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2017/09/27 01:00

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

シュワシュワッと酒が生き躍る
全国の日本酒通をうならせるスター蔵


vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

この記事は雑誌「naranto」2016年秋冬号に掲載された記事から抜粋、修正したものです。

「風の森」はシュワ感から始まる。栓を開けるとシュワシュワッと炭酸ガスが弾け、次いで爽やかな果実香が鼻奥を抜ける。その後は旨みと酸味のバランスがとれたリッチでジューシーな味わいが楽しめる。

「蔵でしぼりたての味を、そのままに届けるため」革新の技術を生み出し、無濾過・無加水・生酒にこだわり続けてきた「スター蔵」の醸す酒だ。

開栓直後のガスは新鮮さの証。“蔵生”しぼりたてを封じ込めた副産物である。「風の森」で地酒に開眼。日本酒のイメージを覆された人も多いという。

300年の「原点」へ挑戦
生酒ブームの先駆、トップランナーへ


享保年間から約300年続く老舗蔵「油長酒造」で、今や全国区の人気銘柄「風の森」が誕生したのは約20年前のこと。その頃、日本酒の需要は下落の一途。活路を見出すべく先代の山本長兵衛社長が挑んだのは「原点」であった。

蔵から車で約10分のところに、稲作発祥の地と伝わる風の森峠がある。昔はこのあたりで酒米を作り、出来上がった蔵出しの新酒は地元の人に親しまれていた。「この味をそのままに、変わらぬ酒を醸せたら」。

挑戦が始まった。今に続く生酒ブームの先駆であり、「風の森」はそのトップランナーとなった。

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

すべて純米大吟醸並みに


「風の森」ならではの酒造りは「語り尽くせないほどある」と語るのは、蔵の13代を継ぐ山本嘉彦社長。

たとえば米の持つポテンシャルを最大限に引き出すため、純米酒も純米吟醸酒も、すべての酒を「純米大吟醸並み」に仕込む。

超低温で長期に渡って発酵を進め、通常は酒により変える酵母も7号系酵母1つきり。純米酒は米由来のパワフルなパンチ力を持ち、純米大吟醸酒は華やかできれい。だが同じ仕込みで、どれも似た顔になる。「『風の森』はハズレがない」と言われるのは、これがゆえん。「風の森」“エリート”ファミリーが出来上がる。

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

縦型構造の空調装置を備えた鉄筋コンクリート蔵は50年前に祖父が建てた。鉄筋コンクリートの蔵など珍しい時代である。革新の血筋。蔵の方向は「僕の前から決まっていた」。

しぼった後も最後まで入魂の一手をかける。搾った酒を貯蔵タンクに移動するのにも、酒への負担を最小限に。蔵の構造は縦型で、2階で搾った酒を1階のタンクに自然に落下させている。

「とにかく静かに液を揉まない」。ゆえに空気と触れにくく、香りが飛ばず、発酵時の炭酸ガスが残る。フレッシュさの寿命は通常よりグンと延びることになる。

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

古来の技法を現代に進化させた「笊籬採り」


「通常」は「風の森」には存在しない。そこにあるのは「細心」と「最上」のみ。だから“家飲み”しても底たまりまでうまい。

「無濾過・無加水の生酒を20年、一筋にやってきた。だからこそ、ここまでできる。ここまで来たから次の一手にも挑戦できる」。

通常を超えた革新。その一つが「笊籬採り」である。古い文献にあった技法を現代に進化させた。もろみの中に笊籬(ざる)状の筒を沈めることでほぼ無加圧で酸化させずに酒を採ることに成功。父の長兵衛さんが成し得た革新。しかしこれでは終わらない。

無垢にして上質。「氷結採り」


「風の森ALPHA」シリーズは、独創的な技術で日本酒の可能性を追求するブランドとして誕生した。これまでも低アルコールのTYPE1、22%まで精米したTYPE2などをリリースしてきたが、2015年末にTYPE4の「氷結採り」を発表した。

これは通常ならば圧搾機や袋で搾るところ、何物も使用せず、無酸素、無加圧状態で酒を採ることに成功したもの。清酒の歴史を見てもまったく新たな技法となる。「風の森」が目指す「無垢にして上質」を実現した、まさに新たな日本酒の可能性を開いたものである。

次々と進化する。「風の森」は革新の手を止めない。そこには「奈良の地で酒造りをするのだから、やらなあかん」という思いがある。
「室町時代に奈良で清酒の扉が開いたように」。

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

「奈良から始まる」。風の森峠に立ち、清酒600年の歴史を背負い、革新の人は思いの丈を熱弁する。

奈良で生まれ、爆発的に進化
また日本酒の新たな先へ


「奈良は爆発的に進化していかなければならない場所」と山本さんは思う。
 平城京跡出土の木簡にはすでに「清酒」という文言も発見されている。

「室町時代になると、領地を守る収入源として南都の大寺院の僧侶たちによる酒造りが盛んになった。この『僧坊酒』を大量生産する過程で、酒造りの技術は大いに発展しました。今、日本中の酒蔵がみんなしている『三段仕込み』や『火入れ』の技術もここで完成したと伝えられています」。

ちなみに油長酒造の伝統のブランド「鷹長」に、この時に正暦寺で生まれた酒母の原型「菩提酛」造りを復興させた酒がある。

奈良で生まれ、奈良で爆発的に進化した。「また新たに日本酒を進化させ、日本中に発信することができれば最高ですね」。

vol3.油長酒造 醸造「風の森」社長 山本嘉彦

 米は全体の4/3量、奈良県産を使う。「秋津穂」に「露葉風」。業界では酒造好適ブランド米「山田錦」や「雄町」が席巻するが「古いと言われる雄町もせいぜい150年。昔は皆、土地の米で醸したもの」。この地で長く作られ、蔵になじんだ「秋津穂」は「風の森」らしさを良く出せる『風の森好適米』です」

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油長酒造 株式会社

  • 住所/奈良県御所市本町1160
  • 電話/0745-62-2047
  • 営業時間/
  • 定休日/無
  • 駐車場/なし
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