2018/06/13 01:00
映画「パンク侍、斬られて候」レビュー<br>アホまみれに猿まみれ、カオス渦巻く破天荒なパンク映画
臨界越えの町田ワールドが大炸裂
冒頭からラストまでパンキッシュ。
暴れまくりの画面は狂騒的で、天高く、いや宇宙まで突き抜ける。
しかもこれがめっぽう痛快、笑えてタマらん。
しかしこの毒は強烈なり。
観る人を選ぶのだ。好きな人はめちゃくちゃ大好き。
合わない人はワケわからんアホなムービーで終わることだろう(確かに最高のアホなのだが)。
合えば胸の高鳴りが止まらない。高鳴り続けて「おへど」(*劇中のキーポイント、死んで新生世界を見ること)昇天しちゃいそうなくらいである。
芥川賞作家アンド、パンク・ロッカー作家、町田康の劇的問題小説をまさかの実写映画化した本作。
破天荒で混沌まみれのアホまみれに猿まみれ。
破壊の臨界を突破した町田ワールドが大炸裂。
しかも脚本、パンクな宮藤官九郎。
しかもメガホン、『狂い咲きサンダーロード』のパンクな鬼才、石井岳龍監督。
町田文学の魅力には、リズミカルな文体、斬新な言葉遊びがある。
そして阿鼻叫喚の雨あられ、リアルを超越した前人未到の世界観。
そんなものが映画化できるか。到底無理。いやそれが見事に落とし込まれて生きている。
舞台はカナ英語が飛び交う江戸らしき時代。
超人的剣客にして超テキトーなプータロー侍の掛十之進(かけじゅうのしん)が新興宗教団体「腹ふり党」の討伐を企て、未曾有の事態を巻き起こす。
豪華キャストがブッ飛びの怪演
主人公の掛を演じる綾野剛はメーター振り切りの暴れっぷりで、浅野忠信はプルプル震える超絶アホなカリスマ老人。
染谷将太の腹振りダンスは見ものだし、永瀬正敏に至っては超絶賢いしゃべる猿将軍である。
豊川悦司、北川景子、東出昌大、國村隼ら豪華キャストがそれぞれにブッ飛びの怪演で楽しませてくれる。
疾風怒濤の展開は、猿も人も天まで昇るシュールな大円団まで突き抜ける。
圧倒的なエネルギーがブラッキーな笑いとともに爆発し、不条理のカオスが降り注ぐ。
根底にあるのは権力に陰謀に裏工作…。
時代劇ながら現代社会の様相をブッたぎり、滑稽な人の性分をあらわにする。
最後に生き残る侍は誰か。
捨てゼリフが効く。
まさにカオス渦巻くパンクなエンターティメントであった。
【監督】石井岳龍
【キャスト】綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、若葉竜也、近藤公園 、渋川清彦、國村隼、豊川悦司 ほか
【奈良県上映劇場】イオンシネマ西大和、TOHOシネマズ橿原、イオンシネマ高の原、シネマサンシャイン大和郡山、ユナイテッド・シネマ橿原
※上映日時は各劇場HPを確認
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