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大和蔵元探訪酒めぐり

Vol21.上田酒造「嬉長」取締役 上田恭子

顧客直売でオーガニック日本酒を醸す蔵元インタビュー

  • 情報掲載日:2019.04.24
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

室町創業の老舗の一大決心
お客さんと直接つながろう

「お客さんと直接つながるしかない」。

系譜は室町時代に遡るという老舗蔵、上田酒造が一大決心をしたのは今から約20年前のこと。酒屋の日本酒販売量がどんどん落ちて、低迷期に入ったころである。酒を守り、蔵を守るにはどうすればいいか。

売ってもらうのでなく、自ら売ろう。直通すればその分、コストも下げられる。原価の高い高品質の酒を手ごろな価格で提供できる。

まずは蔵に来られたお客さんに我が酒のファンになってもらおう。
買ってくださったお客さんとはその後もしっかりつながって、毎年の顧客になってもらおう。

蔵の仕込み水は生駒山から矢田丘陵、竜田川の地下水脈。井戸から汲み上げた柔らかな軟水で醸す酒はまろやかだ。造りの采配は後に「現代の名工」、「黄綬褒章」を受章する山根貞雄杜氏がふるっていた。

「この酒ならそれができる」。酒への誇りが後押しに。卸しも酒屋も通さない。覚悟を決めて販売スタイルを直販に絞り込む。
そしてその決意は、20年後の今日も蔵の指針となっている。

取締役・上田恭子さん、37歳。大学卒業後、蔵の経営に携わってきた。
取締役・上田恭子さん、37歳。大学卒業後、蔵の経営に携わってきた。

そして今。
年間1400石を醸すが、ほぼすべて、99%を直販で売り切る。
一般の客と全国の居酒屋さんに、つながり続けて今がある。
このスタイルはこの蔵に合うようだ。
「お客さんの声をよく聞くこと。好みを把握し、うちの酒をよく知ってもらうこと」。それが成功の理由だと語るのは現当主18代目上田宗平さんの娘、次代を継ぐ上田恭子さん。

今日、搾った酒
ピチピチほかほかで届きます

清酒造りの起源となる、室町時代の醸造法を復活させた「菩提酛」を造る蔵の1つである。大神神社のササユリから採った「山乃かみ酵母」の酒も手がける。
そのほか実に多種の酒を彩り豊かに造る。
それも「こんな酒が欲しい」というお客さんのリクエストに応え続けた結果であり、酒屋も兼ねたかのような(ただし取り扱いは上田酒造のみ!)この蔵の特色だ。
看板酒を「嬉長」、「生長」とし、純米も純米大吟醸、本醸造に普通酒も。造りも搾りも様々に。無ろ過の生、にごりや夏の凍結酒「味蔵冷酒(みぞれざけ)」。居酒屋に人気の紙パックや料理酒もあれば、黒麹仕込み芋焼酎や和三盆の梅酒もある。よりどりみどりで客は好みを注文すればいい。

パック酒は居酒屋に。ノンアル甘酒も。酒屋のように多種多様の酒を売る。蔵ではちょうど酒粕が剥がされていた。
パック酒は居酒屋に。ノンアル甘酒も。酒屋のように多種多様の酒を売る。蔵ではちょうど酒粕が剥がされていた。

春日奥山で育てた伊勢の神米で
完全有機の純米吟醸酒「嬉長」

始まりは春日奥山で完全有機栽培(JAS法対応)で米を造る生産者と出会い、米にかける美学に共感したことから始まった。
自家精製の有機肥料を施し、世界遺産の春日原生林からの地下水と清冽な谷水で栽培する米は、伊勢神宮の神田から台風の後にあらわれた伝説的な御神米「イセヒカリ」。
「米への思いは酒への思い。うまい米はうまい酒となるだろう」。

なにしろ春日の水で栽培された伊勢の神米。仕込み水は霊山・生駒山の水脈から。華やかな吟醸香を持ち、神々しさまでまとったような美酒である。
ただし、大変手間のかかる酒である。
「有機栽培の手間はもちろん、出来上がった米をトラックで取りに行き、それから岡山へ運びます」。日本中でオーガニック専門の精米所を探して一番近かったのが岡山だった。
生産数に限りもあれば精米数にも限りがありタンク一本、一升瓶で700本から800本を仕込むのが限度。毎回居酒屋を中心に早くに完売してしまうのも仕方なし。720ミリリットル4号瓶で税込1,560円の価格も「直販だからできる価格です。限定発売となりますので注文はお早めに」。

左がオーガニック純米吟醸。右は無ろ過純米生原酒。「値段以上の酒質」を誇る。
左がオーガニック純米吟醸。右は無ろ過純米生原酒。「値段以上の酒質」を誇る。

神といえば創業400有余年の歴史を重ね、神社仏閣との付き合いも古い。奈良市の氷室神社の御神酒も醸し、地元生駒の往馬大社の御神酒も醸す御神酒酒屋。宝山寺が置く酒も上田の酒。クオリティの高い酒を醸し続けてきたからこその自負がある。

社員数は現在30人。専属の蔵人は4人。高齢で引退した山根杜氏の弟子が後を継ぐ。師匠と同じ但馬杜氏で正社員ながら但馬杜氏の組合に籍を残す。賞も受賞する気鋭の40代は、未来の「現代の名工」を目指すという。


かつて使われていた井戸のそばで恭子さんと18代目当主、上田宗平さん。今は蔵の横で60メートル掘った井戸水を使う。
かつて使われていた井戸のそばで恭子さんと18代目当主、上田宗平さん。今は蔵の横で60メートル掘った井戸水を使う。

これからの蔵の未来も「直販でありたい」と語る恭子さん。大学卒業後、10年経営に携わり、直接つながるありがたさは身にしみている。
うちの酒をよく知る客がいる。好きだからと毎回求める客がいる。
その人たちの笑顔を思って醸せる蔵は幸せだ。
「一番大事なのは酒質」とも。「これからも値段以上の品質を誇りたい。
それが上田の酒ですから」。

Information

上田酒造株式会社
住所
奈良県生駒市壱分町866-1
電話番号
0743-77-8122
リンク
上田酒造

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