2018/02/07 01:00
vol7.奈良のアートの仕掛け人『Gallery OUT of PLACE』野村ヨシノリさん<後編>〜路地裏ギャラリー・東京ギャラリー〜
路地に入る。ここからアート鑑賞はすでに始まっている。展示空間ホワイトキューブに続く非日常の世界へ。心の中の新しい引き出しを開ける時間が始まる。
奈良駅近くのひっそり静まる路地裏にGallery OUT of PLACE を開いたのは2005年のこと。
「フランスでもギャラリーは路地裏や中庭に面した奥まった建物にあることが多いんですよ」。作品をじっくり見てもらうのに、うってつけの場所である。
当初は写真が主体で、フランスから知己の写真家を招いたり、ドイツの写真家がここに住み込むアーティスト・イン・レジデンスのようなことも行った。
Gallery OUT of PLACE に滞在したドイツ人作家ジュリア・バイエルが、帰国後ドイツで発行した写真集「銭湯」。
やがて地元作家との交流の中で、見込んだ作家に「1年後」と声をかけ、1年かけて徐々に作品を仕上げてもらい、個展を開くスタイルに変わっていった。ギャラリーも奈良の空気を吸い込んで、奈良の地に根が生えた。
2016年に開いた安藤栄作の個展『 約束の船・2016』より
2017年に開いた鷲津民子の個展『− through '17 − 飛ぶ家』より
一方、東京でギャラリーを開いて約10年になる。これもアートイベントと同じこと。奈良のギャラリーに人を呼ぶには、「たくさんの人に見てもらう場所にショールームを置こう」という発想から。「じっとしていては何も起こらない」のである。
昨年末から今年の1月末までは吉野生まれの作家、赤井正人『ことよのほら』を開催した
東京と奈良で展覧会を同時開催し、奈良のアートを東京へ。東京のアートを奈良へ。
「野菜に例えれば、味が濃くて珍しい大和野菜なら、東京の人は手にとって見てくれる。逆に東京の最先端を奈良の人に見てもらえる」。
東京のギャラリーがあるのは、廃校を利用したアートセンター「アーツ千代田 3331」。アートに関わる様々な団体が入り、多彩な展覧会、イベントが行われ、東京の今、日本の今が発信されている。
実はこの春あたりから奈良のギャラリーはいったん休廊し、野村さんは軸足を東京へ移す。東京のスタッフが不在となるためだ。ただし、いっときのこと。2019年の秋頃には再開する予定。
終(つい)のすみかは奈良しかない。フランス時代に「君は日本を代表するような深い文化の地から来ているんだね」と言われたことが忘れられない。
近ごろはゲニウス・ロキという言葉に惹かれている。ラテン語で土地の守護精霊、地霊という意味。
「奈良の地霊を呼び覚ますような、そんな場所になりたいですね」。ギャラリーの今後を問うとそう返す。
置き土産もちゃんとある。休廊の間は「お留守番プロジェクト」が始動する。関連作家が展覧会やイベントを自主企画で開催していくというもの。こちらにも注目したい。
そして東京で得た大きなエネルギーはまた、奈良に持ち帰られることだろう。そのときに何が始まるか。地霊はいかに呼び覚まされるのか。今から楽しみにその日を待ちたい。
今後の展覧会予定
「高橋 功樹 Koju Takahashi works」
2018年2月16日(金)〜3月25日(日)
前期 2月16日(金)- 3月4日(日)
後期 3月15日(木)- 3月25日(日)
臨時休廊 3月5日~3月14日 *3月15日より再開
Gallery OUT of PLACE
- 住所/奈良県奈良市今辻子町32-2
- 電話/0742-26-1001
- 営業時間/12:00~19:00
- 定休日/月・火・水曜
- 駐車場/無し(周辺に有料駐車場あり)