鑑賞・見学おでかけ奈良市
2018/09/05 01:00

Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」 Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

奈良市郊外、大和高原の丘の上。
建築家が「どこからか舞い降りてきたような、裏表のない家に」と意図したとおり。
木々に囲まれ、四方に大きな窓があり、緑とつながり、風が通り、光が差し込む。
里山の美しさが溶け込んだような一軒家ギャラリーである。

Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

もしもあなたが万葉のきれいな風に吹かれたいなら、
歌って恋をし、日々を生きる万葉人を身近に感じてみたいなら、
この館を訪れることを、おすすめしたい。

万葉文化館は、いろんなアミューズメントをそろえた館である。
「万葉集」をテーマに掲げたミュージアムであり、
万葉歌にちなんだ創作日本画154点を収蔵する。
だが館の切り口はさまざまで、豊かな「万葉体験」が待っている。

一軒家はカフェであり料理教室であり、オーナー・安達泉さんの住まい。
通路を介した離れの棟が展示場となるギャラリーである。
だが家も展示場もひっくるめての「ギャラリー・ファブリル」であり、そこには安達さんの美への思い、アートへの熱、豊かに生きる暮らしへの信念が静かに息づき、訪れる人を心地よくもてなしてくれる。


Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

ギャラリーが始まったのは1999年のこと。
大阪でギャラリー勤めの後に、この地に移住。仕事柄、友人知人に作家も客も多く、いつしか居間を展示場にするように。
4年後、別棟を建て、ギャラリー・ファブリルとして正式オープン。
貸しではなく、安達さんセレクトの企画のみで展覧会を開いている。

Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

「大河内久子展」ドローイング&オブジェ

「やせ我慢の世界ですよ」、宝の言葉を抱いて思う。


貸しギャラリーにすると経営は楽になる。
でもここは譲れない。
心底、自分が「本物」だとうなづく作家にのみ、この空間を彩ってもらいたい。

「やせ我慢」と笑いながらも思いがある。
今はなんでもクリック1つで手に入る。アートの世界もそう。作り手が簡単に商品を並べて売るように。
以前は選ばれたものが世に出たが、今は違う。
そのせいか、「若い人に本物を見抜く力が育っていない」と危惧をする。
ギャラリーは本物への道しるべ。そう信じて「踏ん張っています」。

この空間で本物を体験してもらいたい。

「買わなくても見ていただくだけでいいんです」。
何年も通う若い女性が「ここに来ると本物が見られるから」と言ってくれた。
その一言が宝だと思う。

未来のアート好きへの架け橋となる。それも大切なギャラリー仕事の一つである。




Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

「キッチンは私のステージです」

ギャラリーに何時間も居ていいの?そんな遠慮は無用である。
朝から昼下がり、夕方までも。
展覧会期間中はそんなお客様のためにカフェをオープン。ランチも用意する。
「ここでゆっくり過ごしたいから、パン1枚でも食べさせて、ってお客様に言われて」と笑う。
またこのランチが評判で、ランチ目当てで来られる方も。
なにしろ作る人、安達泉さんは料理教室の先生である。

展覧会は月後半に1回、10日〜2週間展示する。

月の前半は料理教室。
2004年からスタートし、今は5クラス。少人数制で20代から幅広い世代が通い、男性も。
「作るだけが料理教室ではない」と考える。
食材選びに道具選び。どんなキッチンで作るのか。
楽しいテーブル作りや場のしつらえ、宴の会話もひっくるめて食文化を楽しむこと。

暮らしを豊かにすることは、アートも料理も同じこと。

Vol.14アートと料理と。暮らしの美を紡ぐ「ギャラリーファブリル」

河瀬監督映画の料理番。名女優、ジュリエット・ビノシュの食事も担当


ギャラリーが建つ田原地区はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した河瀬直美監督の映画『殯の森』の舞台となったところ。
縁あって映画スタッフの食事を担当。奈良で撮影の折には料理番となり、最新作『Vision』でもフランスの名女優、ジュリエット・ビノシュの食事を1日3食、担当した。

スクリーンにこそ料理は映らないが「このシーンのときは、この料理を食べた後だったわ」と、作品とつながれたことをうれしく思う。

「食は何もかもの原動力」。作品を創る手も生む心も、食の力があってこそ。

それは美にもつながるもの。
美しいうつわはもちろんのこと、灯りや布や食卓を彩る美があり、椅子やテーブル、着る美もある。

生きる力は食にあり、暮らしの中に美は紡がれる。
アートと料理と。どちらも豊か。どちらも楽しい。
ギャラリーファブリルの豊かな空間が、そのことを楽しく教えてくれる。

ギャラリーファブリル

  • 住所/奈良県奈良市茗荷町1400
  • 電話/0742-81-0909
  • 営業時間/11:00~18:00(冬期は17:30まで)
  • 定休日/会期により異なる・HP参照
  • 駐車場/有
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