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大和蔵元探訪酒めぐり

Vol16.西内酒造「大名庄屋酒」「貴醸酒」「累醸酒」蔵元杜氏 西内康雄・隆允

父子が醸す3つの看板酒で光る蔵。「大名庄屋酒」「貴醸酒」「累醸酒」蔵元インタビュー

  • 情報掲載日:2018.10.24
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

この蔵には3つの看板酒がある。

その一つが大名庄屋酒。なめらかでコクがある上等のにごり酒。
なにしろ大名や庄屋が飲むにごりなら、この酒に違いないと名付けた自慢の酒である。
そしてスサノオ神話もまとった貴醸酒と、
その貴醸酒で仕込んだ栄えある古酒の累醸酒。
世界最大規模のワインコンテストIWCで「金メダル」のその上の「トロフィー」を受賞した銘酒である。

談山の地に嘉永年間より建つ。風情ある蔵はNHKドラマ「ダイヤモンドの恋」の舞台にも。前の街道は芭蕉や本居宣長、与謝野晶子も通ったという。
談山の地に嘉永年間より建つ。風情ある蔵はNHKドラマ「ダイヤモンドの恋」の舞台にも。前の街道は芭蕉や本居宣長、与謝野晶子も通ったという。

僧坊酒のふるさと、談山の名水で醸す

談山の地はかつて、菩提酛で名高い正暦寺と並び称される僧坊酒造りの地であったという。
廃仏毀釈で資料は灰と消えたが、かつて妙楽寺という寺があり、そこで醸した多武峰(とうのみね)酒は評判の美酒であったとか。
また、談山神社の東門近くには、今も酒造りのあとが残り、酒造りに適したうまい水が湧いていたという。

銘酒に名水あり。
西内酒造の仕込み水は深い歴史の流れを汲む談山の名水が使われている。

「全ての酒を井戸水で。200キロか、せいぜい800キロまでの小仕込みで丁寧に醸しています。100石ばかりの小さな蔵ならではのぜいたくです」と語るのは父の康雄さんと蔵を守る西内隆允さん。

ちなみに蔵を訪れるとこの水を飲ませてもらうことができる。酒をうまくする、本当においしい水である。

西内隆允さん。大名庄屋酒のラベルにもなった襖絵の前で。この酒は大和の一番米、早稲のキヌヒカリで仕込む。
西内隆允さん。大名庄屋酒のラベルにもなった襖絵の前で。この酒は大和の一番米、早稲のキヌヒカリで仕込む。

イケる“男前”麹が名演!まろやかな大名庄屋酒

さて、一の看板酒。
にごりは味も香りも強すぎて、苦手なのだという友も、この酒なら、とグイグイ。「ちょっと危険なほどイケてしまうにごり」と評する。
酸味も甘みもほどよく、それでいて、にごりならではのコクがある。

まろやかさの理由を蔵元に問うと「酵母」と返す。
「酒造りは一つの舞台。主役は酵母菌で脇役は麹。舞台道具は米と水」だと考える。そして大名庄屋酒の主役は、まろやかな男前麹が名演を果たすという。

「協会酵母ではなく、うちのにごりに合う独特の酵母を使っています」。

自動圧搾機は用いずに、細やかなステンレス網で丁寧に濾す。
大名や庄屋が飲むように、きれいに濾した“上等のにごり”であり、それはふだんのごはんはもちろん、上等の料理にもまったりと合うのである。

酒とも食ともきちんと向き合う大名や庄屋の口に合うように。

酒母がふつふつと沸き始め“主役”の酵母を育み、良い香りを放っていた。
酒母がふつふつと沸き始め“主役”の酵母を育み、良い香りを放っていた。

アイスワインや貴腐ワインのように
古代回帰の貴醸酒と累醸酒

次の看板、貴醸酒は、酒で酒を醸した酒。仕込み水の代わりに酒を使った、とろりと甘い3年もの。アイスワインや貴腐ワインのようだとも称される、甘口日本酒のトップ酒。
もとは海外からの国賓をもてなすために今から約45年前、国税庁醸造試験所(現・酒類総合研究所)が手を挙げた10蔵余りと醸した酒で、西内酒造もその一つ。
日本の酒の歴史の古くをひもとき、平安時代の古文書『延喜式』にも記される古代のシオリ技法から生まれた復古酒。
なんとスサノオノミコトがヤマタノオロチを成敗する折に造らせた、8度も醸した酒、八塩折之酒(やしおおりのさけ)にも通じる酒という。

