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大和蔵元探訪酒めぐり

Vol17.倉本酒造「倉本」「つげのひむろ」蔵元杜氏 倉本隆司

近頃ぐんと評価を上げる「倉本」蔵元インタビュー

  • 情報掲載日:2018.11.28
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

蔵への思い止まず、息子、帰還

近頃ぐんと評価を上げる蔵がある。

「3年前に蔵に戻った息子さんが頑張ってはる」との声が重なる。

蔵の前の自家田で。倉本隆司さん
蔵の前の自家田で。倉本隆司さん

自家田で醸す。ドメーヌ家族蔵

石数70石と、こじんまりした日本酒版ドメーヌ蔵。
蔵の前の自家田で、仕込み水と同じ山水を使い、純米銘柄は全量この田んぼの酒米で醸す。
米は愛知の酒造好適米「夢山水」。
奈良ではおそらくここだけか。中山間地に適する米で、山田錦の系統にあり酒質もいい。
酒造りは米作りから。「うちの蔵に合う」と決めて、父の代から10年。この地と蔵になじんだ米である。
「田植えと稲刈りは機械が無いので地元農家に手伝ってもらいつつ、栽培管理は自分たちで」と語るのは倉本隆司さん、37歳。
6代目当主の父から引き継ぎ、今は造りのほぼ全てをその手にする。手伝いは父と母の家族のみ。

創業明治4年。蔵があるのは標高500mとなる大和高原の山あいで、厳しい寒さを活かした造りをする
創業明治4年。蔵があるのは標高500mとなる大和高原の山あいで、厳しい寒さを活かした造りをする

蔵は終わるはずであった。

東京農大卒。一切の迷いもなく、蔵を継ぐ思いで入学した。
ところが蔵の経営は苦しく、「もう戻ってこなくていい」と父にまさかの引導を渡される。
酒を思って酸、菌を学ぶも、その学びは酒にならず。
蔵は父の代で終わりと決まり、大手乳業メーカーに就職。11 年、牛乳と乳酸菌と向き合った。

しかし、思いはやまなかった。
どうしても自分は蔵が好きなのだ。
6代続いた蔵である。やがて7代目を継ぐ自分がすべてを賭けて、それで終わりならそこまでだ。
2015年、父を説得して蔵に戻った。

酒造りはほぼ1人で行う
酒造りはほぼ1人で行う

酒造りは「まだ未熟」と謙遜する。
まだまだ、ずっと上に行く思いがあるからだ。
この3年、蔵の立て直しに邁進した。

県の補助金を得て設備を入れ替え、洗米機に甑、冷蔵庫も入れた。
大手乳業メーカーで厳正な衛生管理が身についている。
蔵の清掃を徹底し、目指す酒質がつくれる環境へ「できることは次々と」。

ただし「金はありません」と爽やかに笑う。
なければ作ればいいのだと。
昨年はなんと蔵の配管まで自分で溶接して作り上げた。
さらに三重の蔵と共同で瓶燗機まで作ってしまった。
「ところが移転した蔵からいただいて」。お手製は三重に置いてある。

実は麹室も廃業した別の蔵から譲られたもの。
蔵を守る。蔵を継ぐ。その重さは十分に身にしみている。もらった縁とともに、奈良の酒造りの文化を継承していこうと思う。

蔵の看板酒は純米酒「倉本」である。
ふくよかな酸と甘みのバランスが良く、しっかりと米の旨味がのった酒である。
磨きは50%と純米大吟醸並みに磨くが表記は純米。
50%、60%に磨こうがすべて純米としか名乗らない。

「父の方針。いちいち言わんでも、うまい純米、うまいアル添、それでいい」。
昨年までは蔵に冷蔵庫が無かったため、火入れ酒のみの仕込みであったが、これからは季節限定で生も出す。
「フレッシュな倉本の別の顔も楽しんでほしい」。
新しい倉本へ。挑戦は続けるつもりだ。

もう1本を挙げれば、それはやっぱり菩提もと「つげのひむろ」。
清酒発祥の地、奈良の蔵ならではの伝統ある菩提もと仕込みの酒である。
「乳酸菌が好きなので」とにっこり。
乳酸発酵をさせる菩提もと。育てるのはお手のものだ。



蔵にはカッコいいアート稲荷が鎮座。ほっぺふき子(彫刻)×silsil(彩色)が、「つげのひむろ」から得たインスピレーションで創作し、日韓交流展「ASIA AND RICE 2017」にも出展された
蔵にはカッコいいアート稲荷が鎮座。ほっぺふき子(彫刻)×silsil(彩色)が、「つげのひむろ」から得たインスピレーションで創作し、日韓交流展「ASIA AND RICE 2017」にも出展された
向かい正面には大神神社の神棚。今と伝統がここでも向き合い、蔵の造りを見守っていた
向かい正面には大神神社の神棚。今と伝統がここでも向き合い、蔵の造りを見守っていた

思いはずっと先にある。

夢山水の純米酒に夢をのせるが、「アル添」「普通酒」を否定するつもりは微塵もない。
「おいしい普通酒をつくればいい」。それだけを思う。
何より父のその前から、普通酒「金獄」は地元に愛され続けてきた蔵の大事な酒である。
「酔っ払うだけの酒は造らない」。思いを込める。人を幸せに酔わせる酒を作りたい。
「ただ増量するアル添でなく、燗酒に華やかさを与える酒」。
一度、純米ブームで沸き返った後、アル添、燗酒も酒呑みたちは今静かに振り返る。決しておろそかにはしない。今も造りは70%が普通酒で30%が純米酒。

蔵のこだわり、そして先をと問えば、「まだまだ」と。
「今はまだ一生懸命、いろんなことを吸収中の修行の身」と謙遜する。
この3年、全国数多くの酒蔵を、系統、カラーにこだわらず研修に訪れた。
その数30蔵ほど。それぞれの蔵が極めた「こだわり」を学び、蔵に持ち帰っては酒質を上げてきた。

その先に見出すものは、まだこれから。
だからこそ、この蔵の先から目が離せない。
どの方向に向かうのか。次期当主の若い目と手が決めたとき、倉本はまた一段と、評価を上げることだろう。

Information

倉本酒造
住所
奈良県奈良市都祁吐山町2501
電話番号
0743-82-0008
リンク
倉本酒造

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