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大和蔵元探訪酒めぐり

Vol11.長龍酒造 醸造「四季咲」「吉野杉の樽酒」統括部長 橋本愛裕

酒蔵7男坊の熱と夢が結実。「四季咲」蔵元インタビュー

  • 情報掲載日:2018.05.16
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

創業者・飯田弟一の夢を継ぐ長龍酒造は、先陣の蔵である。
雄町ブームのずっと以前に雄町を醸し、奈良で唯一の酒造好適米奨励品種・露葉風を一番に醸したのもこの蔵だ。
“樽の匠”ならでは。樽の生囲いや、樽の山廃純米にも挑戦し、他蔵が注目するその前から、先陣を切ってビンテージ酒を世に出した。

長龍酒造は奈良の酒蔵7男坊の熱と夢から始まった
日本初の瓶詰め樽酒「吉野杉の樽酒」を世に送る

蔵を継げぬ身ながら、いつか、を夢見て。弟一が生家・飯田酒造場の酒120本をリヤカーで引き、生駒山を越えた話が残る。
蔵を継げぬ身ながら、いつか、を夢見て。弟一が生家・飯田酒造場の酒120本をリヤカーで引き、生駒山を越えた話が残る。

大正12年、飯田弟一は大阪・八尾で酒の小売店を開業し、事業を拡大。
昭和38年に共同瓶詰め場免許を取得し、生家と共同の商標登録を得て、念願の長龍酒造株式会社を設立。
翌年には日本で最初の瓶詰め樽酒を世に出した。免許を取得したのもこの酒を出したいがため。今に続くロングセラーとなる「吉野杉の樽酒」の誕生秘話である。

樽には熱い思いがあった。
樽酒は非日常の祝い酒。この酒を「毎日飲める酒にしたい」。

奈良には吉野杉がある。
吉野の樽丸技術を支援し、後世につなぐ役も果たしたという。
その後、広陵町の廃業蔵を引き受けた。それは長年の夢、酒蔵を手中にすることでもあった。

橋本愛裕・統括部長「樽の技は負けません」。
橋本愛裕・統括部長「樽の技は負けません」。

ロングセラーの樽酒の蔵。
そう思う人が多いだろう。だがそれのみに甘んじる蔵ではない。先陣を切るDNAは創業者から継いでいる。

日本酒の消費が低迷する中、生き残りの先手を打ってきた。
まずは米。雄町ブームのずっと前、平成13年からすでに、酒造好適米・雄町発祥の地である岡山県高島で委託栽培を始めている。ブーム到来で他蔵が手に入れられない時も、つないだ絆で醸すことができた。
さらに奈良県が唯一酒造好適米に推奨する露葉風を、組合を通じて山添村で最初に栽培したのも、この蔵である。業界が山田錦一色だった頃のこと。今では奈良の16蔵が醸す。

「樽酒に雄町と露葉風。これがうちの三本柱になるだろう」。
酒類販売・卸売を手掛ける八尾の親会社・飯田グループからこの頃、蔵に入った橋本愛裕・統括部長は先取の気鋭に感じ入り、そう確信したと振り返る。

長龍酒造の樽は、稀少な「甲付樽」。通常は硬く漏れにくい赤味部分を使うが、表皮近くの白太との境を使うことで、豊かな香りと和らいだ味が出せる。わずかな部位の樽材が得られるのは、これも長年かけて築いた産地との絆ゆえ。
長龍酒造の樽は、稀少な「甲付樽」。通常は硬く漏れにくい赤味部分を使うが、表皮近くの白太との境を使うことで、豊かな香りと和らいだ味が出せる。わずかな部位の樽材が得られるのは、これも長年かけて築いた産地との絆ゆえ。
白い樽がずらりと並ぶ。白さは、きれいな樽酒の証である。漏れやすいため、樽を回しながら寝かす。
白い樽がずらりと並ぶ。白さは、きれいな樽酒の証である。漏れやすいため、樽を回しながら寝かす。

「さすがやな」。
地酒の通をうならせる。
生の樽に山廃の樽。
これがうまい。
「他蔵がおいそれ真似できない、樽の匠、樽添師(たるぞえし)の技や」と讃える。
夏には“生囲い”を醸し、フレッシュで軽やかに。ふだん樽は飲まない人にもおすすめの“夏樽”だ。

