2017/10/04 01:00
vol2.今日は現代アートの扉を叩こう。『ギャラリー勇斎』
ギャラリーの扉は重い?
現代アート好きの元獣医がめざしたオープンなギャラリー
ギャラリーの扉は「重い」。重量ではなく気持ち的に。気楽に開けていいものか、迷う「扉」が多いのではないか。
ギャラリー勇斎の扉は、開かれている。オーナーの山中さんが何よりそれを望むから。ならまちを散策する外国人観光客が、リュックを背負った若者が、フラリと立ち寄る。それでいい。アートが好きなら大歓迎だ。
以前は獣医。引退後、好きなことをしよう。そう決めた。ならば現代アートのギャラリーを開こう。アートが好きなら誰にでもオープンなギャラリーがいい。
趣味で絵を描いていた。先生は現代アートの作家。学ぶうちにギャラリーに行くことを知る。「ところが1人だとギャラリーの扉が重くてね。海外旅行先ではもっと気楽にHI!って感じでギャラリー散歩ができたのに。日本のギャラリーは一見さんお断り、みたいな気がして」。うーむ、確かに。
オーナーの山中千恵子さん
企画展メインに2年先までスケジュールがびっしり
オープンは2009年。奈良で数少ない現代アートのギャラリーとして精力的に企画展を発信し続ける。月の2/3が企画展。スケジュールはなんと2年先まで決まっている。
個展を開いた作家に「では3年後にまた」と声をかける。その頃には作家がまた新たな世界を創造している頃だから。期間は時に変わるが、作家の励みとなり、支えとなる「約束」だ。
取材時は佐野祥久の展覧会が開かれていた。ずっと見守ってきた作家で5回目の展覧会になるという。その目で見て、選び、支え、一度限りでなく続けること。それはギャラリストとして、始まりからの心得である。
(佐野祥久展より)
一番、心が晴れるのは「作家さんがフェアで受賞したり、大作が売れたり、大きく伸びていく姿を見ることができた時」と顔をほころばせる。
最高に幸せなのは「うちで素晴らしい展覧会ができた時」。
京都からの女性。「奈良に遊びに来たら、よくここに来るんです。いつ来ても面白い企画展が開かれてるから」。(佐野祥久展より)
生駒市在住の男性は「現代アートのギャラリーでいつも展覧会が開かれている。いい作家の作品に出会えます」。(佐野祥久展より)
現代アートはこんなに「近い」!
隣は立ち飲み、酔眼もまた楽し
現代アートは一般人には「遠い」。そうだろうか。
「今を生きる作家が生む、今に生きる作品」と山中さんは言う。抽象も具象もない。時代の空気感や様々な断面を昇華させ、今に生きる人の心に向けられたもの。だから現代アートは実はとっても「近い」もの。
「怖がらないで気軽に入って。タダですよ。よく聞かれるの」と笑う。
ギャラリー中庭に置かれた中岡慎太郎の作品。10/17(火)〜10/29(日)には展覧会も開催予定
隣はご主人と息子さんが経営する酒屋&立ち飲み処『なら泉勇斎』(open11:00〜)。奈良の地酒、30蔵120種以上を取り揃え、試飲ができる。
日本酒好きならここで一杯引っかけてギャラリーの扉を開けるのもいい。「酔眼(すいがん)で見るのも楽しいものですよ」と山中さん。ますます「近く」なりそうだ。
ギャラリー勇斎
- 住所/奈良県奈良市西寺林町22
- 電話/0742-31-1674
- 営業時間/11:00~18:00
- 定休日/月曜
- 駐車場/無し*周辺に有料駐車場あり