2017/10/18 01:00
映画「ブレードランナー 2049」レビュー(2017年10月27(金)公開)
SFにしてSFにあらず。人間とは何か。至高の映画体験で2049年へ
SFにしてSFにあらず。人間とは何か。人間性とは何なのか。
人の魂に迫る非常に深遠な問いが冒頭から重く投げかけられ、前作から継がれる世界観と近未来映像とともに描かれる。
能にして能にあらず。別格とされる能の神曲「翁」が持つ言葉を、この映画に捧げたい。カルト的な人気を博した傑作SF映画「ブレードランナー」(1982年公開)の続編、「ブレードランナー 2049」は未知の高みに上る別格のSF映画である。
前作の30年後、荒廃した人間社会は、労働用の人造人間<レプリカント>と危うい共存関係にある。
反乱を起こした旧型レプリカントを処分するブレードランナー“K”は、
世界が滅びる謎を追い、かつてのブレードランナー、デッカードにたどり着く。
荒廃した未来都市は、茫漠とした砂の街。洗練と猥雑が重なる映像は、どのシーンも胸を突くような美しさ。
絵画のように芸術的で、この先、何回も見直したくなるほど魅惑的。ただし映画館の大画面、大音量で鑑賞したい。
映像にのみ込まれ、重低音がとどろく音楽に引きずり込まれる。この圧倒的な没入感は映画館でこそ生きるから。
音楽は「ダンケルク」で世界に衝撃を与えたハンス・ジマー。革新的な爆音が、またしても映画空間に落とされる。
壮大で重いものを、感動とともに観客に届ける手腕はこの監督ならではのもの。次々と話題作を生み落してきたドゥニ・ヴィルヌーヴは、ハリウッドで今もっとも勢いのある監督の1人。
その手のもとで演じる役者たちの演技も素晴らしく、ライアン・ゴズリングが演じる“K”の瞳には痛みも悲しみも、そして愛も。実に多くのものが映し出されて切ない。
行く先は2049年。2時間43分という長尺の旅路は、見終わった後も終わらない。とても美しいものを観たという余韻を、長く抱きしめていられる。
◆前作から30年間の間に何が起きたのか。オフィシャルに製作された3本の短編映画が視聴できるので、映画館に行く前に観ておこう。より深く映画を体験できる。
【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ
【キャスト】ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、マッケンジー・デイヴィス ほか
【奈良県上映劇場】イオンシネマ西大和、TOHOシネマズ橿原、イオンシネマ高の原、シネマサンシャイン大和郡山、ユナイテッド・シネマ橿原
【PG12】
※上映日時は各劇場HPを確認