複雑な味わいが楽しめる山廃は、海外でも高評価。
ウイスキー文化があるから樽になじみがあり、複雑な味わいの山廃ビンテージがワイン文化につながる。
そこに日本伝統の樽酒というストーリーが魅力となって、アメリカやオセアニアなど海外13カ国の、主に高級店で販路を広げる。

キーワードはビンテージ

広陵蔵のスペースは奈良で一番広い。「八尾蔵もあり、グループ本社にも地下蔵があります」と、谷澤秀和部長。
広陵蔵のスペースは奈良で一番広い。「八尾蔵もあり、グループ本社にも地下蔵があります」と、谷澤秀和部長。

グループ本社には大きなタンクが150本入るほど広い地下蔵がある。
この強みを存分に生かす。

酒を醸すとタンクに置かない。酸化劣化しない低温瓶貯蔵。瓶のまま酒を寝かせて、低温でゆるやかに長期熟成をさせる。
「古酒とはまた違うまろやかさが出るんですよ」。
これもまた長龍の先陣。低温熟成のビンテージ酒はじわじわと注目を集めるが、「始めたのはおそらくうちが最初でしょう」。

ビンテージ酒と謳うのは、「ふた穂」と「稲の国の稲の酒」だが、純米酒以上はすべてタンク貯蔵をせず、スペースがあるゆえに瓶貯蔵で寝かすという。

ビンテージ酒の「ふた穂」は今年から新しい試みで2012、13、14年から好みで選んでもらう。値段は一緒。その年により同じ造りでも米や気候で微妙に変わる。
酒販店主の吟味によれば、面白いほど好みはそれぞれ分かれたとか。
「自分は何年ものが好き、とかワインのように楽しんでもらえれば」。

七十二侯から旬の料理で醸す
初の限定流通は風流な勝負酒

料理に合わせて酒を出す。幸せなマリアージュである。
長龍酒造が新たに仕掛けた勝負酒「四季咲」シリーズは、旬を楽しむ豊かな純米吟醸、無濾過生原酒。
変わりゆく日本の季節を細やかに表した二十四節気の七十二侯から名を取って、年7回、その時季の料理に合わせて発売する。
地酒専門の特約店に卸す、初の限定流通酒でもある。

雄町も露葉風もいち早く醸したものの「さほどの恩恵はこうむらなかった」という。目のつけどころは良かったが、早すぎた。まだまだ量の時代。
しかも限定流通でないゆえに、地酒飲みの元に広く届くこともなく「力の強い親会社のPB商品と思われた」。

転機は平成26年。これまでの南部杜氏による杜氏制を廃止して、社員による酒造りを始めた。
これからは自分たちが目指す道を進み、醸したい酒を醸す。
前年から小仕込み用のタンクを入れて設備を整えた。
勝負酒の名は「四季咲」。米は雄町と露葉風。
今度こそは、と蔵の思いを投入した酒である。

「長龍 七十二侯 美酒 四季咲(しきざき)」。自然と生き、季を楽しむ日本人の美酒。7つの季節を醸したシリーズ酒である。
「長龍 七十二侯 美酒 四季咲(しきざき)」。自然と生き、季を楽しむ日本人の美酒。7つの季節を醸したシリーズ酒である。

たとえばこの原稿を書いている今、5月中旬に発売されるのは「梅子黄(ばいしおう)」。二十四節気「芒種」の末候「梅の子黄ばむ」をその名とし、体が重く感じる梅雨の時期にすっきり軽やかに楽しめる酒質で、やや華やかな香りも爽快。雄町である。
「“梅香るサバの煮付け”のように清涼感のある料理と合わせていただくと、双方の爽やかさが引き立ちます」。

満は持した。これからだ。先陣の蔵の結実のとき。樽がある。ビンテージがある。そしてこの季節酒。
地酒通がヨッシャと膝打つ上等の酒を醸すのだ。蔵人たちは意を決し、酒蔵7男坊の夢を継いで前を向く。

Information

長龍酒造株式会社
住所
奈良県北葛城郡広陵町南4(本社・広陵蔵)
電話番号
0745-56-2026
リンク
長龍酒造

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