まさに原点回帰、古代回帰の酒であり、僧坊酒のふるさと、談山の蔵にふさわしい酒である。

さらに、その貴醸酒を仕込み水にしたのが累醸酒。
いま、蔵が市場に出す累醸酒は13年ものの古酒となる。そしてこの13年ものこそ、世界的なワインコンテストの一つIWC(インターナショナル・ワイン・ チャレンジ)「SAKE部門」古酒の部で昨年、「ゴールドメダル」受賞酒からさらに優れた酒として、栄えある「トロフィー」に輝いた酒である。
ちなみに貴醸酒もまたIWC2017で「シルバーメダル」に輝いている。

世界のワインソムリエはこの酒をどう評したか。
貴醸酒は“レーズンと爽やかなマスカットグレープの秀でた味わい”。
累醸酒は“カラメル、メープルシロップ、キノコの様な深みを持ち、わずかにシガーフレイバー”。

レーズンにキノコ?さて、あなたはどう評するか。
わたしはなるほど、こう評するか、と深くうなづいたのでありました。

ともに深みのある甘さがフレンチやイタリアンの食前酒となるし、フレンチの名店ではフォアグラ料理の後に出すなどデザート酒にもなる。もちろん和食に合わないわけがない。

左から大名庄屋酒、「大和さくらいブランド認定品」でもある貴醸酒と累醸酒。
左から大名庄屋酒、「大和さくらいブランド認定品」でもある貴醸酒と累醸酒。

「うちの酒は試飲してもらわないと分からない」。

逆に言えば試飲すると分かる酒、なのである。
デパートやイベント会場の日本酒試飲フェアなどで、ひときわ目立つし、よく売れる。
似たような酒があまたある中、この酒をくいっと飲んだ客は目を開く。
他蔵がお金を払って出展するイベントやプレミアカタログに「うちは無料でいいから出てくださいと頼まれます」。


古い蔵である。天井高くに昔に使われた阿弥陀車(あみだぐるま)が残る。格子窓があるのは蔵人が寝泊まりした部屋。
古い蔵である。天井高くに昔に使われた阿弥陀車(あみだぐるま)が残る。格子窓があるのは蔵人が寝泊まりした部屋。

蔵の創業は嘉永年間。200年以上の深い歴史を持つ。

父の康雄さんは当主を継ぐまで菊正宗の研究所に15年籍を置き、隆允さんは広島大学の発酵科で学んだ後、父の待つ蔵へ。

研究者になることも考えたが、戻ることを選んだ。生まれた時から使命を負い、乳より酒の香りで育った蔵の子である。

6年前に杜氏が高齢で引退してからは、ほぼ2人きり。老舗蔵の看板を守り貫き、極めて先へ、と醸している。
6年前に杜氏が高齢で引退してからは、ほぼ2人きり。老舗蔵の看板を守り貫き、極めて先へ、と醸している。

「いかにして大きくするか、ではなく、いかにして続けていくかに重きをおいてきました」と父が言えば、「この看板を守り抜く」と息子も受ける。

ただし守りは攻めにも転じるのだと思う。
「今、累醸酒は13年ものを出していますが、次は8年寝かせたものを様子見中。これをワインのビンテージ酒のように、年代ごとに出していきたいですね」。

熟成は進化する。熟成酒は日本酒の次の未来につながるのではと思う。
若い酒には得られない複雑で深い余韻のある、まったりまろやかな酒を多くの人に飲んでもらいたい。西内酒造のビンテージ酒で甘い夢を見てほしい。
そのためにはもっと余力が必要だ。

「売るのは苦手で」と苦笑いをしつつも「酒こそが守り神」。
3つの看板酒が蔵を守り、次代の当主を先へと導く。

Information

西内酒造
住所
奈良県桜井市大字下3
電話番号
0744-42-2284
リンク
西内酒造

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