日常的に死と触れ合う機会が多かったから、必然的に生のことについても考えていた」と当時のことをふり返る樽井さん。かたや、プライベートで「ガイアシンフォニー(地球交響曲)」という映画に出会う。星野道夫、佐藤初女、ダライ・ラマ、ジェリーロペスなど、いわゆる世間の常識を超越したところで活躍している人たちのドキュメンタリー映画だ。彼・彼女らの共通していることは「すべての命の息遣いをダイレクトに感じながら生きている人」であること。

そこから、樽井さんの生に対する想いはさらに強くなっていく。「自分の人生を振り返った時に、もっと命の輝きを実感しながら生きたいと思った。そんな時、親父が急死した。仕事場では常に死と触れ合っていたものの、身近な人がいなくなるということを初めて知り、気づかされた。自分もいつかは死ぬんだと。自分の人生を生きねばと」。

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自分にできることは何かと考えた結果、農業に行きつく。そこから、愛媛で2年前に就農した友人の元へ行き、1週間泊まり込みで畑仕事を学んだ。それが自然農法との初めての出会いだった。愛媛の友人の農業は、「自然農」の生みの親である川口由一さんから学んだ自然農のやり方、つまり「耕さない農業」。いろんな所で畑の勉強をしながら、平行して自分の畑ができる場所を探す。

ある時、「ガイアシンフォニー」の映画に誘われて、その映画に縁とゆかりのある『天河大弁財天社』へひとりで行き、その帰りに明日香村の直売所へ。その瞬間、「ここだ」と思ったのだそう。1カ月後には農地も決まり、明日香の地へやってきた。ここから、樽井さんの農業ライフがスタートする。

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3年間は川口さんの「耕さない自然農」を忠実に守りながら、農業に励んだ。だけど、やっぱりうまくできない。「こうしなあかん」という縛りがすごく窮屈で苦しかったと言う。収量ももちろん上がらなければ、食べていくこともままならない状況に陥った。

これではダメだと思い、「肥料を入れて育てる」いわゆる有機農業に転換するものの樽井さんが目指す野菜ではなかった。そんな違和感を抱きながら、3年。

そこから徐々に、「耕すけれど、肥料を入れない」自然栽培・無肥料の農業に切り替えていく。そして、ここ2年は完全無肥料に切り替えることに成功。「ここにきてようやく自分の中で確信的なものに変わった。野菜のでき方も、できる量も一番順調に育ってきている。僕はもう確信している。深めていけば、農薬と化学肥料を使った慣行栽培を上回る農業の可能性がここにはあると」。

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樽井さんを語る上で、忘れてはならないもうひとつのキーワードが「明日香ビオマルシェ」だ。明日香村にある『あすか癒俚の里 森羅塾‎』の高橋夫妻から声があがり、デイリー使いできるオーガニックなマルシェをしようと始まったのがきっかけ。

意識の高い主婦や料理人をターゲットに開催を毎週金曜日に設定。実際に始めてみると、近鉄大和八木駅近くにある『中華バル ミツカン』のオーナー田村さんが来てくれたり、その横のつながりでたくさんの料理人が訪れるようになった。

一方で忘れてはならない、ビオマルコちゃんの存在。ビオマルシェがきっかけで集まるママさんコミュニティだ。みんなマルシェの日を「ハッピーフライデー」と名付け、毎週マルシェの日に集まっては野菜を買い、団らんしながら、子育ての悩みなどを共有している。

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今後は、専業は難しくても兼業的に農業をやっていきたい人に対して、お金ではなく労働力の交換をしながら、明日香の農業を活性化していきたいと語る。樽井さんのところで週に1~2度働きながら農業について学び、その浮いた労力を樽井さんが研修費として、新規就農する畑に行ってお手伝いをするというもの。そしていつしか、地域全体で明日香の農業を盛り上げたいと語ってくれた。

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最後に…。樽井さんの畑に入って感じたことを少しだけ。樽井さんの野菜はすごく元気。ものすごい生命力を感じる。それはきっと、自然農というあり方に答えがあるのだろう。

種が持つ力を信じて、最大限その力を引き出せるよう、樽井さんは少しだけ手を貸す。そんな野菜と樽井さんの素敵な関係。すべての生き物を敵としない、命の輝きを実感できる畑がそこにあった。

たるたる農園

  • 住所/奈良県高市郡明日香村越99-3
  • 電話/0744-35-1311
  • 営業時間/
  • 定休日/無
  • 駐車場/なし
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