その他おでかけ生駒市
2018/04/25 01:00

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

全酒純米蔵。吟醸規格で醸す。
米の全量を素手で洗う老舗蔵は
廃業の危機を乗り込え、力強く前進する。


創業は江戸・享保1727年。
清酒発祥の地・奈良でも屈指の歴史ある老舗蔵である。

昭和62年から特定名称酒のみの醸造蔵に切り替え、平成17年からはきっぱりと純米酒のみを醸す。
しかもその99%以上を吟醸規格で醸すのが、この蔵の誇りである。

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

淡麗辛口の蔵。食中酒の蔵


山鶴といえば辛口。淡麗辛口の酒を醸す。
キレる酒なのである。すっきりキリリの食中酒。
料理の味を壊さず、引き立てる。

看板酒の一つ、純米吟醸「段違い辛口」に至っては、日本酒度+17。純米でこの酒度は、まさに段違い。

かれこれ10数年前から蔵出しするロングセラーである。
もともと辛口で知られた蔵が、客から「もっと辛いのはないのか」と聞かれ、「よっしゃ」と発奮。数年がかりで生み出したという。

“めちゃ旨、めちゃ辛”がウリ、日本酒度+14度の「めちゃ辛」ともども、辛口好きにはタマらないキレ。

超辛口だが、その味わいは柔らかで飲みやすい。
料理の味を邪魔せず引き立てる名脇役。客が笑顔になるのだと料理店が贔屓にし、晩酌が進むのだと長年のファンは言う。

蔵の1番のラインは純米吟醸の生原酒。純米蔵の名を賭けた代表酒である。
軽快な口当たりに米の旨み、甘みがバランス良く、山鶴らしいキレのあるすっきりした味わい。

粕取り焼酎も醸す。3年樫樽で寝かせた濃醇で香りの高い酒は「焼酎のイメージが変わってしまう」と人気を呼ぶ。

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

十三代目、蔵元を継いだ栗田佳直さん。なにしろ搾りの機械メーカーの社長である。今、新しい機器の開発を研究中。「これまでにないものをつくりたい」。

「13代目と書いてください」


約290年続くこの蔵は、約2年前に代替えをした。

現在の蔵元は栗田佳直さん。
大阪の産業機械メーカーの代表取締役社長である。
液体をろ過する機械を製造。化学や鉄鋼など様々な分野で使われ、酒蔵でも。
もろみを搾る自動圧搾機を手がけ、その縁で、先代とつながった。

機械を売るつもりが、思いも寄らぬ話に進む。
後継者がいないのだと先代が言う。このままなら廃業しかない。
米の一粒まで大事に醸す、蔵人たちの造りへの真摯な思いも受け取った。
「私の目の前で290年の蔵の歴史が閉じられていいのか」。
設備もいい。長年のファンに愛され、販路もある。

蔵元の前に13代目と書いていいのか、聞いた答えがこれである。
この蔵の歴史を継ごう。山鶴を継ごう。
杜氏、蔵人もそのままに引き継いで、
蔵は新しい一歩を踏み出した。

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

麹室はオールステンレス。今は一般的となったステンレス室の先駆けであったそう。清潔で雑菌がつきにくいが室温が定まりにくく、子どもを見守るように心を砕く。

「一白・二蔵・三杜氏」小さくとも光る蔵になる


自社杜氏の谷山誠さんは言う。
「酒質は確実に上がったと自負しています」。

蔵が代替えする以前、3年前から杜氏を務める。

40歳の若さを前進の武器にする。
第一に蔵人が増えた。以前は杜氏含めて3人。今は季節雇いの1人を含めて5人。
「隅々まで目が届く」。全力投球がさらに力強く、パワーアップしたと思う。
蔵の是は「一白・二蔵・三杜氏」。

良い米を良く磨く。蔵の平均精米歩合は53%台である。
「二百七十石の小さな蔵だからこそ、できることを徹底してやり抜く。
小さな蔵だが光る蔵になる。

杜氏の自分だけはない。蔵人の全員が、できることはその手ですべてしようと思ってくれています」。

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

通常大吟醸クラスの仕込みを全酒全量で全力投球。1本、1本、どの酒も瓶燗で火入れする。もちろん、瓶に詰めてからの瓶貯蔵である。急冷で低温管理。生酒ならマイナス5度。

米の全量を素手で手洗いする。純米大吟醸だけではない。全種である。
酒質に直結するからと道具の新調に糸目をつけない蔵元が、機械の導入を進めるも譲らない。

どこまで米がきれいか、糠切れを目で見て触る。
「これは山鶴の伝統。代々の杜氏が守り継ぐものだから」。

「彼らは一升瓶1,900円の酒でも、これは山鶴なのだと手を抜かない」と栗田さん。だからこそ、この蔵を継いだのだと。

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

蔵人の平均年齢30代前半という若さ。気持ちは一つ。先を目指す力は強い。

蔵人とみんなで歩む蔵に


「蔵人の思いを受け取り、ともに歩んでいきたい」と栗田さんは思う。

伝統の技法と精神を継ぎながら、蔵の新生も考える。
蔵元が1人で仕切るのではない。「売上の数字も酒造りの計画も共有し、みんなで考え、みんなで進む蔵に」。

酒は人が造るものだから。山鶴の酒の味には、山鶴の人が出る。
その上で、酒質のさらなる向上を目指し、新たな酒に挑みたい。
山鶴ならではの食中酒を極めた酒。肉にも洋食にも。現代の食文化に合った酒である。

Vol10.中本酒造店 醸造「山鶴」社長 栗田佳直

蔵前にある山鶴直販所、酒蔵「与左衛門」。試飲もできる。

蔵元補佐の藤田浩さんは、以前は栗田さんの機械メーカーのサラリーマン。今は蔵の経営、造りに采配をふるう。
「直売処やイベントなどで、何十年も山鶴を愛してくださるお客様の声をじかにいただくことがありがたい。先の野望として言えば、主要駅で直営店を持ちたいですね」。
これから蔵の進む道は、蔵人みんなと、そして山鶴ファンのお客様もともに、との願いを込めて。

「野望」との言葉を受けて、栗田さんも「奈良で地酒といえば山鶴と言われるように。一足飛びで無くていい。一升を丁寧に醸す。お客様の声を聞きながら1ミリでも酒質を上げていく」。

そして杜氏は「おこがましいですが、日本一の酒を造りたい。」と熱を吐く。その言葉には1ミリの迷いもなく、一時は廃業も危ぶまれた蔵の、力強い再生を明るく照らすようであった。

株式会社中本酒造店

  • 住所/奈良県生駒市上町1067
  • 電話/0743-78-3805
  • 営業時間/
  • 定休日/無
  • 駐車場/なし
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