2018/07/04 01:00
Vol.12アートは面白くなくては!「ギャルリ・サンク」
「アートは面白くなきゃ、だめだと思う」
まねき猫たちと「いらっしゃい!」。オーナーの高市俊子さん
ならまちにあるギャラリーの名はギャルリ・サンク。
サンクはフランス語の5。五感が喜ぶ楽しいギャラリーを思って付けた。
展覧会は現代アートを始め、ジャンルは様々。
「好きなアートだけを面白がって扱ってきました」とオーナーの高市俊子さんは言う。
たとえば取材時に開かれていたのは「にゃらまち招き猫∞展」。
8名の人気作家による猫展で、「あなたも猫になれる!」と“ネコに変身似顔絵”を描いてもらえるイベントも行った。
8名の作家の1人、大塚兼忠さんは「ここでの展示はいつもレベルが高いから。今回のイベントも高市さんとの信頼関係があってこそ。展示も販売も思うように心おきなく参加できます」
楽しいこと。面白いこと。人が笑顔になること。
そして地域に密着したギャラリーであることもその一つ。
アートを介して土地とつながり、人とつながる。
そんな役割をギャラリーが担えればいいと願う。
この「にゃらまち招き猫∞展」も次の猫作家展も、ならまちで開くイベント「にゃらまち猫祭り2018」に参加してのこと。
展覧会ではワークショップもよく開かれる。絵を見て詩を作るワークショップや環境の話を聞いて絵を描くワークショップなどユニークな企画を起こし、老若男女が楽しんできた。
宙玉と鏡の中の世界 「上原ゼンジ写真展」7月27日〜8月12日
7月27日から開催する「上原ゼンジ写真展」でも宙に浮かぶ宙玉(そらたま)や万華鏡を使って撮影するワークショップを開くし、その次のイエメンの水飲み場を捉えた「平 寿夫写真展」ではイエメンの珍しいコーヒーや中東の菓子を味わうことができる。
「サビール イエメン ハダラマウトの水飲み場たち〜平 寿夫写真展」 8月17日~8月28日
展覧会からのイベント参加やワークショップだけではない。
アート作品に囲まれながら、俳句や短歌の講座、薬膳サロン、フランス菓子付きのフランス語教室や、電子楽器テルミンをマトリョーシカに内蔵したマトリョミンのレッスンなどもさまざまに開催する。
こんなに大変だとは、知らなかったんです
高市さんがギャラリーを開いたのは2013年のこと。
ご主人を17年前に亡くし、当時小学生だった娘を育て上げ、「ずっと憧れだった」ギャラリーを開くことに。
学生時代からのアート好き。
美術館にギャラリー巡りを重ね、作家の友人も多い。
娘には「嫁入り資金はあきらめて」と宣言。
土地を買い、一軒家をギャラリー仕様に建て直し、残りの人生をここに賭けた。
「甘かったですね」と笑う。
「ギャラリー経営がこんなに大変だったとは知らなかったんですよ」。
展示室の奥にあるフリースペースは当初はカフェを開くつもりであった。
ところがとても1人では手が回らない。接客応対に打ち合わせ。運営の算段も。
そこで転じてサロンとなった。
これもまた良し。願いどおりに五感が楽しく響くアート空間に育った。
「ただのアート好きの素人が、楽しく面白いことをありのままにしてきただけなんですよ」。
元はカフェをする予定だったフリースペースが、いまは五感が響くサロンに。
オープンから5年。
人気作家と応援したい若手作家の展覧会を交互に開くことで人を呼び、サロンを開いて人をつなげ、続けることができたと思う。
年内いっぱいは企画が詰まる。
「来年はそろそろ外に出ようかな」。ギャラリー・オーナーとして休む間もなくここまで走った。
ともあれ5年前にこの道に賭けた思いは変わらない。何かを始めるにしてもこの先ずっと、アートとともに「面白く」生きていこうと考えている。
ギャルリ・サンク
- 住所/奈良県奈良市西寺林町28-6
- 電話/0742-31-8029
- 営業時間/12:00~19:00
- 定休日/水・木曜(展覧会により変更あり)
- 駐車場/1台あり