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大和蔵元探訪酒めぐり

Vol8.奈良豊澤酒造 醸造「儀助」「豊祝」社長 豊澤孝彦

“ビッグ・ネーム”の勝負酒「儀助」蔵元インタビュー

  • 情報掲載日:2018.02.28
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

ついに挑んだ限定流通 “地酒”デビュー


奈良の清酒醸造の最大手、奈良豊澤酒造が勝負に打って出ている。

創業者の名を冠した酒の名は「儀助」。限定流通酒である。いわゆる地酒専門店、地酒を愛する酒呑みが通う“通”の店に置かれる酒である。

2016年に発売し、今年で3造り目に入る。「造りごとにうまくなる」と評判はうなぎ上り。品のあるきれいな酒は華やかで、うまみもあればキレもある。次は何を出してくるのか。酒呑みの胸を高鳴らせるに至る。


くやしかったんです

「くやしかったんですよ」。五代目蔵元の豊澤孝彦さんは、口火を切る。うまい酒を醸してきた。誇りを胸にそう思う。

手造りにこだわって、醸す酒の8割は純米酒以上の特定銘酒。
いわゆる“アル添”の普通酒が一般的だった時代から、純米酒に先駆けた。おそらく純米酒を市販化したのは西日本で一番早かったのではと振り返る。

長らく指揮をとったのは「現代の名工」にも選ばれた藤沢忠治杜氏。
酒の評価とともに蔵は大きくなり、スーパーや一般酒販店、量販店にも置かれるように。

全国新酒鑑評会で通算12回の金賞。看板商品「豊祝」は、奈良の酒呑みなら誰もが知る“ビッグ・ネーム”である。

2015年に五代目を継ぎ、翌年、「儀助」を出した。
2015年に五代目を継ぎ、翌年、「儀助」を出した。

私の時代に一つの足跡を残そう

ところが地酒専門店に置かれない。
「どこでも売っている『豊祝』は、うちで置かなくてもいいでしょう」となる。奈良で地酒を醸しているのに、準大手の扱いに。

「酒は負けない」。強く念じた。
ならば自分の時代に一つの足跡を残そうではないか。

より付加価値の高い酒を目指し、新ブランドをゼロから立ち上げよう。
そのための設備投資を新たに行い、生まれたのが小仕込み・低温発酵にこだわった無ろ過生原酒の「儀助」である。
「これまでも十分丁寧に最高の『豊祝』を醸している」。自負とともにそんな社員の声も上がったが、踏み切った。

米洗いから心を砕き、いい蒸米をつくり、いい麹菌をかける。酒米は10年後にはすべて奈良県産にしたいと思う。
米洗いから心を砕き、いい蒸米をつくり、いい麹菌をかける。酒米は10年後にはすべて奈良県産にしたいと思う。

そして完売。好評「儀助」、夏酒もデビュー

初年度は酒米に山田錦を使った特別純米と純米吟醸を醸し、昨年は雄町や愛山を増やすも、秋には品切れが続出。
雄町は「一瞬で」完売した。

十分な手応えとともに、昨年は秋にもう一本仕込みを追加した。この夏には初の夏酒うすにごりを醸す予定である。

「儀助」は750キロの小仕込み。「ここだけは絶対に崩したくない」と思う。まだまだ伸びしろのある酒である。もっと酒質も安定させて「量産するのは先の話。今はとにかく丁寧に、丁寧に醸したい」。

もう一つの狙いも当たった。「儀助」を醸すことで、蔵の酒全体を底上げする。そこから次への展望もまた生まれてくるのである。

「『儀助』はうちの大吟醸並みのスペック。洗米も麹の造りも丁寧に小さく仕込む一番ミニマムな造りです」。その造りで社員が気づく。同じ純米吟醸でもこれほどに変わるのだと。
「今はこの気づきから、うちの主力である中規模の仕込みに、この小仕込みを生かせないかと。みんなで考えていけるようになりました」。

名杜氏、藤沢忠治を顧問に、今は蔵元と社員杜氏5人が思いを一つに醸す。
名杜氏、藤沢忠治を顧問に、今は蔵元と社員杜氏5人が思いを一つに醸す。

蔵の指針は変わらない
「豊祝」も、さらにうまくなる

多くの人に豊澤のうまい酒を飲んでもらいたい。
蔵の指針たるこの思いに一切の揺らぎはない。

これからもメインブランドは「豊祝」であり、長らく愛されてきた純米吟醸「無上盃(むしょうはい)」であることに変わりない。

ただ「儀助」が果たす役割は大きくなっていくだろう。その造りで得たもので、「『豊祝』もさらにうまくなりますよ」。

その指針のもとに2010年から始めたファンづくり3本柱は、すっかり定着。その1つが、近鉄駅ナカに3店舗ある日本酒バー「豊祝」である。

どこぞの帰りにキュッと一杯ひっかけたいときに「豊祝」がある。
ウキウキとのれんをくぐった人は多いだろう。「お客さんの声がじかに聞ける、我々にとってとてもありがたい場」となり蔵と客をつなぐ。

新商品は店舗限定2ヶ月くらいメニューに出し、評判をしかと確かめるのだとか。あなたの声、蔵に届いておりますよ!

蔵めぐりも多く催し、「豊祝会」は広く門戸を開く。「多くの人に」。それが「豊祝」。

その昔、奈良の酒蔵が大手の下請け「桶売り」をしていた昭和40年代あたり。
奈良に約60あった蔵も今では半分に。
「残った約30蔵は桶売りをしつつ、売れないながらも自社ブランドを製造をしていたところではないでしょうか」。
当時の豊澤酒造は今の1/3の2000石。その半分1000石を「豊祝?どこの酒やねん」と言われながらも精魂傾け醸して今がある。だから指針は譲れない。

これから日本酒を呑もうと思う若い世代には「男、もっと酒を呑め」。

今の無濾過生酒のトレンドは20〜30代の有職女性の力がある。
「いいんですよ。女子が呑めば男子がついてくるから」と笑いつつ、
「日本酒の文化は差しつ差されつ、お酌をし合うノミュニケーション文化。もっと楽しんでもらいたいですね」。

Information

奈良豊澤酒造株式会社
住所
奈良県奈良市今市町405
電話番号
0742-61-7636
リンク
奈良豊澤酒造株式会社

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